甲子園で見せた圧巻のベストピッチ。大谷のこれまでとこれから
あわや完全試合の完璧な投球
雨が降り水気を含んだグラウンド、22分の中断・・・万全とは言えないコンディションの中、大谷が聖地・甲子園のマウンドで圧巻のピッチングを披露した。
プロ初となる甲子園の登板を前に「高校の時は気持ちが高ぶったけど、今は全然そういうのはない。マウンド自体あまり得意じゃない。甲子園のマウンドは低くて柔らかいので、そのあたりは自分で考えて対策を練りたい」と話していたが、初回から持ち味を存分に発揮。15球中10球が150km/h台のストレートだった。その後も完璧なピッチングで8回を投げ1安打無失点。6回2死まで1人のランナーも許さないパーフェクトピッチング、唯一許したランナーも盗塁失敗に終わったため8回で対戦した打者は奪ったアウト数と同じ24人。49球が150km/hを超え、2回には160km/hを2度計測、110km/hのカーブも投じ最大50km/hの球速差で阪神打線を軽くひねった。大谷のベストピッチを前に阪神側は
「悔しいけど完敗かな」(和田監督)
「今日は相手ピッチャーを褒めるしかない」(関川打撃コーチ)
「ストレートも来てたし、変化球でもカウント取れている」(鳥谷)
打席で160km/hを目の当たりにした2人は
「いいピッチングされた。ビデオで観た以上にまっすぐが来ていた」(ゴメス)
「速かったです」(今成)
とのコメントが並ぶ。
8回途中に足がつり9回のマウンドはカーターに譲ったが、ストレート、変化球共にキレもコントロールも抜群で全く打たれる気配の無い106球だった。
二刀流の完成形は?
大谷の昨季の成績は
投手として13試合に登板し3勝0敗、防御率4.23
野手として77試合に出場し打率.238、3本塁打、20打点、OPS.660
高卒ルーキーとしてはどちらも十分な数字だった。
今季の成績は
投手として11試合に登板し6勝1敗、防御率2.61
野手として38試合に出場し打率.271、2本塁打、14打点、OPS.768
と全ての面で進化している。
更に、先発時の平均投球回数は5回1/3から6回1/3へ、1イニングに何人のランナーを出したかを示すWHIPは1.46から1.16へ。1三振を喫する間にいくつの四球を選べるかを示すBB/Kは0.19から0.41へ、出塁率と長打率はどちらも5分上昇と確かな成長曲線を描く。
野手として100試合前後に出場し、中継ぎとして30〜40試合に登板する。これが個人的には二刀流の理想形だと思っていた。休養日を設けながら代打出場だけの日もあれば、中継ぎ登板だけの日もある。時には「◯◯が入り、ライト。ライトの大谷がピッチャー、以上に代わります」のアナウンスが聞け、展開によってはロングリリーフをこなした後、再び守備に就く。柔らかさと力強さを兼ね備えた打撃を見た昨季から、どちらかと言えば野手に比重を置きつつ投手も兼ねる、という選手像をイメージしていた。
実際、今季も4月を終えた段階では打率.392でOPSは1.065。投手としての2勝1敗、防御率2.86は十分な数字には違いないが野手の方がインパクトが強かった。
ただ6月は3試合連続で160km/hを計測し、19回1/3を投げわずか2失点。防御率0.93でWHIPは驚異の0.52。投手としての調整を優先させたためか野手としての成績は下降気味だがそれを補って余りある圧巻のパフォーマンスを続けている。
甲子園での登板前日、外野で行っていた30〜40mのキャッチボールでは、いい意味で力感のないリラックスしたフォームから低く速い球が伸びていく。全力投球ではないはずなのに、威力あるストレートを通り越して破壊力あるストレートだった。続いて行ったフェンスに向かっての壁当てでは、1球1球丁寧にフォーム確認を繰り返す。キャッチボールにしても壁当てにしても1球1球を流さない。
野手推しだった者の考えを1試合で一変させる衝撃を残した昨夜のマウンド、その舞台となった甲子園は今季のオールスターの試合会場でもある。今月の快投を見ればファン投票で漏れても監督推薦で選出されるのは確実。栗山監督の意向もあり今季は投手のみの一刀流での出場となる見込みだが、再びファンを沸かせてくれるだろう。
シーズン終了時、野手として投手としてどのような成績を残しているのか。数年後どのような選手になっているのか。無限の可能性を秘めた本物のスター・大谷翔平、間違いなく日本球界の宝である。