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米、日本向けJASSM-ER巡航ミサイル50発の輸出へ

JSF軍事/生き物ライター
アメリカ空軍より対地攻撃試験で突入する寸前のJASSM

 8月28日(日本時間29日)、アメリカ国防安全保障協力局(DSCA)が日本向け「JASSM-ER」空対地巡航ミサイル50発の輸出提案を国務省から議会に通知しました。F-15戦闘機に搭載予定の空中発射式です。訓練機材など諸経費込み最大で1億400万ドル(約152億円)の費用見積もりとなっています。(Japan – JASSM-ER | DSCA

 なお訓練機材などその他諸経費込みで1発あたり208万ドル(3億円)は、JASSM-ERの調達費用としては他国向けと比べるとかなり安く、おそらく「その他諸経費」の部分の条件の違いで金額差が生じています。ゆえに諸経費込みの場合は単純に数で割ってもミサイルの製造単価は出て来ません。

  • 日本向けJASSM-ER(50発、1億400万ドル) 2023年8月
  • オーストラリア向けJASSM-ER(80発、2億3500万ドル) 2022年7月
  • ポーランド向けJASSM-ER(70発、2億ドル) 2016年11月

 なお日本向けJASSM-ERの型番は「AGM-158B/B-2」とDSCAの発表にありますが、B-2型は2021年に生産開始されたばかりの新型です。このAGM-158B-2はアメリカ以外では現時点では日本とオーストラリアが購入予定となっています。

JASSMシリーズ

  • JASSM/AGM-158A ※射程370km
  • JASSM-ER/AGM-158B ※射程1000km 
  • LRASM/AGM-158C ※対艦ミサイル型
  • LRASM/AGM-158C-2 ※対艦ミサイル型
  • LRASM-ER/AGM-158C-3 ※対艦ミサイル型
  • JASSM-ER/AGM-158B-2 ※翼の再設計? 
  • JASSM-ER/AGM-158B-3 ※MコードGPSを実装
  • JASSM-ER/AGM-158D ※データリンクを実装 ※翼の再設計?

※ただし翼の再設計はAGM-158Dからと受け取れる資料もある。

 C型までは現行型でB-3型以降はまだ実戦配備前です。AGM-158B-3は2023年生産開始予定、AGM-158Dは2024年生産開始予定で、これらはまだアメリカ以外には契約実績がありません。現時点で外国が直ぐに購入できる中ではAGM-158B-2が最新扱いになります。

 この型番の表記は最近のアメリカ国防省や空軍の公式文書に従っています。なお以前の報道でD型はJASSM-XRという呼称で射程1900kmになると言われていましたが、実際の公式文書では確認できる限り、D型の呼称はJASSM-ERのままで射程への言及がありませんでした。そしてB-2型の時点で射程が延伸されている可能性があるのですが、今のところ正式には未公表です。

The AGM-158B-2 resulted after the wing restructure. AGM-158B-2 replaces obsolete components and provides a new electronic fuze, a new Global Positioning System (GPS) receiver, an upgraded Missile Control Unit (MCU), and enhanced software. AGM-158B-2 will begin a gradual production cut-in starting in Lot 19/FY21 funding year.

「AGM-158B-2は翼を再構築して出来た。 AGM-158B-2は旧式のコンポーネントを置き換え、新しい電気信管、新しい全地球測位システム(GPS)受信機、アップグレードされたミサイル制御ユニット(MCU)、および強化されたソフトウェアを提供します。 AGM-158B-2は、ロット19/FY21資金調達年度から段階的に生産削減を開始します。」

AGM-158B-3 provides M-code capability. AGM-158B-3 will begin a gradual production cut-in starting in Lot 21/FY23 funding year.
「AGM-158B-3はMコード機能を提供します。 AGM-158B-3は、ロット21/FY23資金調達年度から段階的に生産削減を開始します。」

AGM-158D provides Weapon Data Link (WDL) capability to re-target the missile, post-launch, against relocatable or higher priority targets during mission execution.

「AGM-158Dは作戦実行中に再配置可能な目標やより優先度の高い目標に対して、発射後のミサイルを再目標設定するための武器データリンク(WDL)機能を提供します。」

出典:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2023 Budget Estimates April 2022

  • the wing restructure・・・主翼の再設計の意味?
  • Mコード・・・新しいGPS軍事信号で耐妨害性および秘匿性を強化したもの
  • 武器データリンク・・・衛星通信で発射後のミサイルの目標データを更新
  • 段階的に生産削減・・・B-2型→B-3型→D型へ生産切り替えという意味

AGM-158B-2 and AGM-15B-3 unit costs are the same because the only difference is the GPS receiver type and the current approved cost estimate assumes the different receivers are the same cost.

「AGM-158B-2とAGM-158B-3の製造単価は同じです。唯一の違いはGPS受信機の種類であり、現在承認されている費用見積もりでは、異なる受信機の費用が同じであると想定されています。」

The unit cost increase of the AGM-158D is due to the addition of the Weapon Data Link (WDL) capability.

「AGM-158Dの製造単価の増加は、武器データリンク(WDL)機能の追加によるものです。」

出典:Department of Defense Fiscal Year (FY) 2023 Budget Estimates April 2022

 AGM-158B-2型、AGM-158B-3型、AGM-158D型は外観形状はどれも同じで、GPS受信機やデータリンク機能の有無など中身の機器が違うと受け取れます。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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