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伊藤匠七段、千日手指し直しの末、広瀬章人九段に勝利 藤井聡太棋王への挑戦権争いは最終決戦に

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月21日。東京・将棋会館において第49期棋王戦コナミグループ杯・挑戦者決定二番勝負第1局、広瀬章人九段(36歳)-伊藤匠七段(21歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時、伊藤七段先手で始まった対局は12時59分、51手で千日手が成立。

 指し直し局は13時29分、広瀬九段先手で始まり、20時48分、102手で伊藤七段の勝ちとなりました。

 挑決第2局は12月26日、東京・将棋会館でおこなわれます。長いトーナメントの最終決戦を制した勝者が、藤井聡太棋王(21歳)への挑戦権を獲得します。

伊藤七段、準決勝の借りを返して最終決戦に

 11月16日、両者は準決勝で対戦し、広瀬勝ち。広瀬新九段誕生の一局にもなりました。

 注目の挑決二番勝負。勝者組を制した広瀬九段にはアドバンテージがあり、第1局で勝てばそのまま挑戦権を獲得できます。一方、敗者復活戦から勝ち上がってきた伊藤七段は2連勝が必要です。

 千日手になった一局は、後手の広瀬九段が△3三金型の角換わりに誘導。互いに腰掛銀に組み合い、打開はできず、序盤で同じ局面が4度生じるに至りました。

 持ち時間4時間のうち、消費時間は伊藤58分、広瀬51分。後手の広瀬九段がうまくやったと見るのが妥当でしょう。

 先後が替わって、指し直し局は広瀬九段先手で矢倉模様の立ち上がり。現代将棋では、互いにオーソドックスに金矢倉に組み合う例は少なくなっています。伊藤七段は速攻を含みにする陣形で、相手に飛車先の歩を切らせました。21手目の段階では、準決勝と同じ局面です。

 23手目。準決勝では伊藤七段は中段に桂を跳ね出し、大決戦になりました。本局では代わりに、比較的おだやかに駒組を進める展開です。

 互いに中住居に構えたあと、中央で押し引きが始まると、伊藤七段はさらに戦場に近い6筋三段目に玉を据えます。

 60手目の段階で、広瀬九段は1歩得。駒台の歩の数は広瀬4、伊藤0でした。形勢はわずかに広瀬九段ペースです。

伊藤「このあたりは自信ないかなと」

広瀬「確かに歩が4-0なので」

 やがて盤面中央のます目は、互いの角、銀、桂、歩で埋まります。中央においてこれほど駒が密集する例は、あまりないかもしれません。

 伊藤七段は飛車を縦横に使い、広瀬九段の角と刺し違えます。局面はいよいよ終盤へと入りました。

 94手目。広瀬九段は中央に勢力を足すべく、銀を中央に上がります。結果的にはこの手が敗着になったか。伊藤七段の攻め足は止まりませんでした。

 102手目、伊藤七段は銀を取りながら角を中央に出ます。広瀬玉はほとんど受けがなく、一方、伊藤玉には詰みがありません。広瀬九段が投了し、第1局は終わりました。

 伊藤七段は準決勝の借りを返し、挑戦権のゆくえは第2局へと持ち越されました。

 今年度の対局数、勝数でランキングトップを走る伊藤七段。成績は38勝11敗(勝率0.776)となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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