中国要人発言の誤報相次ぐ 朝日新聞、王毅外相「三者協議提案」を訂正
朝日新聞は3月19日付朝刊1面で「対北朝鮮 米中が応酬/中国、3者協議を提案」と見出しをつけた記事を掲載した。その中で、中国の王毅外相が訪中したティラーソン米国務長官と北京で会談し、共同記者会見で北朝鮮の核問題を話し合う「3者協議」の開催を提案したと報じたが、そのような提案がなされた事実はなかった。
同紙は、見出しとともに該当部分を削除するとの訂正記事を20日付朝刊に掲載した。過去の経緯について王氏が説明した内容を、新たに提案したものと記者が誤解したという。
米国務省で公表された米中共同会見記録(英文)によれば、王氏は「米側の要請に基づき3者協議を促し、設立に至ったが、その後、6者協議に拡大した」などと述べていた。(*1)
米中朝の3者協議は2003年ごろに行われ、当時中国側の代表は王氏だった。その後、韓国、日本、ロシアを加えた6者協議の枠組みができたが、2008年を最後に開催されていない。
記事は当初、ティラーソン氏が共同会見で、北朝鮮核問題に関して「20年以上、北朝鮮の脅威を抑止する試みは成功しなかった」などと指摘したことを紹介したうえで、王氏の発言を次のように報じていた。
李首相発言 「携帯データ通信料を年内に廃止」の見出しも誤報
朝日新聞は3月5日、デジタル版で「『携帯データ通信料を年内に廃止』全人代で異例宣言」との見出しで記事を配信した(Yahoo!でも配信)。これは、全国人民代表大会(全人代)での李克強首相の政府活動報告について報じたものだったが、「携帯データ通信料を年内に廃止する」という発言はしていなかった。実際に李首相が述べたのは、「国内の携帯電話長距離料金とローミング料金を廃止する」(中国語原文:年内全部取消手机国内長途和漫游費)だった。
中国では、電話番号を都市地区ごとに登録する制度となっており、登録地区以外の場所で電話を使うと1分あたり0.6元の「漫游費」(ローミング料金)が発生するという。「データ通信料」は一般にインターネット通信で発生する料金を意味し、中国語では「上网流量費」と呼ばれるため、電話料金の一種である「漫游費(ローミング料)」とは異なる。(*2)
李首相の同じ発言を報じていた毎日新聞は、「携帯料金の一部廃止」という見出しで、李首相の発言を「携帯電話の国内長距離通話料、(省をまたぐ)ローミング料金を年内にすべて廃止する」と訳しており、問題なかった。
朝日新聞は、すでにデジタル版の見出しを「携帯データ通信料を年内に廃止」から「携帯料金の一部を年内に廃止」に[ttps://twitter.com/asahi/status/838374053203206144 上書き修正した]が、訂正記事は出していない。本文では、李首相の発言が「携帯電話料金とデータ通信料のうち、省などをまたぐ長距離の上乗せ料金を年内に廃止する」と引用されたままになっている。
日本報道検証機構は3月8日に朝日新聞社に指摘したが、24日現在、「事実関係を調査している」(同社広報担当者)と説明している。近く訂正が出る可能性がある。
(*1) 米国務省が公表した王毅外相の発言記録。
(*2) 以下の記事などを参照。