照準は既に秋へ!カナフレックスの福間監督と藤井助監督(元阪神)が都市対抗予選で感じた“雰囲気”
すべての社会人野球チームが「そこを目指して1年間戦う」と言い切るのが都市対抗です。ことしの『第93回都市対抗野球大会』は、東京五輪のため変更されていた日程も元に戻り、本来の夏開催となって今月18日に東京ドームで幕を開けます。
元阪神勢では、藤田太陽監督が率いるロキテクノ富山(上市町)が全チームで唯一の初出場。金田和之投手が所属する三菱重工West(神戸市・高砂市)も出場。それから2019年まで玉置隆投手がいた日本製鉄鹿島(鹿嶋市)も2年ぶりの出場となりました。
また三菱重工Eastは予選で敗退したものの、元オリックスと中日の武田健吾選手がENEOS(横浜市)の補強選手として都市対抗を初体験します。同じく、元ロッテで今季からクラブチーム・全府中野球倶楽部でプレーする永野将司投手はJR東日本(東京都)に補強されました。Honda時代の2017年以来2度目の出場ですね。
さて今回は、残念ながら都市対抗の近畿地区第二次予選で涙を飲んだカナフレックスについて書きました。元阪神の福間納監督、藤井宏政助監督をはじめ、この都市対抗予選をもって現役を引退した正捕手・福田優人選手の話などをご紹介します。
いい内容で勝った初戦だけが見られず、取材した以降の3試合は負けてしまったのですが、惜敗も含めて本当に“戦えた”印象でした。勝たねば意味がないとはいえ、まだまだ若いチームにとって得たものも多い4試合だったでしょう。
【理想的な勝ち方で発進】
1回戦の相手はマツゲン箕島硬式野球部。兼任コーチの大西健太投手が先発で8回1失点の好投、最後を迫勇飛投手が締め、2回戦進出を決めています。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇1回戦 (5/25)
マツゲン箕島硬式野球部-カナフレックス
マツ 000 010 000 = 1
カナ 100 100 40X = 6
▼バッテリー
【マツ】森-松尾-坂本-森山 / 藤本
【カナ】大西‐迫 / 福田-田中怜
▼二塁打 マツ:青木 カナ:新宅
《試合経過》※敬称略
打線は1回、新宅の二塁打と守屋の左前打などで2死一、二塁として4番・古和田が右前タイムリー!4回には古和田が先頭で右前打、森田が送って、続く米倉が右中間タイムリーで2点目が入ります。
大西は3回までパーフェクト。4回は二塁打と犠打で1死三塁とするも併殺で無失点。5回に2安打などで2死二、三塁として1点を失いますが、6回2死一、三塁のピンチもしのぎ、7回と8回はまた完璧に抑えました。
その間の打線は7回、中前打した福田が田中慧の犠打で二塁へ進み、連続四死球で満塁。ここで3番・山崎が右前タイムリー。投手が代わって古和田が右前タイムリー。なおも1死満塁で森田は左前タイムリーで2人を還し、この回4点を追加!
9回は迫と田中怜のバッテリーが、いきなりの連打や四球で2死満塁のピンチを作ったものの、最後は二ゴロに打ち取って試合終了です。
【ルーキーバッテリーの挑戦】
2回戦はミキハウスとの対戦で、大石亮人投手と田中怜央那捕手のルーキーバッテリーが先発。ヒットはともに8安打ずつですが、四球が失点に絡んでの敗戦でした。江頭駿選手が4打数4安打2打点と気を吐いています。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇2回戦 (5/27)
カナフレックス-ミキハウス
カナ 000 000 101 = 2
ミキ 300 201 10X = 7
▼バッテリー
【カナ】大石-東郷-青山-瀬古-迫
/ 田中怜-福田
【ミキ】栗山 / 井上
▼三塁打 ミキ:大西、堅田
▼二塁打 カナ:森田、古和田 ミキ:大西
《試合経過》※敬称略
大石は1回、ヒットと四球から2死一、二塁として連続タイムリーを浴び、3点を先取されます。4回は先頭に二塁打、次のバントを田中怜がダイビングキャッチしたところで交代。東郷は三振で2死二塁としましたが、そこから4連続四球による押し出しで2点を献上。
ついで登板した瀬古は6回、ヒットの走者を犠打と四球で進めて味方エラーで還し、7回も三塁打された直後の犠飛で計2失点(自責1)。8回は迫が連打などで2死二、三塁としながらも、最後は4番を三振に仕留めています。
打線はミキハウスの先発・栗山を打ち崩せず、6回まで散発3安打のみ。ようやく7回に5番・森田の左翼線二塁打が出て、2死後に7番・江頭が右前タイムリー!9回にも先頭の古和田が中越え二塁打を放ち、2死後にまた江頭が中前タイムリー!
結局この2点のみで栗山を完投させましたが、チーム8安打のうち半分は江頭で4打数4安打2打点でした。
◆『Think』自分で考えて動く
福間監督は「バッテリーがルーキーで重荷だったかなという気もするんだけど、ここまで実績を残したから使ったわけで。やっぱり今までとは違う緊張感なのかな。もっといい球を投げられるのに。これが都市対抗なんでしょう」と、初回に3点を先取された厳しい戦いを振り返っています。
「ゴロのヒットはいい。長打が一番ダメ。ゴロなら今、うちの外野は刺すんですよ。ここまでずっと刺している。それができなかったところに、きょうの初回の3点が…」。重くのしかかってきたわけですね。外野といえば、センターの森田皓介選手もいい返球をしていました。
「前に来るようになったんですよ。自分が殺せる距離まで出ていくと、自分たちで言い出して。そういう野球を目指し、できるようになったので、ほとんど外野の返球でアウトにしている。だからランナーが止まるようになった。ゴロのヒットなら今は十分、補殺する力を持っています」
オープン戦などを通して身につけたもの?「そうそう。ことしのテーマが“Think”、一番は頭を使う野球ということで、監督やコーチが指示する前に動ける選手になれと。それを新しいカナフレックスのチーム作りとしてやってきて、守備に関してはかなり浸透してきましたね」
何かを感じたスタメン起用
それから「きょう江頭が4本打ったでしょう?おとといの試合後、高橋コーチの遺影を片付けながら『高橋さん、ありがとうございました!』って言っていた。みんなも心の中では言っているんだけど、声に出してね」と続けた福間監督。
「ああ何かあるかもしれないと思って、藤井(助監督)に7番で江頭を使ってほしいと言いました。で、江頭にも『俺はお前の、あの気持ちに何かあると思う。そのかわり2打席やぞ。それで俺に伝わるものがなかったら代えるぞ』と言ったら…4本!」
そういうことがあったのですね。ことし1月に73歳で亡くなった高橋二三男さんは、カナフレックス野球部創設にも尽力され、その後もずっとコーチを務めてこられました。いつも穏やかに選手を見つめ、寄り添ってくださった高橋コーチに誰もが支えられたはず。
今季は3月の京都府春季大会から、ベンチにはいつも『41』のユニホームと遺影が、みんなの背中を見つめるように置かれています。
◆おじいちゃんがいなくなって…
江頭駿選手は穏やかに、静かに話しました。「高橋コーチとは1年目からご飯に連れて行ってもらったり、休みの日も一緒に練習をしたり。そういう人が急にいなくなって。その影響と言ったらあれですけど、いつも言葉をかけてくれる“おじいちゃん”がいなくなっちゃったから…」。なかなか調子が上がってこなかった?
「はい。高橋コーチのために何とかしなくちゃと思えば思うほど、あれ?おかしいなと」。空回りしてしまったのでしょう。しかも、そこでいつもの言葉がなかった。「なかったですね。なんで何も言ってくれんのかなあとか思いながら、きょうまで来ちゃったんで」。ちょっと泣きそうになってしまいました。
でも調子は上がってきた?「いやいや、もうずっと悪くて。このまま(予選に)入って大丈夫かなと思っていたけど、監督からもハッパをかけられて、それで一気に気持ちが高ぶったというのもあります。期待の裏返しでもあると思って」
高橋コーチの帽子も力に
「ことしから試合でいつも、高橋コーチが使っていた帽子をかぶっているんです。絶対見てくれていると思って、近くに感じながら。だから毎回『ありがとう』って思うし、きょうだったら多分ご飯に連れていってくれていたはずだったので」。またウルッとしてしまいます。
これまでも遺影に語りかけていた?「そうです。ただ今大会から自分が運んだり、掛けたりする役目になったので。試合後にユニホームをたたんで、遺影を包む時に『ありがとうございます』と言ったんです。いつも通りに。それを、後ろにいた監督に見られたということですね。なんか照れくさいです(笑)」
それも巡り合わせ、高橋コーチの力?あとで見せてもらった帽子の中には高橋コーチの『41』が入っていました。
【大阪ガス相手に善戦】
敗者復活戦へ回ったカナフレックスは、第3代表決定トーナメント1回戦で大阪ガスと対戦。先発は大西投手で6回途中まで投げ4失点(自責3)、相手の秋山遼太郎投手が6回2失点で、逆転できずに終わりました。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇第3代表決定トーナメント 1回戦 (5/31)
大阪ガス-カナフレックス
ガス 000 112 000 = 4
カナ 000 011 000 = 2
▼バッテリー
【ガス】秋山-宮本-大宮 / 鳥飼
【カナ】大西‐瀬古-迫 / 福田
▼本塁打 カナ:田中慧ソロ(秋山)
▼二塁打 ガス:橋本典、三井
カナ:古和田、守屋
《試合経過》※敬称略
3回まで1安打5三振と3人ずつで抑えていた大西が、4回は二塁打と連続四球で無死満塁とし、犠飛で先制を許します。5回には1死から味方エラーのあと連打を浴びて1失点。しかし、4回まで完璧に抑えられていた打線が5回、4番・古和田の二塁打と森田の犠打で1死三塁として、6番・江頭の遊ゴロが相手エラーを誘って1点を返します。
2対1で迎えた6回、連打で無死二、三塁とした大西は犠飛で1点。2死後にまた連打を許して1点。代わった瀬古が三振で締めたものの、3点差となりました。するとその裏、先頭の9番・田中慧がレフトポール際へ一発!ただし微妙だったため審判が協議した結果、やはりホームランの判定で4対2となります。1死後に守屋が右中間二塁打を放つも後続を断たれ、差は縮まりません。
投手陣は瀬古のあと7回2死から登板した迫も連打を浴びながら抑えましたが、そのまま試合終了。カナフレックスは4安打で2点、大阪ガスは13安打で4点という内容です。
◆“もしかしたら”は収穫
試合後の福間監督は「十分に力を出したと思う。13安打と4安打だと普通は一方的な試合だけど、終わってみたら4対2。打たれながらも何とか抑える投球もできていたし、迫もランナーを出しながら粘った。大阪ガスを4点に抑えたというのは収穫」と話しました。
「着実に力をつけてきたということ。ボロ負けがなくなってきた。きょうでも“もしかしたら”っていう雰囲気があるんですよね。成長した部分がある。これが次へつなげていけると確信しています」
そして「あれホームランだった?」と福間監督から逆質問された一発については、このあと当事者のコメントをご紹介しましょう。
◆奥さんの観戦で100%!?
今季1号を放った田中慧樹選手は「自分でも入るかな、切れるかなという感じでいたので、とりあえず走らなきゃと(笑)。一塁ベースを過ぎて塁審の方が手を回していたけど、まだ不思議な感じで一周して、ベンチでハイタッチして」と回顧。
協議があった時は?「自分はファウルだと思っていたから、もう一度バットを持って打ち直しにいこうとしていました(笑)。ホームランというジャッジが出て、ひと安心っていう感じです」
ホームランはいつ以来?「去年の日本選手権の本戦以来ですかね。なかなか今季は打てなくて悩んでいたんですけど、きょうはベンチ前でいい感じに振れていたのでヒットは出そうだなと思っていました」
打った後、ベンチに戻って「高橋さんが打たせてくれたという思いを、みんなで共有しました。高橋さんがベンチにいるかのように」という田中慧選手。「休みの日によく練習をしに行くんですけど、必ず高橋さんがいらっしゃって指導してもらいましたね。みんなそうだと思います」
田中慧選手のホームランは本人の言葉通り、昨年7月1日の『第46回社会人野球日本選手権大会』の東海理化戦で、紗衣夫人が初観戦されたのです。で、この日がそれ以来2度目の観戦でした。約1年ぶりに観に来ると話していた田中慧選手でしたが、その試合でまた打つとは…。
新しい環境と職場にようやく慣れ、久しぶりの観戦をすごく喜んでおられた奥さん。試合前のお会いして「きょうも打ちますよ、きっと」と言ったら、本当に打ちましたからね。2戦2発はすごい確率。「やっぱり、あるんですかねえ」と首を傾げる田中慧選手。あるんですよ、愛が!秋もぜひ観戦してもらってください。
【さすがの好投も惜しい敗戦】
次は第4代表決定トーナメントの3回戦、日本新薬との戦いは1対0というスコアで惜敗。大阪ガス戦に先発した大西投手が中1日の登板で8回を投げ切りました。初回に内野ゴロで1点を失っただけです。
《都市対抗 近畿地区第二次予選》
◇第4代表決定トーナメント 3回戦 (6/2)
カナフレックス-日本新薬
カナ 000 000 000 = 0
新薬 100 000 00X = 1
▼バッテリー
【カナ】大西 / 福田
【新薬】岩本-斎藤-西川 / 鎌田
▼三塁打 新薬:橋本
▼二塁打 カナ:古和田
《試合経過》※敬称略
大西は1回、四球とヒットなどで1死二、三塁として二ゴロで先制を許します。そのあと連続四球で満塁とするも最後は三振で最少失点。2回も2四死球ながら得点は許さず、3回は三者凡退。以降のヒットもすべて散発でした。
さらに6回は2死から三塁打があったり、8回は2安打と味方エラーで2死満塁という大ピンチを迎えても抑えた大西。8日前に106球、2日前にも106球を投げ、この日は127球で8回6安打1失点の完投。あっぱれです。
しかし日本新薬より1本多い7安打を放ちながら、バント失敗や盗塁死などで1点が取れなかった打線。1対0のまま迎えた9回は1死から代打・杉本が四球を選び、2死後に代打・田中怜が中前打!福田はファウルで粘りましたが、三振に倒れて試合終了です。
◆志願の先発・大西に敬意
福間監督は、中1日の先発で8回を投げ切った大西投手について「大阪ガスに負けた日に『いきます』と大西自身から言ってきた。今まで、僕はどこでもいいですよと若い選手に譲っていたのに、珍しく自ら志願してね。その心意気を信じた」と話しています。
「さすがに立ち上がりは大丈夫かなと思ったけど、そのあと踏ん張って8回1失点に抑えた。素晴らしかったですねえ」。最後までいかせようと?「途中で代えようかと思ったけど、もう1人、もう1人という感じで8回までいってしまいました」
この予選でチームが成長したところは?「今までならズルズルいく試合が多かったけど、そうならなくなったところかな。カナフレックスの特徴は元気よさです。劣勢でも、よそのチームにも負けないくらいの元気があった。それが結果として出れば最高だけど、まあこれからですね」
◆3試合の先発で計339球!
次は大西投手兼任コーチ。先発を志願したとか?「はい。初戦が終わって中1日でミキハウス戦にいけるか?と言われた時に、コーチという立場として僕だけが投げて勝ち進んでも先はないと思って。大石が今まで頑張って投げて結果も残していたので、今回は大石でお願いしますと」。そうだったんですか。
「でも負けてしまって、ちょっと後悔して。そこで勝っていれば、まだ上にもいけたし。負けたことによって後悔も生まれたからこそ、今回は負けたら終わりの中で“僕が行きます”と言いました」。しんどくはなかったですか?「1回に50球くらい投げて、きついな~と」。ですよね。
「ただ前半は何とかしのいで後半に勝機があると思ったから、僕自身も後半楽しんで投げた。打者との駆け引きというより自分の力勝負に持っていって、それで抑えられたのでよかったです。ただ結果としては勝ちに結びつけられなかったのは…」。そこが何より悔しいでしょう。
追い越していってほしい
また大西投手は「チームの総合力を上げないと連戦で勝てない。都市対抗予選は負けてからの勝負。第1代表以外は絶対に負けがついてくるので、そういう逆境からどう立ち直るかが課題です。そこの、勝たないといけない試合を若いピッチャーで投げてもらうのが一番いいかな」
コーチとしては、やっぱり背中を見てもらうのが一番?「いや、もう追い越してもらっていいですよ。背中を見ずに」。越えていけと?「はい。僕を押し倒すくらい」。ところで肩は大丈夫ですか?「案外、いけましたね(笑)」
そうそう、福間監督が「僕の若い頃は都市対抗の予選で5試合全部投げたと大西に言ったら『福間さんは18歳、僕は30ですよ』って返された」と笑っていました。確かに、そこで比べられたら辛いかも。
◆「福田さんに回すことだけ!」
ルーキー・田中怜央那選手に最後のヒットのことを尋ねたら「もう、とにかく福田さんに回す気持ちで。ツーストライクまではどんどん振っていかないと、何も始まらないと思っていました」という返事。
「追い込まれてからは福田さんにつなぐ気持ちがもっと強くなったのか、モールがよく見えてファウルでもバットに当たっていたので、これは行けるんじゃないかと。もともと意識していた逆方向に打ました。もう最後は福田さんに回すという気持ちで打てた1打席、それのみです」
実は、長く正捕手としてチームを支えてきた福田優人選手が、今季の都市対抗野球大会をもって現役を引退する意思を固めていたのです。それを選手たちは、この試合が始まる前に初めて聞いたそうで、試合後のミーティングでは目を真っ赤にして泣く選手もいました。
田中怜選手は福田さんに多くのことを教わった?「はい!」。責任が重くなりますね。「これからは引っ張らないといけないし、引っ張っていく存在になりたいです。福田さん以上に頑張らないと。寂しい部分もあるんですけど、逆に引き締めていきます」。
◆チームの要、正捕手が引退
福田優人選手には、予選後1か月くらい経って話を伺いました。本当に引退しちゃったんですか?「はい。30歳で辞めようというのは考えていたんです。ずっと行きたかった都市対抗を最後にと」。確かに社会人にとっての都市対抗は特別ですからね。
福間監督と藤井助監督だけ昨年末に伝え、他は都市対抗が終わってから話すつもりだったとか。でも6月2日の朝、福間監督から「もしきょう負けると最後の試合になってしまう。試合前に言ってもいいか?」と聞かれて公表に至りました。
みんな驚きを隠せない中、監督が「だから勝とう!」と告げ、そのあとキャプテンの森田皓介選手も『優人さんを都市対抗に連れていこう!』と言ったそうです。
最終回に田中怜選手が回してくれましたね。「回してくれ、俺が打つから!とは思っていたけど、すごいですね。よく打ってくれた。怜央那は試合が終わってから僕に言ったんですよ。何が何でも回そうと集中していたら、ボールがめちゃくちゃ大きく見えたって(笑)」
楽しくて仕方なかった最後の打席
小学2年生からずっと野球をやってきて、一番印象に残っていることを聞いたら「最後の打席です」と福田選手は即答でした。この前の?20年余りの中で一番?「はい!みんながつないで、つないで、自分に回そうとしてくれて、なんかもう楽しすぎで笑いが止まらんかった」
感極まるとかじゃなくて、笑い?「めちゃくちゃ楽しかったんです。ベンチがファウル1つ1つに僕より盛り上がっているのも楽しくて、ずっと笑ってた。秋川はベンチで泣いていたらしいです。あとで『こっちは泣いてるのに、なんで笑ってるんや』と思ったって」
さらに「僕が三振してゲームセットという結果なので、こんなこと言うたらアカンのですけど…三振までが清々しかった。みんなありがとう!幸せや~!という思いです。三振したけど、僕のせいで負けたけど、でも楽しかった。絶対に忘れません」と繰り返す福田選手です。
「これからも一緒に戦います!」
最後となった都市対抗予選を振り返って「やり切りました。燃え尽きました。何もする気が起きないくらい、やり切った」と言い、今後について「指導者というのはないですね。自分のことは自分がよく知っています」と続けました。
「でも練習には行きます!手伝いに。手伝わせてくださいと、監督やジイさん(藤井助監督)にお願いしました。選手がちょっとでも楽になれば、と思って。雑用でも何でもやります!」と大張り切り。
「大変なんですよ、練習。人手が足りないから、みんな肩や腕が痛くても(打撃練習で)投げてくれる。今まで僕もそうやって投げてもらったし、ずっとお世話になったのでBPをやってあげたい。恩返しします」
社会人日本選手権に出場できたら京セラドームへ応援に行きますか?「もちろん!予選から全部行きますよ。それまでも、土日は練習に行って試合も行って、一緒に戦います!」と、心底楽しそうでした。
プレッシャーを感じられる幸せ
最後に福田選手がこんな話をして、ちょっとしみじみしました。
「今は野球のことも、試合のことも考えなくていい。いい意味でも悪い意味でも、今はほんまに楽ですよ。何にも集中していない。何のプレッシャーもない」と言いながら「楽は楽だけど…そんなプレッシャーも、もしかしたら幸せだったのかな」とポツリ。
「ずっと野球のことを考えて、休みもほとんどない毎日で、本当にしんどかった。でも」と福田選手は繰り返します。「でも今になってわかったことがありました」と。
「だから、しんどい思いしかない今だとしても、頑張れよと言いたい。休みなんか辞めたらずっとあるんやから。プレッシャーを感じてやれる野球を幸せに思ってほしい。誰でもいつか辞める時が来る。今しか感じられないプレッシャーを、喜びと思ってやってほしい」
これがカナフレックスの後輩たちに贈る言葉です。
◆上がってきた集中力と守備力
締めは、やはり藤井宏政助監督に語ってもらいましょう。「大西が投げている試合は接戦になる。他のピッチャーがそこまで投げていないので何とも言えないけど、守る方は最少でいけるようになったかな。当たり前のことが、守備ではできている。だいぶしっかりしてきました。それが去年とは違うところかなと思います」とのこと。
「ピッチャーがよかったらしっかりするけど、崩れ始めたら弱いところが出てしまうのは、うちの悪いとこ。今回はあまりなかったんじゃないですか。コールド負けが少ない。ということは集中力が上がってきているのかなとも考えられますね」
「それもこれも大西が頑張ってくれているからで。やっぱり新人には都市対抗は難しいですね。都市対抗の予選は、どのチームも計算できるピッチャーが投げる。一か八かはないんです。オープン戦ではいいのに。何が違うんでしょう」
何かのきっかけで大化けすることがありますよね。大西投手を超えていくくらいの成長を楽しみに待ちます!
また打撃に関しては「これも都市対抗予選では打ったチームが勝つ。打てないから守り切るしかないけど、打てば勝ちにつながります。守りも大事ですけど、点を取れば勝てるんだというところですかね」とのことでした。
それぞれの自主性を信じて
予選が終わったあとは仕事優先?「会社が忙しい時でもあったし、野球をやらせてもらっている分、こういう時しか役に立てないですから。普段は試合や練習で休ませてもらっているので」
じゃあ仕事のある平日は自主練習ですか?「みんなで練習できるのが土曜日くらいしかないけど、こういう時間を大事にしつつ、平日は個人練習になります。ミーティングで話はしますが、あとは信じていくしかない。それぞれの自主性に任せて」
福田選手が引退してキャッチャー2人になった点は「半分に分かれての練習なので2人だときついんです。ピッチャーの球を受けたりしていると、バッティングとか自分の練習ができずに終わってしまう。でもその分、喜来は朝早く来てやったりして補ってくれている」そうです。
都市対抗予選では出場がなかった喜来(友貴)選手ですけど、試合中もリリーフ陣の球を受けたり忙しかったでしょうね。「喜来はJABA大会で一度マスクをかぶっていますが、大会での経験がなかなかないので」と藤井助監督。今後はどんどん出ていくことになるはず。
秋は京セラドームで1勝を!
点を取れば勝てるということを踏まえて「野手も課題はいろいろありますね。バントとか盗塁とか。都市対抗予選が始まってから、それまでの思いきりがなくなった感じですね。一度アウトになると怖さが出るのか、思い切って勝負をかけられなかったのかも」と振り返った藤井助監督。
もちろん練習ではやっていたんですよね?「やってはきたけど全然足りなかった。それは選手も痛感しているでしょう。そのへんを今回、練習でも実戦形式のものをメインでやって課題をつぶしていけたらと思います。若いチームだから余計に実戦が大事ですね」
社会人日本選手権の近畿地区最終予選は9月6日開幕。「あと2か月ない。もうすぐ全体練習も再開して、8月にはオープン戦が10試合以上組まれています。日本選手権に向けては、もう進んでいますよ!しっかり結果を出せるように持っていきたい」と決意を新たにしました。
2大会連続4回目の日本選手権出場を、そしてチームと一緒に京セラドーム大阪のベンチで戦うことを、高橋コーチも楽しみにされているはずです。
<掲載写真はチーム提供>