ムンクの『叫び』が環境活動家の標的に
欧州の美術館で、環境活動家が名画に飲食物などを投げつける行為が連鎖するなか、ノルウェーの新国立美術館で『叫び』もとうとう標的となった。
ノルウェー出身である画家エドヴァルド・ムンクの名作は標的になる可能性があると、地元の美術館らは警備を強化するなどの対応を問われていた。
『叫び』は新ムンク美術館や新国立美術館にあるが、11日に狙われたのは新国立美術館。
オスロ警察によると、24歳と33歳の2人が『叫び』の額縁に自らを接着してくっつけようとしたが、警備員に取り押さえられ、現場に居合わせた計3人が警察に連行された。
20~30代の若者たちは、ノルウェーの石油採掘活動に抗議する団体のメンバーで、ノルウェーが新たな石油採掘をただちに中止するように訴えた。
ノルウェーのアートメディア『ティーデンス・オンド』は、事前に抗議活動が行われることを知っており、抗議活動をした本人たちに事前にインタビューをし、当日の抗議現場にも居合わせて、最初にこの一件を報道したメディアでもある。
事件後、『叫び』が展示されていた「ムンクの間」は一時的に閉鎖されており、美術館の他の部屋の展示は一般開放されている。
自然が豊富なノルウェーでは気候危機や環境破壊を巡って抗議活動が行われるとき、石油採掘やフィヨルド汚染などが主要テーマとなりやすい。
一方でオイルマネーのお陰で国の経済が潤っているのも事実だ。ノルウェー政府の気候対策と石油を巡る議論は常に理想と矛盾を含みながら、現地で議論され続けてきた。
石油政策を巡っての市民の抗議活動がもはや日常的によく耳にするニュースとなっているなか、環境団体はより過激な行動をとった。
ノルウェーのアネッテ・トレッテベルグステューエン文化大臣はNTB通信社に対して、「気候のための闘いは現代で最も大事な闘いだとしても、芸術を攻撃したところで何も解決にはつながらない。むしろ気候問題をテーマとした展示も多いので、美術館がもつポイテンシャルに目を向けるべきだ」とコメントしている。
オスロ警察によると、絵画を守っていたガラスには接着勢の残りがついているが、絵画事態には傷はないという。
国立美術館は名画が狙われる可能性が高いと判断し、事前に警備を強化していた。
ノルウェーではムンク作品が観光の目玉ともなっており、ムンク美術館も国立美術館も移転が完了したばかりで、芸術を祝う年となっている。
気候活動家が話題を集めたいがために、国の代表作であるムンクの名画が狙われる可能性は欧州で事件が相次いでから指摘されていた。
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現地での報道(ノルウェー語)