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「人が寄り添う社会のためにデジタル化を」河野太郎デジタル大臣が語る

山口健太ITジャーナリスト
就任後、初の会見で語る河野太郎デジタル大臣(会見動画より)

8月12日、河野太郎デジタル大臣が就任後初めての記者会見を開きました。まだ引き継ぎを終えておらず、今後の具体的な方針は語らなかったものの、デジタル化の本質やテレワークの推進について、基本となる考え方を示す場面がありました。

人が寄り添う社会「デジタル化できる部分はデジタル化を」

会見の冒頭で河野氏は、「国民の生活を便利にすると同時に、ぬくもりのある社会を作るためのデジタル化を加速していく」との基本方針を語りました。

具体的な中身については、牧島前大臣からお盆休み明けに引き継ぎを受けてから説明するとのこと。「牧島前大臣が種を蒔いて、水やりをしてくれたつぼみが花として咲くように引き継ぎたい」と語っています。

一方、デジタル化やテレワークの現状については、河野氏自身の考え方を披露。「コロナ禍でのデジタル化の遅れは、多くの国民の皆さんが肌身で感じたと思う。人口が減り高齢化が進む日本において、人に寄り添い、ぬくもりのある社会を作るには、デジタル化できる部分はデジタル化して、人間は人間がやらなきゃいけない部分に集中できるよう努力していく」としています。

岸田首相が河野氏を起用した理由としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を挙げています。あくまで河野氏の個人的な意見と前置きしつつ、「海外のDXはビジネスモデルにまで踏み込んだのに対し、日本はコストダウンや省人化で止まっている。発注書を書けるくらいITに知見のある人が必要だ」と指摘。「まずはデジタル庁が行政のDXを進め、こんなに世の中が変わるのかと、国民の皆さんに実感してほしい」と語りました。

テレワークの推進については「デジタル庁がやってみて、これならセキュア(安全)にできるという手法を横展開していく」との方針。「1980年代にサテライトオフィスに取り組んだ際はテレワークなど無理だと言われたが、コロナ禍で世の中は変わった。私の地元の茅ヶ崎はテレワークができるからといって引っ越してこられた方も多い」と河野氏の地元をアピールしています。

消費者庁の徳島移転については、「特定の組織に対して、全員に移ってもらう必要はなくなった。(テレワークなら)好きなところに行ってよい。昨年は東京からの転出が増えたように、魅力のあるところにどんどん移っていく。東京一極集中を逆回転させる意味でも、本来は霞が関が率先してやるべきだ」とコメントしました。

今回の記者会見は紀尾井町で開かれ、オンライン(Teams)とのハイブリッドという形式でした。この点については、「基本はオンラインで、記者の方がどこにいても参加できるのがいいと思う。今回は最初なので顔を見てもらう意味があったが、今後はテレワークを考えている」と説明しています。

デジタル化、DXを強力に推進できるか

具体的な話には踏み込まなかったものの、就任会見としてみれば、河野氏がデジタル化について真っ当な見識を示したことで、まずは安心できる内容になった印象です。

社会のさまざまな場面で人手不足が進むと予想される中、機械にできることは機械に任せることで余裕が生まれます。そうなれば、困っている人をサポートするなど、人間にしかできない仕事に時間を割けるようになります。

民間企業のDXは、IT機器を導入することと同義にとどまっていた時期もありましたが、経営層が主導し、デジタルの存在を前提にビジネスモデルを再構築する必要があるとの認識が広まっています。

その結果、仕事がなくなってしまう人にはDX人材として活躍してもらうため、リスキリング(再教育)の必要性が高まっています。ようやく回り始めた日本のDXを強力に推進してくれることに期待したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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