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トランプ氏、日韓を愚弄か「神風、祖国愛のためだけに戦艦に激突」「韓国から10億ドル得るのは簡単」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
選挙資金集めのイベントに来たトランプ氏を非難する人々。(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ氏の一挙一動に注目する世界の人々。特に、トランプ氏が自国のことについてどう言及しているかは気になるのではないだろうか? たとえ、その発言が、人々を笑わせるためのジョークであったとしてもだ。

 8月9日(米国時間)、トランプ氏はニューヨーク州ハンプトンズで選挙資金集めのための2つのイベントを行った。その際にトランプ氏が行ったスピーチについて、ニューヨーク・ポスト紙が、“トランプ、資金調達イベントで、エクイノックス・スキャンダルや神風パイロットのジョークを飛ばすという見出しで報じている。

 イベントの1つは、「エクイノックス」という高級フィットネス・クラブ・チェーンのオーナー、ステファン・ロス氏が主催したものだった。そのため、クラブの会員たちが自分たちの払う会員費がトランプ氏の選挙資金になると不満の声をあげてクラブのボイコットを訴えたり、著名人がクラブを退会したりするなどし、アメリカで大きなニュースになっていた。ボイコットされて困惑していたロス氏に、トランプ氏はジョークを放った。「政治の世界へようこそ」。

 しかし、トランプ氏がこの日行ったスピーチには、日本や韓国を愚弄するようなジョークも含まれていたのだ。

韓国から10億ドル得るのは簡単だった

 韓国については、トランプ氏は、同国に10億ドルの防衛費を負担させることに容易に成功したことを自慢する以下のジョークを放った。

「ブルックリンにあるレント・コントロールのアパートの住人から114ドル13セントの家賃を得るより、韓国から10億ドル得る方が簡単だったよ。本当だよ、その13セントはとても重要だったんだ」

 トランプ氏の父親はニューヨーク州ブルックリンにアパートなどの不動産を多数所有していた。そのため、トランプ氏は少年時代、父親と一緒にアパートを回って、家賃の小切手(アメリカは個人小切手で家賃を支払う人が多い)を集めていた。トランプ氏は家賃集めと韓国に防衛費を負担させることを比較、13セントも取りこぼさないように行う家賃交渉の方が韓国との防衛費交渉より大変だったと言ったのである。文政権も随分侮られてしまったものだ。

 トランプ氏はまた韓国について、「韓国は素晴らしいテレビを作っていて、経済が繁栄している。なぜ我々が彼らの防衛費を払ってるんだい? 彼らは(防衛費を)払わねばならないよ」と言及し、「文大統領は僕のタフな交渉に負けたんだ」と言いながら、文大統領の韓国なまりのある英語を真似してみせたという。

神風特攻隊をジョークに

 スピーチでは、日本もトランプ氏のジョークのネタにされた。

 神風特攻隊だった安倍首相の父親(安倍晋太郎氏)に魅了されたというトランプ氏は、安倍首相にこうきいたことがあった。「神風特攻隊のパイロットたちは酔っ払ったり、ドラッグをやったりしていたのか?」。それに対し、安倍首相はこう答えたという。「いいえ、彼らはただ国を愛していたんです」。

 この時の安倍首相の答えにトランプ氏は驚いたのだろう、イベントの参加者たちにこう言った。

「祖国愛のためだけに、タンク半分のガソリンしか入っていない(片道燃料しか入っていないということ)戦闘機に乗り込み、鋼鉄の戦艦に突っ込むことを想像してみてよ」

 想像できないよね?、信じられない!とでも言わんばかりの、神風特攻隊を揶揄するような発言ではないか。

 ちなみに、トランプ氏は2017年11月に訪日した際も、「米軍をみくびった国にろくなことはなかった」とまるで日本のことを示唆しているかような発言をし、イギリスのメディアに叩かれた。

 また、関税問題に関する安倍首相とのやりとりについて話した際は、日本語なまりの英語も真似してみせたという。

 もっとも、トランプ氏は、以前も、スピーチの際に、なまりのある英語を使ってアジアの指導者の真似をしたことがあったので、同盟国の指導者たちを笑い者にすることは彼の十八番になっているのかもしれない。

僕と会っている時しか笑わない

 その一方で、トランプ氏は、スピーチで、金正恩氏とのブロマンスを自慢した。

「今週、彼から美しい手紙をもらったんだ。僕らは友達だ。彼は僕に会っている時しか笑わないそうだよ」

 かねて、同盟国には厳しく、敵国には甘いことが批判されているトランプ氏だが、スピーチの端々にもそれが表れてしまったようだ。

 そんなスピーチが披露されたイベントのチケット代は最高25万ドル。トランプ氏は同日のイベントで1200万ドルもの資金調達に成功した。

 トランプ氏の選挙資金集めのためのジョークのネタにされたことを、安倍首相と文大統領はどう思うのか? 

 いくらでもジョークにして下さい。日韓の対立が激化する中、アメリカを味方につけたいと考えている両首脳は、そう言ってトランプ氏にかしずきたいところかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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