Adoさんがプリキュアを歌ったことが批判された件は非実在型炎上だったのか
歌手のAdoさんがプリキュア5、スマイル go go! を歌ったことで,批判が続出したという記事がスポニチアネックス(現在は削除済み)や日刊サイゾーなどで掲載されました.
その中では,Adoさんが批判に対して謝罪したことも話題になりました.
では,実際には批判はどのくらいあったのでしょうか?
「どうせまた大して炎上していない非実在型炎上だったんでしょ?」
と思いながら分析してみました.
10月19日~29日までで,Adoと「プリキュア」や「謝罪」が一緒に出現したツイートや,Adoさんへのリプライ,YouTubeへのリンクなどを含むツイートと35,147件について分析を行いました.
まず,どのようなツイートがあったのかクラスタ分析を行いました.その結果が下図のようになりました.
意外なことに批判ツイートのクラスタがちゃんと抽出されました.どうやら,実際の批判ツイートはほとんど存在しない非実在型炎上というわけではないという事が分かりました.油断した.
では,批判ツイートの拡散はどのくらいだったのでしょうか.各クラスタの1日ごとの拡散数を見てみました.その結果が下図の通りです.
最も大きなクラスタは「批判への批判」でありは28日にピークがあります.これは,先にあげたスポニチアネックスや日刊サイゾーなどのメディアが記事にした影響かと思われます.一方,歌を発表した24日ごろはどうだったかというと,歌への賞賛が比較的多く,Adoさん本人のツイートをRTしたクラスタや誕生日をお祝いするようなツイートが多く拡散していました.
批判クラスタのツイートはほぼ10月25日に拡散しただけで,クラスタに属するツイートが拡散した回数は28日までで520回,拡散したアカウントも494でした.Adoさんが謝罪ツイートを行った25日までで見ると,24,25日で21,157ツイートあるうちの批判クラスタの拡散は396ツイートでしたので,批判が噴出したというほどではなかったと言えそうです.
なお,批判ツイートは拡散してないが大量にあったという可能性もあるため,1%サンプリングに相当するストリーミングデータを根性マイニング(筆者が目で見て頑張るマイニング手法)で確認したところ,拡散していない批判的なツイートは1.8%程度で拡散したツイートにおける批判の割合と同程度でした.概ね批判は2%未満だったと考えてよさそうです.
というわけで,批判派はある程度存在していたがその規模は小さかった,と言えそうです.
では,この批判を拡散した人たちはプリキュアのファンで夢が壊された人たちだったのでしょうか?最初にツイートした方はファンだと名乗っていますが,それを拡散した人たちについては分かりません.
そこで,10月1日~23日までの「プリキュア」が含まれるツイートを収集し,それらのアカウントとの比較を行ってみました.もちろん,「プリキュア」が含まれるツイートを行ったからといってプリキュアファンというわけではないでしょうし,プリキュアファンは一か月の間に一回くらいはプリキュアとツイートするかと言われればそんなこともないでしょうが,参考くらいにはなるかと思います.
というわけで,得られた各クラスタのツイートを拡散したアカウントの「プリキュア言及率」を図にしてみました.
この結果から,歌を称賛しているクラスタのアカウントは比較的プリキュアについて以前からツイートしているアカウントが多いことが分かりました.プリキュアが好きなアカウントがAdoさんの歌を称賛しているということで,今回の歌を好意的に受け取っているアカウントにはプリキュア好きが多いということじゃないでしょうか.50%を超えているので,中々だと思います.
一方,批判ツイートを拡散したアカウントは20%程度になりますので,ファンじゃないということは無いと思いますが,賞賛しているアカウントらに比べるとファン率は低そうだと考えられます.
ちなみに,Adoさん本人のツイートの拡散や誕生日祝いツイートなどを拡散しているアカウント群はプリキュアへの興味はあんまりなさそうです.
逆に,プリキュアと言及しているアカウント群はどのようなツイートを拡散していたでしょうか.10月1~23日に「プリキュア」と1度でも言及した121,748アカウントの中で,今回の騒動に関するクラスタに属するツイートをRTしたアカウントの割合を示してみました.
そもそもプリキュアに言及するアカウントのうち今回の件に興味を持ったアカウント数が3.5%くらいでした.その中でも比較的多く拡散されていたのは,批判への批判と歌への賞賛でした.これらは1%を超えるくらいのプリキュア言及アカウントによって拡散されていました.
一方歌への批判は0.08%くらいでありほとんど存在しなかったことが分かります.少なくとも現役プリキュアファンでAdoさんが歌ったことに批判的だったアカウントはかなり少数だと見積もることができそうです.
というわけで,Adoさんがプリキュアを歌ったら批判された,という話については,批判があったというのは全く根も葉もない話ではなかったがわざわざ注目するほどの量ではなかった,といったところではないでしょうか.
また,批判をした方はプリキュアファンだったかもしれませんが,プリキュアファン全体から見るとごく一部だろうという事ができそうです.
どんなことをやっても,ネット上では一定数の批判は発生しますし,その批判をことさら取り上げてアクセスを稼ごうとするメディアも存在しますが,圧倒的な支持を得られている方は無理にそこに注目する必要はないのではないでしょう.
Adoさんにはこれだけたくさんのファンがいるのですから,数万件のツイートがあったうちの少数の批判的な方に目を向けずに,ポジティブな皆さんに向かって活躍していっていただければと思います.