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【元美容看護師解説】PRP注射(成長因子)の膨らみすぎ・しこり形成を避け失敗を防ぐ治療を受けるには?

繁和泉看護師・予防医学士・薬機法管理者
美容医療を賢く活用

近年PRP注射の膨らみすぎ問題や、しこりができてしまったという情報をよく見ます。少し前に、おでこのPRP治療をしたモデルさんが過剰反応して、おでこがコブダイのようになってしまった症例を拝見しました。

PRP注射とは?
PRP注射(Platelet-Rich Plasma、血小板豊富血漿)とは、美容医療において皮膚の再生や若返りを目的とした治療法の一つです。この治療では、患者自身の血液を採取し、血液中の成分を遠心分離機で分離して、血小板や成長因子が豊富に含まれた「PRP」を抽出します。これを皮膚のターゲットエリアに注射することで、自然治癒力を促進し、コラーゲンの生成を刺激します。より強力な作用を求めて成長因子を添加したPRP製剤を作成して注射する治療法も出てきています。

10年近く美容外科看護師として勤務していて、成長因子入りのPRP療法を提供している美容クリニックでの勤務経歴もありましたが、そんな私から見てもあのレベルの膨らみ方は見たことがありません。

あそこまでの変化が出てしまえば、確かに「失敗」と言わざるを得ないと思いました。

しかしながら長い経験から見ても、あのレベルの膨らみすぎたしこり形成は本当に稀なレアケースだと思います。

過去の記事でも紹介しましたが、私は数多くあるエイジングケアの注射治療やレーザー治療、脂肪注入治療を含めた中でも「一番いい治療は何ですか?」と聞かれたら、間違いなく「PRP療法」と答えます。

私自身も経験しましたが、コスパやタイパ・結果的にかかる料金などを踏まえてもPRP治療はエイジングケアとして最も適していると私自身は考えています。

ではなぜ、今回のモデルさんのケースのようなひどい失敗例が生じるのでしょうか?

一医療従事者としては、やはりきれいになるために美容医療を受けに来て、あのような結果になってしまうのはとても悲しいです。

そしてこれから美容医療を検討している方には、できるだけ避けて欲しい事態であるとも思っています。

今回の例をきっかけに「どうしたら膨らみすぎやしこり形成という失敗を避けられるのか」という方法について思案し、紹介していきたいと思いました。

しこりや膨らみ過ぎ問題が起こるのは医師の腕による

美容医療は医師のセンスが重要
美容医療は医師のセンスが重要

結論から言います。成長因子が添加されたPRP注射やPRP治療の成功や失敗を大きく左右するのは医師の腕とセンスによるところが大きいです。

ごく稀に患者さんの血小板の反応などにより、予想以上に膨らみすぎるケースも「0」ではありませんが、基本的にはそれらも加味した上で、注射する量や注射する深さ、添加する成長因子の濃度などを計算してPRP製剤を作成し注入する必要があります。

その計算ミスや未来予想図を見誤り、過剰な量の注入や注入層の選択ミスによりPRPが膨らみすぎてしまったり、表情を変えた時にしこりとして「ポコッ」と盛り上がってしまった時に違和感につながってしまうのです。

実際にPRP治療は、患者様の血液を使うので最終的な結果はある程度個人差が生じる可能性はあります。

しかし、その個人差を加味して「注射するセンスがあるかどうか」というのが医師の腕の見せ所でもあるのです。

手術であれば実際に切開して組織を展開した時に、解剖学的な個人差を目に見ることができるので調節もしやすいです。

一方でPRPはあくまでも注射治療。ブラインド下で手術をするようなイメージと同義と言えるかもしれません。

私の経験からくる傾向値の感覚ではありますが、PRP注射においては医師の先生や経験が重要なのもさることながら、性格的に慎重な医師の方が「膨らみすぎた・失敗した」というような事例が少ないように感じます。

経験上ですが慎重な医師は、PRP注射をある程度控えめに打つ傾向にあると感じています。

万が一PRP注射したところのボリューム感が足りなかったとしても、足りない場合は追加すればいいだけです。

過剰反応が出てしまった場合には、その修正が大変なのでリスクを考えると慎重な医師ほど若干控えめに注射して、患者様のPRP注射反応を見た上で必要であれば修正をするという対処法を取っているように感じます。

重要なのは医師のセンス
性格的に慎重な医師の方が失敗につながりにくい

もし注射する場所をいくつか選択できるなら、ほうれい線からが無難

初回注射にはほうれい線が無難
初回注射にはほうれい線が無難

今回ニュースでも大々的に取り扱われでいましたが、結論私の経験上でも「膨らみすぎました。しこりができました。」と訴える人が来る場所のナンバーワンが「おでこ」でした。

おでこは皮膚のすぐ下に骨があり、脂肪層がないのでPRP注射を入れすぎたり過剰反応が起こると、すぐにしこりや膨らみすぎ問題に直結しやすい場所であると考えます。

ですので、基本的におでこへの注射は非常に慎重にならざるを得ないと言えるでしょう。

もし注入する場所を選べるのであれば、一番最初に注射する場所は「ほうれい線や頬」など、多少膨らんでも見た目の違和感につながりにくい場所で注射するのがいいかなと思います。

ほうれい線や頬などであれば、万が一PRPが過剰反応して膨らみすぎたとしても、注射したスペースの上下左右に逃げるスペースがあるので悪目立ちしにくい場所でもあると言えます。

生まれて初めて成長因子入りのPRP注射や治療を受ける時には、「ほうれい線や頬」などの部位から始めて、「自分のPRP製剤はどのぐらい反応するのか?」というのを見極めてみたいところです。

その後、おでこなど繊細な技術を求められる箇所の治療に進むと、より失敗につながりにくいと言えるでしょう。

おでこは万が一の膨らみ過ぎの場合にしこりとして目立ちやすい場所
注入部位を選べるならほうれい線や頬などから始めて自分の膨らみ方の反応を見る
額など皮膚が薄いところへの注射は慎重に検討する

自分の理想は100%再現したいと期待する人は避けた方がいいかも

どこまでこだわるか…
どこまでこだわるか…

PRP注射に限らずですが、美容クリニックでの施術は人工的に手を加え結果を得る手段なので、「自分がこうなりたい」と考えた理想を毎回必ず100%の確率で再現できるわけではありません。

理想よりもちょっと変化が足りない
思ったよりもちょっとオーバーな変化だった

ということは少なからずあるのです。その状態になった時に、どのようにして修正がきくのか?という万が一のリスクを必ず考えておかなくてはいけません。

例えば同じエイジングケア治療で代表的な注入治療といえばヒアルロン酸やボトックスだと思います。

ヒアルロン酸であればヒアルロン酸を溶かす液体を注射すればみるみる溶けてしまうので、すぐに修正ができるでしょう。

ボトックス注射の場合、変化に満足いかなくてもボトックスは早ければ3ヶ月程度、遅くても6ヶ月程度で必ず効果がなくなります。

つまり、どちらも注入したものの効果を簡単にもとに戻すことができるのです。

一方でPRPに関して言えば、予想以上に効果が出過ぎてしまった場合、その修正は正直なところなかなか手こずります。

過度な膨らみでなければ「ケナコルト注射」という薬剤でふくらみすぎたボリュームを抑えることができます。

しかしケナコルトの反応は個人差があるため、その修正がなかなかに大変なのです。

PRP注射で「膨らみすぎた・しこりになった」と訴える患者さんの中で、多くの場合は表情を変えた時にぽこっと出てくる不自然なふくらみが気になっているという訴えが最も多いです。

例えばの訴えには以下のようなものがあります。

  • おでこの場合:眉毛を上向きに上げる動作、上目遣いをする時におでこの膨らみがポコッと出てきた
  • ほうれい線、口周りの注射の場合:笑った時にポコッと鼻の横に膨らみができてしまう
  • 目の下の膨らみの場合:表情を変えた時にPRPを注射した目の下の部分がボコッと出てきてしまう

というような訴えで失敗したと訴えられる方がいます。

もちろん大きな膨らみやしこりは気になるのも当然ですが、よくよく見ないとわからないレベルのことも少なくありません。

つまり、本人は気になっているけど周りから見るとそこまで気にならないレベルでも気になってしまうというケースも少なからずあります。

自分の美意識や性格的に繊細な感覚の持ち主の方は、PRP治療に向いていないかもしれません。

患者様の性格によって、万が一のリスクを考えた場合に「修正が容易にできるかどうか」というのは必ず視野に入れておきたい懸案事項となるでしょう。

自分の期待する結果に対してどのくらいのずれなら許容できるかをよく考える
どのような美容医療でも修正のリスクは付きまとう
万が一のリスク>結果・コスパ・タイパの追求となるならPRPには向かない

PRP治療はいい治療ではある!しかし、医師選びと付き合い方は非常に大事!

クリニックで選ぶのではなく医師で選ぶ
クリニックで選ぶのではなく医師で選ぶ

PRPに限らずですが、美容医療も医療の一部です。人体実験とは言いませんが、失敗と成功を繰り返し、より精度がよく安全性の高い治療へとブラッシュアップされていきます。

美容医療だけではなく一般的な医療も、治験などを繰り返しながら新しい治療が開発されていきますよね。

美容に関しては、どうしても自由診療になってしまうため、実際の患者さんの症例を踏まえてブラッシュアップせざるを得ない実情があるのです。

PRP治療は、ヒアルロン酸やボトックスに比べるとまだまだ歴史の浅い再生医療です。

それでも日本に取り入れられてから数十年以上経ってきたので、近年では取り扱う医師の経験値やセンス、PRP治療に対する考え方などがだいぶ定まってきていると感じています。

実際に私自身も目の下やほうれい線、おでこなどにPRP治療を受けていますが、やはりうまく付き合えば長く安定した効果を発揮してくれます。

吸収してなくなってしまうヒアルロン酸やボトックス、最終的なボリューム感を踏まえた仕上がりの予想がつきにくい脂肪注入などに比べると、非常に体の侵襲も少なくタイパやコスパに優れている治療だと考えます。

実際に私が継続的に行っている治療は、PRPでは手に負えないちりめんじわに対するボトックス注射とPRP注射だけです。

しかし、医師選びや注入場所選びに失敗し、悲しい患者様の声が「0」ではない実態も知っています。

PRP治療に関しては、大事なのは「クリニック選び」ではなく、「医師選び」です。そして、医師と二人三脚で治療を進め、よりよい結果を追求するなら「どこから治療を始めるか」も重要なファクターとなるでしょう。

美容医療を賢く上手に活用し、自分にとって満足の行く美容医療をを上手に活用できるようにしたいですね。

看護師・予防医学士・薬機法管理者

【医療・美容・健康・ヘルスケア・子育てに関するリアルな情報を発信】兄妹の子育てをしながら働くワーママ。保有資格を活かしながら実際の現場で得た自身の知識や経験をもとに「誇大表現にならないリアルな情報をユーザーに届け、ユーザーが自分にとって適切な判断ができる」情報発信を追求。Well-beingな社会を目指す。

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