ロシア軍イスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾頭型の攻撃の様子が初めて動画で確認
ロシア国防省の3月13日に発表した動画で、駐機している複数のウクライナ軍のヘリコプターをクラスター弾で攻撃する様子が映っていました。多数のクラスター弾は空中炸裂しており、イスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾頭型の9N730子弾が使用されたものと推定されます。場所は東部のドネツク方面です。
- 0秒~8秒:クラスター弾攻撃(推定:イスカンデルM弾道ミサイル)
- 9秒~40秒:自爆ドローン攻撃 ※低速のミサイルの可能性もある
※ВСУ:ウクライナ軍を指すロシア語での略語。ウクライナ語ではЗСУ、英語ではAFU。
※航空偵察手段はおそらく固定翼の偵察ドローン。クラスター弾は推定イスカンデルM弾道ミサイルの9N730子弾。高精度兵器は弾着速度が遅いので自爆ドローンないし低速のミサイル。
イスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾頭型の9N730子弾には近接信管9E156「ゾーント」が搭載されており、公開された動画の空中炸裂の様子は特徴が合致しています。
空中炸裂している高度が数mから10m程度であること、爆風破片効果の通常榴弾であることなどから、自己鍛造弾の対戦車クラスター弾は否定されます。対人・非装甲目標用で空中炸裂するクラスター子弾は珍しい存在で、イスカンデルM弾道ミサイルの9N730子弾である可能性が高いと思われます。
※上記9N730子弾の不発弾の写真は2023年2月11日にウクライナ国家警察(ザポリージャ州)から公表された回収品で、攻撃の動画とは別のもの。
※9N730子弾、9Н730:イスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾頭型に54個が内蔵された対人・非装甲目標用の子弾。近接信管9E156「ゾーント」を搭載する。
※9E156「ゾーント」、9Э156 «Зонт»:電波高度計とレーザー距離計を使用して空中起爆する近接信管。ゾーントとは傘の意味。
イスカンデルM弾道ミサイルは様々な種類の弾頭が用意されており、単弾頭型、クラスター弾頭型、核弾頭型などがありますが、クラスター弾頭型だけでも何種類もあり、対人用や対戦車用など用途によって使い分けされています。
近接信管は高価な部品なので多連装ロケットのクラスター子弾に用意する場合は必要な量があまりにも多くなるので適用が難しいのですが、弾道ミサイルならばミサイル自体が高価で数が用意できないので、クラスター子弾に近接信管を搭載しても費用面での割りが合うという判断がされているようです。クラスター弾でなおかつ子弾それぞれが空中炸裂するならば非常に広い範囲を制圧できます。