2018年度予算編成がスタート。医療・介護はどうなる?
衆議院選挙が終わり、特別国会が始まる前だが、今年末までに取りまとめる2018年度政府予算案の議論が始まった。選挙が終わった今週、2018年度予算案をにらみ、経済財政諮問会議、政府税制調査会、財政制度等審議会、中央社会保険医療協議会など、続々と開催された。
2018年度予算案で、最大の焦点の1つは、社会保障費である。
9月25日の安倍晋三首相の記者会見で、2022年度までに達成するとしていた「子育て安心プラン」での待機児童対策を、2020年度までに実施すると前倒しすることとした。2018年度予算から早速実施する。これは、消費税の10%への増税の前に行うものである。そのため、2018年度に追加でその財源を確保しなければならず、消費税の増収分以外のところから探す必要が出てきた。
他方、閣議決定された「骨太方針2015」で、社会保障関係費を3年間で1.5兆円程度に抑えることを目安として、2018年度も継続することとなっている(概算要求の基本方針)。2016年度と2017年度予算で約1兆円の増加に抑制できたことから、残る2018年度予算では5000億円の増加に抑えることができれば、目安は達成される。
8月末に厚生労働省から提出された、2018年度の社会保障関係費の概算要求では、自然増が6300億円となった。これに、9月の安倍首相の記者会見で「子育て安心プラン」の前倒し実施による約500億円が加わることで、これらを5000億円の増加に抑えることが必要となった。つまり、自然増の抑制は、1300億円ではなく、1800億円ということとなる。こうすることで、閣議決定された「骨太方針2015」の目安の達成を目指す。
「子育て安心プラン」の前倒し実施に必要な財源を、利益率の高い保育事業者への施設運営費の補助を削減することなどで賄えれば、医療や介護、生活保護などの給付をさらに抑制する必要はなくなる。しかし、それができなければ、医療、介護、生活保護の給付の抑制にも影響が及んでくる。
2018年度予算には、6年に1度の診療報酬・介護報酬改定の結果を反映することになる。報酬改定では、抜本的な改革を行うことができれば、必要な医療や介護の給付を残しつつ、給付を大きく抑制できる。例えば、医薬品の単価を抜本改革を含めて大きく下げられれば、1000億円単位の自然増の抑制が可能となるから、それを実行して他の抑制幅を小さくするという方策はあり得る。
もちろん、社会保障費を、財政収支改善のために削減しさえすればよいということではない。わが国の社会保障の将来像を、望ましい姿にしてゆくために、足元の社会保障費の抑制が必要となるのである。社会保障費を重点化・効率化して抑制できれば、国民が払う社会保険料の負担も減らせる。給料の伸び以上に社会保障給付が増えれば、社会保険料の負担率は高まってしまう。
わが国の社会保障の目指すべき姿を要約すれば、
- 大きなリスクは共助・小さなリスクは自助
- 年齢ではなく負担能力に応じた公平な負担
- 高齢化の進展を踏まえた医療・介護提供体制の確保
- 公定価格の適正化・包括化等を通じた効率的な医療・介護
である。
この方向性に従って、2018年度予算案をどう編成するか。