「冬野球」の祭典で見かけた懐かしの助っ人たち【カリビアンシリーズ2024】
先日、大盛況の下ベネズエラの優勝で幕を閉じた中南米ウィンターリーグの国際チャンピオンシップ、カリビアンシリーズだが、ここに集うのは、今シーズンの夏の契約がまだ決まっていない者たちである。メジャーリーガーの最低報酬が1億を超えるようになった今、ここウィンターリーグでプレーするのは、「メジャー未満、マイナー以上」の選手であるということだ。つまりは、世界第2のパワーハウスである日本のNPBにやってくる「助っ人」選手たちと層が重なる。
そういうわけで、今回のシリーズにも、日本でプレーした経験を持つ選手が複数いた。
その筆頭は、すでに報道されているように、NPBでシーズンホームラン記録を打ち立て、長らくファンに愛されたウラディミール・バレンティンだろう。
キュラソー代表のサンズのメンバーに名を連ねた彼は、現在はマイアミでセミリタイア状態で、夏のシーズン中は本国のオランダから声がかかれば代表チームに合流し、オフシーズンはウィンターリーグでプレーしている。
日本時代に比べ幾分ぽっちゃりした印象だが、その打力はまだまだ健在で、今シリーズの総当たりリーグでもレギュラーとしては最高の.319の打率を残してライトのベストナインを獲得している。もう夏のシーズンを送るつもりはないようだが、今年発足し、来季からはさらに試合数を拡大する予定の故郷・キュラソーのプロリーグでプレーするかもしれない。
今回悲願の初出場を叶えたものの、予選リーグ全敗に終わったニカラグア代表、ヒガンテス・デ・リバスに助っ人として参加していたのが、元ロッテのドミニカ人、フランシスコ・ペゲーロだ。
ジャイアンツでメジャー経験もある彼だが、ジャパニーズドリームを叶えようと、メキシカンリーグから2017年、日本の独立リーグ、ルートインBCリーグの富山GRNサンダーバーズ(現日本海リーグ)に移籍。ここでリーグ記録のシーズン115安打を放ち、千葉ロッテと契約、見事夢を叶えた。しかし、結局一軍の戦力にはなることなく退団。その後はメキシコに活動の場を移し、昨シーズンはピラタス・デ・カンペチェで活躍し、冬はニカラグアに渡った。
今や国際大会でメキシコチームに欠かせないのが元広島のラミロ・ペーニャだ。メジャーリーガーとしてジャイアンツでシーズンを過ごした2016年秋、侍ジャパンとのテストマッチで初来日。ここで広島の若きエース、野村からホームランを打ったのが目に止まったのか、翌年シーズンに広島と契約した。
カープでは期待されたような活躍はできなかったが、メキシコに戻った後は、メキシカンリーグの強豪、スルタネス・デ・モンテレイの主力選手として活躍し、2021年の東京オリンピックでも代表メンバー入りして再来日を果たしている。
ウィンターリーグでも有名選手で、補強選手制度をつかって毎年のように出場。この冬のシーズンは、ベナドス・デ・マサトランのセカンドとして活躍した後、メキシカン・パシフィック・リーグを制したナランへロス・デ・エルモシージョに合流し、自身3度目のカリビアンシリーズに臨んだ。
今大会も順当に決勝まで勝ち進んだドミニカ共和国には、もはやレジェンドと言っていいベテラン左腕がいた。
中日にいたラウル・バルデスの名を覚えている人は少なくなってきているかもしれない。2015年から3シーズン在籍したキューバ生まれの元メジャーリーガーだ。来日したときにはすでに38歳であったが、毎年20試合以上先発し、ローテーションを担った。
日本球界を去った後もメキシカンリーグに活躍の舞台を移し、2021年の東京オリンピックにも国籍を移したドミニカ代表チームの一員として来日。銅メダルのかかった韓国戦に先発し、チーム銅メダルに導いている。
46歳となったこの冬はドミニカリーグのトロス・デル・エステで先発の柱として活躍し、優勝チーム、ティグレス・デル・リセイの補強選手として自身6回目となるカリビアンシリーズに参加した。総当たり予選最終戦のキュラソー戦で先発し、持ち前のボールをコーナーに集める丁寧なピッチングで、メジャーリーガーの居並ぶキュラソー打線を翻弄していた。
ベネズエラ勢として実に15年ぶりの優勝を飾ったティブロネス・デ・ラグアイラには、ヤクルトで2020年シーズンを過ごしたアルシデス・エスコバーの名があった。
メジャーで長らくレギュラー遊撃手を務め、MLBオールスター、WBC出場、ゴールドグラブ受賞という輝かしい経歴を持つ彼は、2014年にはMLBオールスターチームの一員として来日し、日米野球にも出場している。
しかし、2020年、不動のショートとして期待され迎えられたヤクルトでは、往年の守備力はなく、元々「助っ人」としての長打を期待できる打力もなかったため、1年でリリース。その後はアメリカに戻り、ナショナルズでメジャー昇格を果たした。
昨シーズンはメキシカンリーグで送り、冬はラグアイラでセカンドとして打率3割をマークした。
今回のカリビアンシリーズでは絶好調で、ベストナインは同じセカンドのロビンソン・カノ(ドミニカ)に譲ったが、予選リーグでは17打数7安打で4割超えの高打率。決勝では、最後のアウトとなるセカンドゴロをさばき、ウィニングボールを手にした。
日本では生活習慣、野球文化の違いもあって活躍できないことも多い助っ人たちだが、ラテンアメリカのウィンターリーグではまだまだ現役を務めている。カリビアンシリーズの活躍は、今後の契約に関わってくるので彼らのプレーは懸命だ。
「冬野球」最大の祭典の終わりは、メジャーのスプリングトレーニングの始まりを告げる。彼らは今シーズンをどこで送るのだろう。
(写真は筆者撮影)