久保建英はレアル戦でハイパフォーマンスを披露できるか。ソシエダの戦い方の変化と試金石の試合。
ビッグマッチが、迫っている。
リーガエスパニョーラ第5節、レアル・ソシエダはレアル・マドリーと対戦する。首位のマドリーが、本拠地サンティアゴ・ベルナベウに9位のソシエダを迎える一戦だ。
「レアル・マドリーには素晴らしい選手たちが揃っている。偉大な監督がおり、試合はベルナベウで行われる。それは明確だ。彼らはリーガの4試合で4勝と全勝しているからね」とはイマノル・アルグアシル監督の弁である。
「メンバーが入れ替わり、システムが変更され、スタジアムが刷新されても、マドリーはマドリーだ。彼らの本質は変わらない。最もタレントとクオリティを備えたチームなんだ。我々が彼らに勝つためには、彼らの調子が悪く、我々は素晴らしい試合を演じなければいけない」
■ソシエダの戦い方の変化
重要なのはソシエダの戦い方だ。
ソシエダはこの夏、ダビド・シルバが負傷で長期離脱を余儀なくされ、最終的に引退を決断。イマノル監督は戦術の変更を強いられた。
シルバが不在となり、ソシエダが最も苦しんでいるのはビルドアップだ。シルバがいる時は、トップ下あるいはインサイドハーフに置かれた彼が、時々中盤や最終ラインのところまで降りてきてボールの出口をつくるようなプレーをしていた。
だがその選手は、最早いない。そのような状況で、イマノル監督はGKアレックス・レミーロを使いながら、ビルドアップするというのを考えるようになった。
レミーロは、GKマーク・アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)に並んで、現在、ラ・リーガで最もモダンな守護神の一人だ。つまり、シュートストップだけではなく、足元の技術が高いタイプのGKである。長短のパスを織り交ぜながら、後方からのパス出しができる選手だ。
■レミーロのビルドアップ参加の効果
レミーロのビルドアップ参加の効果は、テルセール・オンブレ(第三の男)を使える、というところであらわれる。
例えば、こういったシーンだ。レミーロから、ミケル・メリーノに縦パスが送られる。GKからインサイドハーフへのグラウンダーのパスだ。この時、アンカーのマルティン・スビメンディが、サポートに入る。メリーノがスビメンディにボールを落とせば、スビメンディが前向きな状態でプレーできる。
実際、第4節グラナダ戦では、2点目の場面で、このビルドアップが成功。最終的に、久保建英のゴールにつながった。
以前は、シルバがその役割を担っていた。シルバ(パスの受け手)が楔のパスを受け、スビメンディに落とし、アンカーの選手の前向きな状態をつくっていた。
現在は、それをレミーロ(パスの出し手)が行っている。
イマノル監督は、パスの受け手とパスの出し手を入れ替えて、新たなビルドアップの方法を確立している。
ただ、課題がないかと言えば、そうではない。
このビルドアップでは、攻撃の重心が下がりがちになる。ボールの出発地点が最後尾なので、当然だ。
また、これは非常にリスクを伴ったやり方でもある。GKレミーロを起点に厳しい前線からのプレッシングをかけられ、引っ掛けられたら、一気に大ピンチになる。それはまさにレアル・マドリー戦のようなビッグマッチで試されるだろう。
■久保のパフォーマンスは
そして、久保だ。
先の代表戦で披露したように、久保は今季、序盤戦から好調を維持している。特に、ドイツ戦で見せたような、右サイドでの前からのプレスはまさにソシエダで体得したようなプレーだった。
今季の久保はソシエダで、ここまで4試合で3得点1アシスト。非常に良いペースで得点に絡んでいる。【4−3−3】の右WGに置かれ、攻撃においてはある程度自由が与えられている。
一方、前述の通り、ソシエダはシルバがいなくなった。膠着状態になると、久保やアンデル・バレネチェアといったウィングの選手にうまくボールが入らなくなることがある。どのようにボールを受けるか、というのはマドリー戦で一つのポイントになりそうだ。
「我々はレアル・マドリーとのゲームを楽観的に捉えている。共にチャンピオンズリーグに出場する同志のような存在だ。イマノル監督の就任以降、我々はリーガで2度、コパで1度、マドリーに勝っている。そして、2度引き分け、2度敗れているが、敗戦のひとつは1週間に3試合を行った後のものだ」
「我々とマドリーの関係は良好だ。マドリードに赴き、フロレンティーノ・ペレスに会うと、常に何かしら学びがある。今回も相違ないだろう。結果がどうあれ、我々は彼らを祝福する」
これはジョキン・アペリバイ会長の言葉だ。
今季、ソシエダはチャンピオンズリーグにも参戦する。グループステージではインテル、ベンフィカ、ザルツブルクと同組だ。
そういったゲームに向け、レアル・マドリー戦が試金石になるーー。それだけは、疑いの余地がない。