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広末さんの不倫に批判的なツイートは4%

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
ネット炎上(写真:イメージマート)

女優の広末涼子さんがフレンチレストランシェフの鳥羽周作氏と不倫をしたという記事が3月7日に週刊文春に公開され話題となりました.

W不倫だったり,ラブレターが公開されたりと話題が尽きない感じですが,広末さんに関するCMが削除されるなど問題は大きくなっているようです.

一方で,私の周りでは広末さんのかつての人気を知らない若者たちの存在にジェネレーションギャップを感じる40代ばかりが観測され,これぞエコーチェンバーという感じになっています.そこで,世間一般にはこの不倫の件がどう扱われているのか知るために,ツイートの分析を行ってみました.

ツイート分析

まず,「広末」をキーワードに超がんばってデータの収集を行いました.その結果6月7~19日の間で239,656アカウントによる521,702ツイートを収集できました.

1時間ごとのツイート数をプロットしたものがこちらです.

広末さん関連ツイート(筆者作成)
広末さん関連ツイート(筆者作成)

まず,週刊文春の6月7日の記事で少し話題になり,その後広末さんが不倫を認めた6月14日に大きく話題になっていることが分かります.

ちなみに,一般の炎上事例と同様3日目くらいにはだいぶ収まってきていることが分かります.このまま更なる燃料投下が無ければ話題としてはかなり鎮火しそうな気がします.

クラスタ分析

次に,どのようなツイートがあったのかを確認するために,ツイートのクラスタ分析を行いました.

その結果は下記の通りです.

広末不倫界のクラスタ(筆者作成)
広末不倫界のクラスタ(筆者作成)

クラスタA,Bは「広末さんが批判されているが他にも批判されるべき人がいるのではないか」というツイート群です.特に,クラスタAは主に政治的な批判が多く,クラスタBはジャニーズ関係の報道が少ない事への批判が多いクラスタでした.

また,クラスタCは広末さんの手紙を公開したメディアの批判や不倫に関するネタツイートクラスタでした.

クラスタDはネットメディア系の記事関連,クラスタEは不倫ニュース関連,クラスタFは占い師によるツイート関連のクラスタでした.

こう見ると,不倫した広末さんを批判するようなツイートはクラスタとしては抽出されていませんでした.どちらかといえば,批判されているのは手紙を公開したメディアであると言えそうです.それにしても,ツイッター上の広末さん人気すごい.

根性マイニング

クラスタ分析からは,何気に広末さんの不倫を批判するようなツイート群がほとんど見つからなかったため,個人的には,多くの人は不倫自体を大して問題視していないんじゃないかという疑惑がわいてきました.

しかし,クラスタは形成していないものの個々のツイートの中には一定数広末さんへの批判がある可能性はあります.そこで,根性マイニング(筆者が目で見て分類する手法)を用いて広末さんへの批判ツイートかそうでないかを分類し,何パーセントくらい広末さんへの批判があったのかを分析してみたいと思います.

しかし,寄る年波には勝てず,広末涼子(42)よりも年上の筆者的には根性マイニングは結構つらい.そこで,ChatGPTにも手伝ってもらった根性マイニングを行いました.具体的には,ChatGPTでFew-Shot Learningを行い,ChatGPTが出した結果を根性で全部見て間違っているところを修正するという手法です.

ランダムに抽出した165ツイートを分類した結果が以下の通りです.

批判ツイート率(筆者作成)
批判ツイート率(筆者作成)

この結果から,広末さんに言及しているツイートの中で批判的なものは4%程度だったことが分かりました.

世の中の人は,芸能人が不倫したからと言ってそれほど批判の対象とはならないと思っているのかもしれません.

どちらかと言えば,むしろメディアに対する批判が目を引きました.「〇〇の話ではなく政治家を批判せよ!」というツイートはどんな炎上事例でも出てくるのでいつものことですが,広末さんの手紙を公開したことに対する批判はかなり拡散しているようです.

実際,広末さん不倫に関するツイートで最も拡散したツイートはこちらでした.

こういったツイートが最も拡散していたということで,私信を公開するようなメディアは実はあまり支持を得られていなそうな気もしますがどうなんでしょうか.とはいえ,皆下世話だと思いつつ,ついつい興味を惹かれて見てしまったりするのかもしれませんが.まさにアテンションエコノミー

おわりに

というわけで,広末涼子さんが不倫したという話題に対して,ツイッター上でどのような反応があったのかを分析しました.

その結果,広末さんに批判的なツイートは4%程度であり,あまり存在しなかったことが分かりました.もちろん,ツイートをせずとも心では批判している方もたくさんいると思いますし,一般的に褒められた話ではないでしょう.

その一方で,マスメディアが私信たる手紙を公開したことには批判が多く集まっているようです.ですが,結局下世話と思いつつも読んでしまったりするので,結局出したもの勝ちと言うのは情報空間の構造的欠陥かもしれません.

ところで,こういった記事を書くと良くタイトルしか読まれずに誤解されることがあるので,今回はタイトルにストレートに結論を盛り込んでみました.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会前編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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