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年度末とは違う年度初めの南岸低気圧

饒村曜気象予報士
カツラの若葉(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

日曜とは違う南岸低気圧

 令和元年度(2019年度)最後の日曜日である3月29日は、本州の南海上を低気圧が通過したため、西日本では雨、東北南部から東日本では雪か雨の日曜日になりました(図1)。

図1 地上天気図(3月29日9時)
図1 地上天気図(3月29日9時)

 日曜日の南岸低気圧は、通過する前に北から強い寒気が南下しており、冷たい雨が降り、途中から雪に変わりました。

 東京都心でも1センチの積雪となりましたが、東京都心で3月下旬以降の春で1センチ以上の積雪というと、昭和63年(1988年)4月8日に9センチを観測して以来、32年ぶりです

 昭和63年(1988年)は、桜がほぼ満開(満開は4月11日)となっていたところでの積雪でしたが、令和2年(2020年)は暖冬の影響で桜の満開が3月22日でしたので、満開後の積雪でした。

 桜が満開後の積雪というと、昭和44年(1969年)4月17日の2センチの積雪以来、51年ぶりということになります。

 令和2年度(2020年度)最初の日である4月1日も、南岸低気圧が通過しますが、日曜日の南岸低気圧とは様相はかなり違います(図2)。

図2 予想天気図(左は4月1日9時の予想、右は2日9時の予想 )
図2 予想天気図(左は4月1日9時の予想、右は2日9時の予想 )

 日曜日の南岸低気圧の時のように、寒気が南下していませんので、南岸低気圧によって暖気が北上し、暖かい雨が降ります(図3)。

図3 雨と風の分布予報(4月1日21時)
図3 雨と風の分布予報(4月1日21時)

 気温が高くなると、南海上から北上してくる暖気に含まれる水蒸気の量が増えますので、大雨の心配がでてきます。

 気象庁では、5日先までに大雨警報や暴風警報などの警報を発表する可能性を「早期注意情報」として発表しています。

 この「早期注意情報」によると、4月1日の静岡県と神奈川県は、南岸低気圧のため大雨警報が発表となる可能性は「中」です(図4)。

図4 大雨に関する早期注意情報(4月1日朝~夜遅くの場合)
図4 大雨に関する早期注意情報(4月1日朝~夜遅くの場合)

 

寒気の南下

 年度末の南岸低気圧は、あまり発達することなく東進しましたが、年度初めの南岸低気圧は、日本の東海上で大きく発達します。

 前出した図2でもわかるように、4月1日9時に四国沖にあった低気圧の中心気圧は1004ヘクトパスカルですが、24時間後の2日9時には980ヘクトパスカルまで下がっています。

 つまり、24時間に24ヘクトパスカルも気圧が下がります。

 いわゆる、爆弾低気圧です。

 このため、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となって寒気が南下してきます。

 冬の寒気の目安の一つに、上空約1500メートルで氷点下6度という気温があります。

 冬であれば、地上で雪が降る温度です。

 この上空約1500メートルで、氷点下6度以下の寒気は、4月5日の日曜日には、関東北部から北陸地方まで南下してきます(図5)。

 図5 上空約1500メートルの気温分布予報(4月5日朝の予報)
図5 上空約1500メートルの気温分布予報(4月5日朝の予報)

 このため、北日本を中心に大気が不安定となり、落雷や突風に注意の日曜日になりそうです。

東京の4月の気温と天気

 東京の年度末、3月の気温は、平年より気温が高い期間と、気温が平年並みの期間が交互に現れていましたが、最後の3月29日に気温が大きく下がりました。

 しかし、年度初めの4月の気温予想は、最高気温、最低気温ともに、ほぼ平年並みが続く見込みです(図6)。

図6 東京の最高気温と最低気温(4月1日~7日は気象庁、4月8~16日はウェザーマップの予報)
図6 東京の最高気温と最低気温(4月1日~7日は気象庁、4月8~16日はウェザーマップの予報)

 ウェザーマップの16日先までの天気予報を見ると、傘マーク(雨)・黒雲マーク(雨の降る可能性がある曇り)と、お日様マーク(晴れ)・白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の組み合わせが、バランスよく並んでいます(図7)。

図7 東京の16日先までの天気予報
図7 東京の16日先までの天気予報

 新年度の土日は、お日様マーク・白雲マークとなる天気予報です。

 気温も低くなく、普段ならお出かけ日和ですが、早くもとの生活に戻れるよう、不要不急の用事以外では外出しないというのが、新型コロナウイルス対策です。

 自粛は永久に続くわけではありません

図1、図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4、図5、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図6の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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