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32年前にも東京で満開の桜に積もる雪

饒村曜気象予報士
桜に雪(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

南岸低気圧

 令和2年3月29日は、本州の南海上を東進した低気圧によって、西日本では雨、東北南部から東日本は雨か雪の日曜日になりました(図1)。

図1 地上天気図(3月29日9時)
図1 地上天気図(3月29日9時)

 図2は、3月29日9時の細かい天気分布(推計実況)ですが、東北南部から関東北部・甲信地方で雪、東京や横浜など関東南部でも雨か雪となっています。

図2 天気分布(3月29日9時の推計実況)
図2 天気分布(3月29日9時の推計実況)

 千葉県など、この時刻で雨の関東の南部も、その後雪に変わっています。

 地表付近に冷たい空気が流入してきたためですが、3月29日の関東地方の気温変化は普段とは違っていました。

 ほとんどの日は、朝方に最低気温を観測し、日中に最高気温を観測しますが、この日は逆になっています。

 東京でいえば、前日、28日の昼過ぎに最高気温24.6度を観測したあと、気温はどんどん降下し、日付けが変わった未明に観測した7.7度が29日の最高気温となりました(図3)。

図3 東京の3月29日の気温変化
図3 東京の3月29日の気温変化

 そして、29日の昼前に観測した0.7度が最低気温となっています。

 つまり、東京では28日の日中から29日の日中まで、1日で約24度も気温が低下していますので、体感的には厳しい寒さの日曜日となりました。

東京の遅い積雪

 東京では29日の昼過ぎに積雪1センチを観測しましたが、3月下旬になってからの積雪は珍しいことです。

 昭和63年(1988年)以来、32年ぶりの現象です。

 雪に関する統計が整備されている昭和36年(1961年)以降で、積雪が1センチ以上あった日は、3月下旬が8日、4月上旬が1日、4月中旬が1日しかありません。

 表は、東京で遅い積雪のランキングですが、令和2年(2020年)は、第3位に入りました(表)。

表 東京の遅い積雪(昭和36年(1961年)以降)
表 東京の遅い積雪(昭和36年(1961年)以降)

 

似ている32年前

 今から32年前、昭和63年(1988年)の冬から春にかけては、令和2年(2020年)と似たところがあります。

 令和2年(2020年)の冬は全国的に暖冬で、西日本では特に顕著でしたが、昭和63年(1988年)の冬も北日本を除き暖冬で、特に1月は記録的な高温でした。

 昭和63年(1988年)の冬は2月の気温が低かったことから桜の開花が遅れ、3月26日に積雪1センチを観測したときは桜が咲いていませんでした。

 しかし、4月8日に雪が積もった時は、桜が満開に近い状態でした(満開は4月11日)。

 令和2年(2020年)の桜の満開は3月22日と記録的に早かったのですが、満開後に気温が上がらなかったことから花盛りが続いていました。

 見頃の桜の花の上に雪が積もったというとでは同じでした。

 雪のあと、寒さこらえて夜桜見物

 季節外れの雪はやんだものの底冷えが続いた8日夜、東京・上野公園には約2000人が夜桜見物に繰り出したが、寒さに震えながら酒で体を暖めるのが精いっぱいで、歌や踊りの盛り上がりはいま一つだった。

 ほぼ満開だった約1300本の桜は、雪の重さで直径10から20センチの太い枝が数本折れるなど思わぬ被害を受けた。それでも夕方までには枝や花の上の雪もとけ、“花キン”を楽しむサラリーマンや学生のグループが続々。そのうち約200人ほどが桜の下に宴席を設け本格的に花見をしたが、体を寄せ合うようにしてさすがに寒そう。…。

出典:毎日新聞(昭和63年(1988年)4月9日朝刊)

 また、東京で一番遅く積雪があった昭和44年(1969年)も、桜の満開が4月10日ですので、満開の後に積雪がありました。

 満開後の積雪となると、令和2年(2020年)の桜と積雪は、51年ぶりということになります。

 昭和63年(1988年)の春は、寒暖の変化が激しく、降水量は平年並みからやや多雨のところが多いという特徴がありました。

 また、7月は北日本と東日本の太平洋側を中心に低温と日照不足、8月は太平洋側で多雨という特徴がありました。

 令和2年(2020年)がこの通りになるかどうかはわかりませんが、今のところ、例年とは違った年になっていますので、気象庁が発表する最新の長期予報に注意してください。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

表の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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