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今夜は「十三夜」、豆名月とも栗名月とも 日本では「十五夜」よりも月見に適した夜

饒村曜気象予報士
十三夜の月(写真:イメージマート)

高気圧が東に張り出すも広い等圧線間隔

 令和5年(2023年)10月26日は、大陸から高気圧が東に張り出し、ほぼ全国的に晴れたため、最高気温は全国的に平年並みか、平年より高くなりました。

 全国で一番気温が高かったのは、沖縄県石垣島の29.9度で、最高気温が30度以上の真夏日を観測した地点はありませんでしたが、全国の85地点(気温を観測している914地点の約9パーセント)で最高気温が25度以上の夏日となりました(図1)。

図1  真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(9月1日~10月26日)
図1  真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(9月1日~10月26日)

 記録的な暑さが続いていた今年ですが、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)の頃から真夏日が大きく減り、10月に入ると夏日も大きく減っています。

 そして、10月下旬になると、最低気温が0度未満という冬日を観測する地点が増え、夏日を上回る日も出てきましたが、10月26日に冬日を観測したのは5地点(約0.5パーセント)しかなく、再び夏日を下回りました。

 ただ、10月26日の高気圧の張り出しは弱く、日本列島の等圧線の間隔が非常に広くなっており、今後、日本海西部で低気圧が発生する見込みです(図2)。

図2 地上天気図(10月26日12時)と予想天気図(10月27日21時の予想)
図2 地上天気図(10月26日12時)と予想天気図(10月27日21時の予想)

 このため、10月27日は、西~東日本の日本海側や北日本ではくもりや雨となるでしょう。雷を伴った雨の降る所もある見込みです。 

 西~東日本の太平洋側は広い範囲で晴れますが、午後を中心に所々でにわか雨や雷雨がありそうです。

 また、南西諸島は雲が広がりやすく、所によりにわか雨があるでしょう。

 ということで、10月27日の「十三夜の月見」ができる可能性が高いのは、東北南部太平洋側から東日本の太平洋側、西日本の太平洋側の見込みです(図3)。

図3 10月27日夜(18時~21時)の天気分布
図3 10月27日夜(18時~21時)の天気分布

「十五夜」と「十三夜」

 中秋(旧暦8月15日)の「十五夜」にお月見をする風習は、中国の唐の時代に行われていた「観月の宴」が起源とされています。

 これが平安時代の頃に日本に伝わり、貴族が「十五夜」を観賞するようになったとされていますが、旧暦の8月15日は、太陽暦になおすと、9月下旬になります。

 日本では、台風が襲来して大荒れの年もあります。

 また、昔の日本人の豊かな感性として、満月になる前の少し欠けた月(十三夜の月)も美しいと考えることもあって、日本では、「十五夜」に次ぐものとして旧暦の9月13日の「十三夜」の月見を加えています。

 日本の「十五夜」は、作物の収穫が完全には終わっておらず、作物に感謝する「収穫祭」の意味も込めて、「十三夜に曇りなし」という言葉があるくらい天候が安定する「十三夜」のお月見をするようになったといわれています。

 「十五夜」では中国伝来ですが、「十三夜」は日本固有の行事です。そして、旧暦の10月10日の「十日夜」も加えて、日本の農作業と関連した3回の月見を考えています(表)。

表 日本の3回の月見
表 日本の3回の月見

 天気に恵まれて3回の月見ができる年は縁起が良い年であるとか、「十五夜」と「十三夜」のどちらかが見えない年は「片見月」といって縁起が悪いとかの話もあります。

少しずつ早くなる名月

 3回の月見を、旧暦の8月15日、9月15日、10月15日とすべて満月の日にしていないのは、気温と関係しているのではないかと思います。

 月齢が若いほど、月の出の時刻が早まってきますので、月が真上に来る時刻も早まってきます。

 「十五夜」の月が真上に来るのは真夜中、「十三夜」の月が真上に来るのは夜のはじめ頃、「十日夜」の月が真上にくるのは日没後すぐです。

 大雑把に言えば、最低気温に近い気温の月見から、最高気温に近い気温の月見に変わります。季節が進むにつれ下がってきた気温に対応してますので、月見は夜の冷え込み前に行う配慮もあったと思います。

 東京でいえば、「十五夜」の最高気温は25度くらい、最低気温は18度くらいですが、「十三夜」の頃の最高気温は20度くらい、最低気温は13度くらいです(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温の推移(10月27日〜11月2日は気象庁、11月3日〜11日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温の推移(10月27日〜11月2日は気象庁、11月3日〜11日はウェザーマップの予報)

 そして、「十日夜」の最高気温は15度くらい、最低気温が7度くらいです。

 次第に月齢の若い月を見ることで、「十五夜」の月見は、最低気温の18度より少し高い気温の月見、「十日夜」の月見は、最高気温の15度より少し低い気温の月見ということになります。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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