なぜバルサはCLのベスト4進出に近づいているのか?シャビの“退任宣言”と黄金の中盤の変更。
欧州の4強入りが、水平線にはある。
今季のチャンピオンズリーグ準々決勝で、バルセロナとパリ・サンジェルマンが激突した。パリSGのホームで迎えたファーストレグでは、バルセロナが3−2と勝利を収めている。
バルセロナが最後にチャンピオンズリーグでベスト4に進出したのは、2018−19シーズンだ。それ以来となる、欧州の舞台での上位進出に、近づいている。
■指揮官の退任宣言を経て
バルセロナは今季限りでシャビ・エルナンデス監督が退任する。指揮官の退任宣言後、13試合で10勝3分け。“退任ブースト”は間違いなく起こっている。
だが好調の理由は、それだけではない。
昨季のバルセロナは守備が良かった。リーガエスパニョーラでは、38試合20失点で、優勝を達成。GKマーク・アンドレ・テア・シュテーゲンを中心に、連動したプレス、即時奪回とチーム全体で守ることができていた。
今季は序盤戦でテア・シュテーゲンが負傷離脱を強いられ、苦しんだ。だが、ここにきて、テア・シュテーゲンが復帰し、チームに安定感がもたらされている。
またディフェンスラインでは、パウ・クバルシが台頭した。1月18日に16歳でトップデビューしたばかりのバルセロナのカンテラーノだが、瞬く間にステップアップ。レギュラーポジションを確保して、公式戦15試合に出場している。
加えて、サイドバックが、定まった。左サイドにジョアン・カンセロ、右サイドにジュール・クンデが据えられている。本職をセンターバックとするクンデに関しては、サイドバックでのプレーを嫌がっていた。だが先のパリSG戦ではキリアン・エムバペを見事にシャットアウトしており、バルセロナの守備力向上に貢献している。
守備の話はディフェンスラインに限らない。シャビ監督は、中盤においても梃入れを行なった。
リーガ第23節、アラベス戦で、シャビ監督はアンドレアス・クリステンセンをアンカーで起用した。ここで一定の手応えを感じた指揮官は、“錨”の部分にディフェンシブな選手を置くという決断する。
さらにセルジ・ロベルトやフェルミン・ロペスをインサイドハーフで重宝するようになった。
■黄金の中盤の変更
シーズン開幕当初、シャビ監督の狙いは、ペドリ・ゴンサレス、イルカイ・ギュンドアン、フレンキー・デ・ヨングを中盤で並べることだった。
それはシャビ、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツが攻撃を組み立て、リオネル・メッシが仕上げるという、“ペップ・チーム”の再来を思い起こさせた。
だがプランは崩れた。ペドリ、デ・ヨングが負傷で離脱を余儀なくされた背景はある。しかしながら、シャビ監督は、それ以上に全体のバランスを考え、ハードワーク可能な選手(セルジ/フェルミン)、守備能力が高い選手(クリステンセン)を入れるようにした。
ハードワーカーとスイーパーが中盤にいる。その恩恵はまた、ギュンドアンにもたらされた。
ギュンドアンは今夏、マンチェスター・シティからフリートランスファーでバルセロナに移籍した。シティ時代、22−23シーズン(51試合11得点7アシスト)、21−22シーズン(43試合10得点6アシスト)と多くのゴールに絡んでいる。
ギュンドアンが覚醒したのは20−21シーズンだ。そのシーズン、46試合に出場して17得点4アシストをマークしている。19−20シーズン(50試合5得点5アシスト)と比べると、変貌ぶりがよく分かる。ジョゼップ・グアルディオラ監督の下で、2列目からの飛び出しが強化され、フィニッシュワークの力をアップさせた。
そのギュンドアンが、より高い位置でプレーできるようになった。攻撃に専念するギュンドアンは、対戦相手の脅威になっている。
■シャビの続投は…
バルセロナで物事は順調に進んでいる。そうなると、シャビ監督の続投を、という声も挙がってくる。
シャビ監督は2025年夏までバルセロナと契約を結んでいる。契約上においては、続投するのに問題はない。
「いまは、楽しむべき時だ。そして、仕事を終えなければいけない。リーグ戦の次の試合、火曜日の試合(パリ・サンジェルマン戦)について考える必要がある。だが(自身の決断は)何も変わっていない」とはシャビ監督の弁だ。
選手たちのシャビ監督に対する信頼は厚い。ゆえに、指揮官のために、と一致団結した側面はある。
だがチャンピオンズリーグでベスト4、またビッグイヤー獲得となればーーシャビ監督の続投を是が非にでも、と思い始めるクレは少なくない気がしている。