100億円のペドリを擁するスペインに、久保建英がけん引する日本が勝利するシナリオ
優勝候補筆頭のメンバー
スペイン代表MFペドリは市場価値、8000万ユーロと言われる。日本円で約100億円。世界最高のサッカー選手の一人は18歳だ。
そんな逸材を擁するスペイン五輪代表を相手に戦うことは、誰が考えても簡単ではない。
ペドリも含めて、EURO2020でスペイン代表としてベスト4に勝ち進んだ主力メンバー、GKウナイ・シモン、DFエリク・ガルシア、パウ・トーレス、FWミケル・オジャルサバル、ダニ・オルモと6人も擁する。これだけでも、強力メンバーであることは歴然だ。
スペインでプレーする日本人となじみが深い選手も少なくない。
ラファ・ミルは、一昨シーズンから岡崎慎司とウエスカでチームメイト。一昨シーズンは岡崎と組んで昇格に貢献も、昨シーズンはエースの座ごと奪い取った。長身でパワーとスピードのあるストライカーで、準々決勝のコートジボワール戦ではハットトリックを記録し、アトレティコ・マドリード、セビージャ移籍も噂される。
マルク・ククレジャは左サイドを担当。ヘタフェでは、久保建英とチームメイトだった。FCバルセロナの下部組織で育っているだけに、その点でも久保と共通し、同じく左利きの技巧派だが、エイバル、ヘタフェで戦える選手になっている。
ブライアン・ヒルは生粋のドリブラー。アンダルシア出身で独特のリズムのドリブルを武器に、昨シーズンはエイバルで乾貴士の定位置を奪い取った。切り札的選手だ。
ほとんど全員がトップリーグでの試合を積み重ねているだけに、強敵と言える。
スペインは、グループリーグでエジプトにスコアレスドローで発進した。オーストラリアには辛くも勝利も、アルゼンチンには1-1。首位通過も、主力選手はEUROの疲労を引きずり、慣れない気候や長旅などでコンディションは低調だった。準々決勝では、コートジボワールにアディショナルタイムに追いついて、どうにか延長で勝利。本調子ではないが、コンディションは上がりつつある。
何より、一度も負けていないのは地力の証だ。
東京五輪男子サッカー準決勝、日本がスペインに勝つシナリオとは?
スペインに勝つシナリオ
まずは、”無敵艦隊”スペインをリスペクトし過ぎないことだ。
<最大限の警戒は必要だが、互角に渡り合える>
その心構えで、攻守一体の戦いを最後まで粘り強く続ける。その点、グループリーグの戦いを変える必要はない。日本の戦いは十分に通用する。
https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20210723-00249436
https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20210726-00249895
https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20210726-00249895
それは大会直前、スペイン戦でも証明されている。1-1で引き分けに終わった試合、日本は主力選手を下げる後半途中まで優勢だった。来日したばかりでコンディションは厳しかったはずだし、途中出場のペドリには手も足も出なかったが…。
吉田麻也、酒井宏樹を中心に構築するディフェンスラインは堅牢だし、遠藤航、田中碧の防衛線も堅固で、同時に攻撃も作り出せる。久保、堂安律はお互いが高め合う連係で、スペイン戦も二人のコンビで得点した。そして上田綺世は試合を決するだけの動きの質やボールをインパクトする技術を持つ。
拮抗する戦力だけに、ディテールが勝負を決めることになるのは間違いない。例えば、不用意なファウルで与えたセットプレーは失点を意味する。ミスが許されない試合になるはずだ。
スペインの要注意アタッカー
スペインで警戒すべきアタッカーは二人いる。
どちらも左利きのアタッカー、オジャルサバルとマルコ・アセンシオだ。
オジャルサバルはレアル・ソシエダで4シーズン連続二けた得点を記録。ゴールだけではなく、アシストも多く、チームのエースである。バスク人ならではの頑健でしなやかな肉体で、メンタルも強く(PKスペシャリスト)、偽9番(MFながらFWでプレー)をこなすなどサッカーインテリジェンスにも長ける。
オーバーエイジのアセンシオは肉体的な強度や速度に恵まれ、左足の一撃は怪物級。レアル・マドリード所属で、次世代のエースと目されてきた。久保とポジションやキャラクターが重なる部分もあるが、現時点では上回る。
何よりペドリを経由した攻撃は、次元が違う。周りを生かし、輝かせ、プレースピードを上げられる。どこからでもゴールを狙えるのが、スペインの強みだ。
日本は粘り強く戦うしかない。
例えば、欧州チャンピオンズリーグでも活躍するダニ・オルモも怖い選手だが、直前の試合で証明したように酒井宏樹が止められる。その局面の勝利を、全体につなげられるか。屈することなく戦い続けることで、必ずや活路は生まれる。
前半10分が一つの勝負
日本は前線がボールの出所を制限し、中盤が防衛線を張って、最終ラインが集中を切らさなかったら、そこまでやられる陣容ではない。冨安健洋が出場停止で、おそらく左サイドはどうしても狙われる。その点でアセンシオは危険な存在だが、守備網を作って守るしかない。
「いい守備がいい攻撃につながる」
日本は、そのプレーコンセプトを実践できる。各選手がいいポジションを取って、ラインを緊密に保って、お互いが補完し合う。その守りでリズムを生み出し、攻撃の潤滑さにつなげるのだ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20210801-00250993
現実的な策としては、立ち上がりの10分、あるいは15分で相手の頭をひしぐことだろう。スペインの選手はどれだけ試合に警戒しても、心の奥底で日本を侮る意識を捨てきれない。そこを乾坤一擲で叩く。前線からのプレッシングでボールを奪い、手数を懸けて攻めに出る。波状攻撃を繰り返し、1点をもぎ取る。一気にアクセルを踏む戦いで、コンビネーションプレーを駆使してリードを奪う――。
というのは、消耗戦は分が悪いからだ。
スペインは延長戦の末にコートジボワールを5-2と破ったが、交代出場のFWミルがハットトリックを記録した。他にもククレジャ、ブライアン・ヒルが守備を蹂躙。選手層は分厚く、勝負を決める一手を打てる。
日本は電光石火で先制し、できるだけボールを持ち、試合を制御するシナリオを描くことだろう。相手の勢いを最小限にし、焦らさせ、攻撃もそうだが、守備の補強要員をうまく使う。場合によっては瀬古歩夢などを投入にし、3バックにする手もある。
ただ、付け焼刃は通じない。直前のスペイン戦も、主力を下げると同時に流れを持っていかれてしまった。3バックも崩壊している。
やはり、”勝ち逃げ”が至上の策だ。
一つ有力な交代の策は、上田、林大地の2トップをスクランブル的に組ませることだろう。トーレス、E・ガルシアは高いポテンシャルのセンターバックだが、盤石ではない。そこに久保、堂安が絡んで攻められたら…。
「タケは素晴らしい選手」
「タケ(久保建英)は素晴らしい選手だよ。とてもいい大会になっているね」
そう語っているのは、アセンシオである。
「日本はとてもダイナミックなプレーをするチームで、楽しげに結果をつかみ取っている。彼らとの試合はかなりやり合う感じになるんじゃないかな。タケは日本にとって重要な選手で、勝利するために全力で挑んでくるだろうけど、彼ができるだけ目立たないようにするつもりだよ」
久保はキーマンになるだろう。
マドリードがパスを所有する久保は、一昨シーズンはマジョルカで主力として活躍し、昨シーズンはビジャレアル、ヘタフェで低迷も、最後は残留に導くゴールを決めた。今回のスペインのメンバーと比較し、劣った実績ではない。彼自身、オジャルサバルやアセンシオを凌駕しなければ、マドリードでプレーする夢をつかめないと承知のはずだ。
一つ言えるのは、久保は久保だけで輝いているわけではないという点だろう。堂安との連係はお互いの力を引き出し合い、田中碧、上田とのパス交換でもコンビネーションの良さが見られる。その手ごたえは、スペインを撃ち抜くのに十分。久保を起点にしたスピードとテクニックを倍加させる連係攻撃は、名手ウナイ・シモンも苦しめるはずだ。
繰り返すが、日本の勝ち目はある。先制できたら、たとえ失点したとしても、もう一点は奪い返せる。ゴールは久保、上田、もしくは田中に期待か。
「難しい試合になると思いますが、自分の仕事をしてチームを勝たせられるように最善を尽くします」
そう語るGK谷晃生の仕事は増えそうだ。