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もうすぐ新学期 「PTAをなんとかしたい人」に「条件付き立候補」がおすすめの理由

大塚玲子ライター
「私かな」「僕ですね」と思った方。こんなやり方もあります(写真:アフロ)

 これまで、PTAの改革・適正化 (*1)を進めるための、さまざまな方法を紹介してきました。

 自らPTA会長や本部役員さんになって、適正化を進める方法。PTA総会で意見したり、校長先生やPTA会長にお手紙を出したりして、一般会員として適正化を求める方法退会や非加入を選択することで、入退会自由を実践する方法。役員決めのときに「できない理由」を言わないことで辛い人を守る方法。などなど。

 じつはもう一つ、これまであまり紹介してこなかった方法があります。

 それは、委員長や本部役員などを決めるときに、「〇〇に変えてよければ、〇〇やります!」と、自ら手を挙げるやり方です。

 筆者自身、過去に何度か、この「条件付き立候補」を実行したことがあります。

●広報委員会で委員長を決めたとき。「紙での広報紙発行をやめてデジタルに切り替えてもよかったら、委員長をやらせてもらいます」と立候補

●子どもが学校に入ったとき。「今後、入会届を整備して、保護者や教職員に加入意思を確認してもらえるなら何でもやります」と提出書類に書き添えて提出

●本部役員を決めるとき。「各クラスや学年から何人、というノルマ制をやめ、やりたい人がやる形(手挙げ方式)に変えてよかったら、会長でも役員でも何でもやります」と書類に書いて提出

 ただしお気づきの通り、このやり方にはリスクもあります。「じゃあ、やってください」と言われるか、「あなたには頼みません」と言われるかは、そのときの周りの人たち次第です。半ば運任せなので、「絶対やりたい人」にも「絶対やりたくない人」にも、アピールしづらいところがあります。

*「条件付き立候補」に向くのは誰か?

 では、どんな人にこの方法がよいのか? というと、「その役をやる・やらないはどっちでもいいから、とにかくPTAをなんとかしたい(適正化を進めたい)」という方です。少数派ではあるでしょうが、最近このタイプの方も、意外と増えているような気がします。「私のことか」「俺だね!」と思った方、そう、あなたにお勧めです。

 条件付き立候補には、たとえばこんなメリットがあります。

1●その後のトラブルを回避しやすい

 「やってもいい」と思うなら、はじめから「やります」と立候補して役につき、適正化に着手してもいいのに、なぜそうしないかというと、それはそれでリスクがあるからです。周囲の人たちが適正化に大反対の場合は、役についても適正化できなかったり、後で苦労したりすることも、少なくありません。

 その点、最初から「変えたい」という考えをオープンにしたうえで立候補を承認されていれば、その後は比較的スムーズに話を進められる可能性が高くなります。

 もし承認されなかった場合は、後で起きたかもしれないトラブルや、それによるダメージを回避でき、「変えたいなら自分で役員をやれ」というよくある陰口も言われません(言われても気にならない)。

2●心理的ダメージの軽減

 特にPTA会長や本部役員を決める際は、「立候補する人は危険人物」とみられ、裏で落とされてしまうことも多いのですが、これは立候補者からすると、なかなか辛い体験です(筆者も経験があります)。

 その点、最初から「こういうふうに変えたい」と掲げて立候補していれば、断られた場合も「変えることに支持を得られなかったから」と考えられ、心の傷を多少は小さくすることができます。

 同時に、落とす側の人たちも「その条件は困るから落とした」と言えるので、理由なしに落とすのよりは気が楽かもしれず。

 こういったことを考え合わせると、この「条件付き立候補」、そう悪くないやり方ではないかと思うのです。

*ただし「どうぞ」と言われたら、必ずやる

 こんなやり方を実践しているのは筆者くらいかと思っていましたが、実はときどきいるようです。たとえば、こんな声がありました。

 「本当は断ろうと思って『私に○○役を振ったら、加入意思確認やっちゃいますよ』と言ったら、『どうぞどうぞ』と言われましたので、〇〇役になり、意思確認をやるようにしました(入会届は整備できませんでした)」(こすぎすみっちONさん/神奈川県)

 「8年前、校長面談で『任意加入へ舵を切ることに賛同してくださるなら会長をやってもいいです』と言ったら、首を縦にふってくださらなかったので、中から変えることをあきらめて退会1号となりました。たぶん立候補しても不受理になっていた気がします」(ガーラさん/大阪府)

 「過去3年間それをやってます。最初の年は『あるべき姿でやるべきことやるなら、何でもやります』と書いて出しましたが『残念ながら立候補多数のため……』という断りのお返事。去年も『やってくれる人がいないならやります、その代わり適正化に取り組ませていただきます』と書いて提出しましたが、反応なしでした」(タロウさん*3/茨城県)

 なお、この3人はいずれもPTA会長や本部役員、部長などの経験者で、「もし立候補が受け入れられた場合は、本当にやるつもり」でした。

 ですから念のためですが、「本当に『やれ』と言われたら困る」という方は、決してこのやり方を真似しないでください。

 ちなみに、筆者の「条件付き立候補」がその後どうなったかというと――。

●「紙での広報紙発行をやめてデジタルに切り替えてもよかったら、委員長をやらせてもらいます」 → 直後、デジタル化絶対反対の方が「私がやります」と委員長に立候補して決定。筆者は一般の委員として一年間活動

●「今後、入会届を整備して、保護者や教職員に加入意思を確認してもらえるなら何でもやります」 → なぜか「なんでもやります」だけが採用され、ある委員会の配属に。その後、校長先生や役員さんに経緯や考えを伝え、加入意思確認をしてもらえるように。ただし、委員は3年間継続

●「各クラス(学年)から何人、というノルマ制をやめ、やりたい人がやる形(手挙げ方式)に変えてよかったら、会長でも役員でも何でもやります」 → 反応がないまま、ほかの方たちが会長・役員さんに決定

 こんな感じで、大した成果はありませんでしたが(1勝2敗)、何もしないよりはよかったかなと思っています。

 人によっても、状況によっても、適したやり方は異なります。役を引き受けるもよし、引き受けないのもよし、退会するもよし。「このやり方は自分に合っていそうだ」と思った方は、選択肢のひとつにしてもらえたらと思います。

  • *1 「適正化」という言葉は、これまでPTAの多くがベースとしてきた「強制・義務」をやめ、加入も活動も会員の意思を尊重したやり方にすることを指しています。本来当たり前のことでも、慣習が壁となり実現が難しい側面があるので「改革」と呼ぶこともあります
  • *2 タロウさんのインタビューは、拙著『さよなら、理不尽PTA!』に掲載しています
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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