「それってパクリじゃないですか?」弁理士視点の感想と視聴者向け法律解説(8)
それパク第8回目のネタは前回にひき続き、パテントトロールでした。簡単な法的解説と感想を書いていきます。未見の方にはネタバレになりますのでご注意下さい。
知財をドラマ化するなら最大の「大ネタ」と思われるパテントトロールなので、前回と2回にわたって(ひょっとすると次回も)扱われることになりました。パテントロール役を誰が演じるかがポイントと思っていましたが、鶴見辰吾さんの憎らしい悪役演技が素晴らしかったです。
前回に出てきた今宮食品という会社はパテントトロールと呼ばれてはいましたが、(怪しげではあるものの)一応実業を行っていました。したがって、別の特許権侵害訴訟で反訴することで戦うことが可能だったわけですが、今回登場した総合発明企画という企業は実業を行っておらず、特許権行使のみを生業とする真の意味のパテントトロールなのでこの戦略が通用しません。今回は鶴見辰吾の過去の不法行為を暴くことで何とか解決できたわけですが、現実にはそんな都合の良い話はなく、不本意ながら和解金を支払って解決しているケースも多いと思います(和解の条件として守秘義務を課すケースがほとんどであることから実態はあまり明らかになっていません)。
ところで、弁理士資格がない人が報酬を得て出願業務代理等の弁理士の専権業務を行うと弁理士法違反(いわゆる「非弁行為」)により刑事罰対象になります(弁護士資格がない人が報酬を得て他人の示談交渉の代理等を行ったりすると弁護士法違反で刑事罰対象になるのと同じです)。過去にも、弁理士資格なしで特許出願業務を行ったことで逮捕されてしまった事例があります。
追記:正確に言うと、ドラマ中では鶴見辰吾さん(の役の人)の非弁行為自体が問われたのではなく、悪徳会社の裏方として代理人を継続的に行っていたこと(その会社の運営に関係していたこと)が公になってもいいんですかということでプレッシャーをかけていました。
知財関係のネタとしては、もうひとつ、特許の無効理由(新規性欠如)発見のための先行文献探しというものがありました。15年前の学会誌の原本を社員一丸となって探すという話でしたが、2008年頃の学会誌であればネット上にデータがないというのはちょっと想定し難いですね(まあ、ネットで検索して見つかりましただとドラマにならないのでしょうがないですが)。ちなみに、もう少し前の2000年頃より前の話であれば、ネットに掲載されない紙の情報もかなりありましたので、原本を一生懸命探すと言ったケースは普通でした。私もだいぶ前になりますが外国の雑誌のコラム記事を先行文献に使用してどーしたこーした(詳細は守秘義務)という経験があります。