ロシア軍のTu-22M3爆撃機をウクライナ軍が撃墜
2024年4月19日、ウクライナ空軍司令部はロシア軍のTu-22M3爆撃機を撃墜したと発表しました。ロシア-ウクライナ戦争で大型爆撃機の空中戦闘損失は初めての出来事です。
2008年の南オセチア紛争でもロシア軍のTu-22M3がジョージア軍の地対空ミサイルで撃墜されたことがありましたが、あの時は長距離スタンドオフ兵器を使っていなかった油断がありました。しかし今回のTu-22M3はウクライナ攻撃でKh-22超音速巡航ミサイルを最前線から300km離れた場所から発射して、帰投しようとした直後に墜落してます。
Tu-22M3はエンジンが爆発して炎上、水平尾翼が損傷し、機体はフラットスピン(水平きりもみ)に陥って墜落していきました。ロシア国防省は機械的トラブルでの事故だと説明していますが、しかし映像の様子は撃墜された場合の特徴とよく合致しています。そのためウクライナ軍に撃墜されたか、あるいはロシア軍の味方撃ちの誤射かと疑われましたが、早くもウクライナ側から撃墜戦果が公表された形です。
旧式のS-200地対空ミサイルで300km超長距離射撃か
Tu-22M3の墜落場所はロシア領スタヴロポリ地方のボゴモロフ付近だと推定されていますが、ここは最前線から300km離れています。一方でウクライナ軍の地対空ミサイルで最も遠くまで届くのはA-50早期警戒機の撃墜でも使用した旧式の大型防空システム「S-200」がありますが、公表されている最大射程は300kmなので理屈の上では射程は届きます。
- ロシア軍のA-50メインステイ早期警戒機を再び撃墜、ウクライナ軍のS-200防空システムで撃墜-ウ紙(2024年2月24日)
- ロシア軍のA-50メインステイ早期警戒機を撃墜という激震、幾つかの攻撃方法の説(2024年1月17日)
しかし旧式のS-200は移動可能なシステムですが、大掛かりな陣地を必要とするので本来は後方での半固定式での運用が前提で、発射・撤収・移動は迅速には行えず、最前線ぎりぎりに布陣するのは大きな危険を伴います。ウクライナ軍は敢えてS-200の前進配備を行ってTu-22M3を超長距離射撃したのか、それともS-200の本当の射程は公表数値よりももっと長く、前線からやや後方に布陣していたのかもしれません。
地対空ミサイルで300km先のTu-22M3爆撃機に超長距離射撃を成功させていたとしたら大変に驚くべきことで、2月23日のA-50早期警戒機の撃墜時の200kmをさらに上回っています。この戦い方はこの戦争の当事国のみならず、世界各国の軍隊の長距離地対空ミサイルの在り方に影響を及ぼす可能性があります。
2024年4月19日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部
- シャヘド136/131自爆無人機:14飛来14撃墜
- Kh-101/Kh-555巡航ミサイル:2飛来2撃墜
- イスカンデルK巡航ミサイル:2飛来0撃墜
- Kh-59/Kh-69空対地ミサイル:12飛来11撃墜
- Kh-22超音速巡航ミサイル:6飛来2撃墜
- Tu-22M3爆撃機:1撃墜
4月19日の迎撃戦闘はミサイル22目標とドローン14目標の合計36目標中29撃墜、阻止率80%。なお空軍発表ベースでは2022年に戦争が始まって以来初めてKh-22超音速巡航ミサイルの撃墜が報告されています。
※ただし参謀本部が2022年5月31日にKh-22巡航ミサイルの撃墜に成功と報告しているにもかかわらず、なぜか空軍とは戦果報告が共有されていない。