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ロシア軍のA-50メインステイ早期警戒機を再び撃墜、ウクライナ軍のS-200防空システムで撃墜-ウ紙

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍司令部の発表よりA-50メインステイ撃墜

 2月23日、ロシア-ウクライナ戦争が開戦から2年が経過する2月24日を前に、ウクライナ軍が衝撃的な戦果を再び報告しています。ロシア軍のA-50メインステイ早期警戒機を撃墜。1月14日の撃墜に続いて2機目です。信じ難い大戦果です、空軍で最も価値が高い部類の機材である早期警戒機は、本来ならばこんな短期間に何機も撃墜できるような目標ではありません。

 ウクライナ空軍司令ミコラ・オレシチュク中将がA-50撃墜戦果を報告、夜間に墜落していく炎の塊の動画を報告しています。Микола ОЛЕЩУК - Telegram

 さらに墜落機が地上で炎上する様子も幾つか報告されています。目撃報告が多く、推定されている墜落地点はロシア領クラスノダール地方カネフスコイ地区トルドヴァヤ・アルメニア村(Трудовая Армения)の付近です。

※航空機が囮熱源(フレア)を連続放出するも、対空ミサイルに被弾して墜落する様子。目視では確認できないがフレアと同時に電波欺瞞紙(チャフ)も放出している可能性。対空ミサイルは長距離射撃のためロケットモーターは燃焼終了済みで噴射炎は見えず、着弾の瞬間の閃光が見える。

※ロシア領クラスノダール地方カネフスコイ地区トルドヴァヤ・アルメニア村。観光で有名なアゾフ海沿岸の港湾都市エイスクの南東70kmの位置。

ウクライナ国防省情報総局(ГУР)の発表したA-50の航路-速度ゼロ。墜落地点
ウクライナ国防省情報総局(ГУР)の発表したA-50の航路-速度ゼロ。墜落地点

Мінус А-50У ― ГУР та Повітряні Сили збили черговий літак рф | ГУР

DeepStateMAPよりトルドヴァヤ・アルメニア村から最前線まで約200km
DeepStateMAPよりトルドヴァヤ・アルメニア村から最前線まで約200km

前線から200km離れている墜落地点

 そして非常に驚くべきことにA-50墜落地点のトルドヴァヤ・アルメニア村は、前線から200kmも離れています。これはパトリオット防空システムのPAC-2地対空ミサイルの公称射程160kmを大きく超えています。地対空ミサイルなら最前線ぎりぎりに配備は危険すぎるのでやや後方に置く必要があり、射程200kmよりもっと長い射程が必要になります。

S-200説
 S-200防空システムは射程300kmもありますがソ連時代の古い兵器で、大型爆撃機を目標とした迎撃ミサイルは鈍重であり機動性が低く、軽快な小型戦闘機が相手だと命中率が悪く期待できなかったため、ウクライナ軍では2013年に現役を引退しています。

 ただし未解体で保管中だったS-200用の迎撃ミサイルを弾道ミサイルに改造して地対地攻撃用としてロシアーウクライナ戦争に投入中です。もしS-200のレーダーや指揮装置などのシステムの機材をまだ残しているか、あるいは他国(ポーランドなど)から秘密裏に供与されていれば、S-200を防空システムとして復帰させることが可能です。

 前述のようにS-200防空システムは対空兵器としては時代遅れで、軽快な戦闘機や小さな巡航ミサイル・自爆ドローンを相手にした場合はあまり役に立ちません。ですが鈍重な大型機であるA-50メインステイ早期警戒機が相手なら、命中が期待できます。射程300kmもあるのでアゾフ海の上空の大半を狙うことが可能です。

 もしウクライナ軍にS-200防空システムがこっそり現役復帰しておりロシア軍が気付いていなかったなら、A-50早期警戒機が不意打ちを受けてしまったという可能性は考えられます。しかし証拠は何一つ無い仮定の話になります。

出典:ロシア軍のA-50メインステイ早期警戒機を撃墜という激震、幾つかの攻撃方法の説(2024年1月17日)

 前回の1月14日のA-50撃墜の際に可能性の一つとして「2013年にウクライナ軍から現役引退していた筈のS-200防空システムが何時の間にか現役復帰していた」という説を挙げていましたが、ただしこれは能力的に可能であっても根拠がまだ何一つありません。

追記:ウクラインスカ・プラウダ紙がS-200による撃墜と報道

「ロシアのA-50、S-200によって撃墜される - GURの情報筋」

出典:Російський А-50 збили завдяки С-200 – джерело в ГУР | Українська правда

※GUR(ГУР):ウクライナ国防省情報総局の略称。
※キリル文字С-200をラテン転写するとS-200。

追記:墜落現場でA-50メインステイ早期警戒機の残骸を確認

左写真:ウクライナ空軍司令の追加報告 右写真:参考用A-50(ロシア国防省より)
左写真:ウクライナ空軍司令の追加報告 右写真:参考用A-50(ロシア国防省より)

※左写真は墜落現場から発見されたA-50メインステイ早期警戒機の尾翼の部品、右写真は参考用(赤枠内が該当部位)

出典:ウクライナ空軍司令ミコラ・オレシチュク中将の追加報告。Микола ОЛЕЩУК - Telegram

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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