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今こそアメフト界が一致するとき ~スーパーボウル優勝コーチから日本アメフト界への提言(3)~

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
NFLコーチからキリスト教会の牧師へと転身したロッキー瀬藤氏(本人提供)

アメフトは危険なスポーツ?

 テレビのワイドショー番組で問題となったプレーが繰り返し放映されたこともあり、世の中にはアメリカン・フットボールを危険で、汚いプレーを容認するスポーツだと誤解してしまった視聴者も少なくない。

 「フットボールはタフでフィジカルなスポーツだが、人生と同じようにフットボールにもルールがあり、ルールを破るプレーは許されない。ルールを無視してしまえば、秩序が失われて、ゲームが成立しない。フットボールの練習や試合でケガをする選手もいるけど、テニスやジョギングでもケガをする選手はいる。フットボールはコンタクトスポーツなので、テニスやジョギングに比べると危険というイメージがあるかもしれないが、ケガのリスクを低下させるために、どんなスポーツよりも積極的にルールの見直しが頻繁に行われている。アメリカでは選手をケガから守るためのカルチャーが根付いている」

試合後に敵味方が一緒になり、手を繋いで祈りを捧げるNFLの選手たち。アメフトは相手をリスペクトしながらプレーするスポーツだ(三尾圭撮影)
試合後に敵味方が一緒になり、手を繋いで祈りを捧げるNFLの選手たち。アメフトは相手をリスペクトしながらプレーするスポーツだ(三尾圭撮影)

窮地の今こそアメフト界が一致するとき

 今回の騒動で信頼が地に落ちた日本のアメリカン・フットボール界は、協会、チーム、コーチ、選手、関係者が一つになって信頼を回復していかなくてはならない。

 瀬藤氏は「文化を変えていく必要がある」と指摘する。

 アメリカではアメフト界のトップに君臨するNFLのロジャー・グッデル・コミッショナーが絶対的な力を持っており、グッデル・コミッショナーはアメリカ・スポーツ界で最も影響力を持った人物と言われている。グッデル・コミッショナーの強力なリーダーシップの下、NFLは数々の改革を繰り返し、進化を続けている。

 「協会のトップがリーダーシップを発揮して、アメフト界を正しい方向に導いていくべきだ。フットボール界全体が1つのチームとして一致団結して、チームのメンバー全員が1つの目標に向かって力を合わせていくべきだ。Xリーグ、大学生、高校生の垣根を超えて、日本アメフト界が1つになるんだ」

 アメフト界の足並みが揃ったら、今度はチーム内で足並みを揃える。

 「チームのトップに立つ人間が、なぜアメフトに携わっているのかを明確にする。ライスボウルを制覇するという目標もいいが、それよりも選手たちを一人前の男に育て上げる方が大きな意味を持つ。リーダーを育成して、あらゆる場面で的確な判断を下せる人間に育て上げることがアメフト・コーチとして最大の喜びであり、やり甲斐だ。勝利だけに囚われてしまっては、アメフトから得られる大切な要素を見失ってしまう。アメフトではチーム全体が一致しないと成功を掴むことはできない。チームが一致するためには、トップがゴールを明確にして、チームに関わる全員が同じ気持ちを持たなければならない」

強力なリーダーシップでNFLに繁栄をもたらすロジャー・グッデル・コミッショナー(三尾圭撮影)
強力なリーダーシップでNFLに繁栄をもたらすロジャー・グッデル・コミッショナー(三尾圭撮影)

スーパーボウルに負けた直後に感謝の祈りを捧げたコーチ

 「スーパーボウルに勝った直後には、スーパーボウル優勝よりも大切なものがあると教わったし、スーパーボウルに負けた後にも、泣いている家族と一緒に神様へ感謝の祈りを捧げた。スーパーボウルに勝っても、負けても、神は私たちのことを変わらぬ愛で愛してくれる。コーチとしても、試合の勝敗にかかわらず、選手を愛する気持ちは変わらない」

 クリスチャンの瀬藤氏が絶対的な基準とする聖書には「神は愛です」(1ヨハネ4章16節)とあり、「神を愛する者は、兄弟をも愛すべきです」(1ヨハネ4章21節)と神を愛し、隣人を愛するようにと書かれている。

 日本アメフト界で名将と呼ばれた京都大学の水野彌一元監督や日本大学の篠竹幹夫元監督は、スパルタ指導で、選手に対して非常に厳しい指導をするコーチだと言われているが、それでも多くの学生から慕われ、他チームのコーチから尊敬を受けてきたのは、瀬藤氏と同じように選手たちに愛を持って接してきたからだろう。

 

 日本のアメフト界、そして学生スポーツ界に今、最も必要とされているものは「愛」。

 コーチが選手を愛し、選手がコーチを愛し、競い合うチーム同士の根底に愛がある。そんな環境を作ることができれば、多くの問題は解決できるはずだ。

スーパーボウル優勝チームに贈られるビンス・ロンバルディ・トロフィーを手にするロッキー瀬藤氏(本人提供)
スーパーボウル優勝チームに贈られるビンス・ロンバルディ・トロフィーを手にするロッキー瀬藤氏(本人提供)

関連記事:アメフトで「勝利よりも大切なもの」とは ~スーパーボウル優勝コーチから日本アメフト界への提言(1)~

関連記事:大学アメフトコーチの仕事と素質 ~スーパーボウル優勝コーチから日本アメフト界への提言(2)~

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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