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移り変わりやすい秋の空 初冬前の過ごしやすい晴れ期間を大切に

饒村曜気象予報士
秋空(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

西からゆっくりと移動性高気圧

 北日本から北陸、西日本の日本海側では、北日本の東に位置する低気圧の影響で、西高東低の気圧配置となって雲が広がりやすく、雨が降る所がありますが、東シナ海の大きな高気圧は西日本に張り出してきました(図1)。

図1 予想天気図(11月4日9時の予想)
図1 予想天気図(11月4日9時の予想)

 このため、東北地方から西日本の太平洋側にかけてと南西諸島は概ね晴れる見込みとなっています。

 また、北日本の上空に南下していた寒気も東海上に抜け、気温は全国的に平年並みか平年より高くなっています。

 今年、令和3年(2021年)の秋は、10月上旬までは、最高気温が25度以上という夏日が全国の6割以上(気温を観測している920地点のうち552地点以上)という日が時折ありました。

 長い夏が続いていた日本列島でしたが、10月初旬には寒気が北日本まで南下しはじめ、中旬以降は西日本まで寒気が南下しています。

 このため、10月中旬以降は、最低気温が0度未満という冬日を観測する地点が増え、周期的に夏日を観測する地点数を上回るようになってきました(図2)。

図2 全国の夏日と冬日の観測地点数
図2 全国の夏日と冬日の観測地点数

 東京でも、10月2日には夏日どころか、最高気温が30.1度と、最高気温が30度以上の真夏日となっています。

 しかし、10月22日の最高気温は15.3度、しかも、最高気温が観測されたのは未明で、日中は10度位までしか気温が上がりませんでした(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(11月4日~10日は気象庁、11月11日~19日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(11月4日~10日は気象庁、11月11日~19日はウェザーマップの予報)

 夏から急に冬に来た感じでしたが、10月中旬以降は最高気温は20度前後、最低気温は10~15度という気温が11月に入っても続いています。

 このため、いつのまにか平年並みか平年より高い気温の日が多くなっています。

晩夏から秋ではなく、晩夏から初冬をへて秋になったともいえるでしょう。

移りやすい天気

 各地の10日間予報をみると、週末には、西日本から傘マークがつきはじめ、週明けはほぼ全国的に傘マークとなっています(図4)。

図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 これは、週末から週明けにかけては、低気圧が発達しながら東シナ海から日本海へ進むためで、気温が20度前後で晴れるという、過ごしやすい天気は長続きしないようです。

 昔から「男心と秋(春)の空」とか、「女心と秋(春)の空」と言われているように、春と秋の天気は移り変わりやすいものです。

 ただ、春の空は、移り変わってゆくうちに、だんだん熱くなってゆきますが、秋の空は、移り変わってゆくうちだんだん冷たくなってゆくという差があります。

 週末から週明けの雨が降る前は、20度を超えていた東日本の太平洋側から西日本では、雨が降った後は20度を超えなくなります。

 また、冬の代表的な天気分布のように、日本海側は曇りや雨、太平洋側は晴れる日が多くなります。

 もうすぐ冬本番です。

 冬がくる前の過ごしやすい晴れの期間、長くは続きませんので大事にしたいものです。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供の資料を基に筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供の資料を基に筆者作成。

図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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