2型糖尿病には魚油サプリ?脳卒中や心筋梗塞が減る可能性:2万人観察で明らかに【最新情報】
日本では男性の5人に1人、女性では10人に1人で「糖尿病が強く疑われる」ことが分かっています [厚生労働省:令和元年 国民健康・栄養調査、P20] 。男性は50代以降、女性は60代以降で患者数が著増するのですが、血糖値がいきなり上がるはずもないので、若いころから健康な血糖値を維持するのが大切です。
さて「糖尿病」、それも圧倒的に患者さんの割合が多い「2型糖尿病」はなぜ治療する必要があるのでしょう?
それは治療しないと全身のいろいろな臓器に不具合が出てくるからです。「神経症」や「腎臓病」「目の病気(網膜症)」の頭文字をとった「しめじ」などという言葉をご存知の方も多いと思います。
これらはすべて、糖を多く含み過ぎた血液にさらされた細い血管がボロボロになった結果、もたらされる疾患です(「最小血管症」と呼ばれています)。
でも「しめじ」と同じ、あるいはもっと注意が必要なのは、脳卒中や心筋梗塞などの、処置を一つ間違うと死んでしまいかねない重篤な血管系疾患です。
グラフをご覧ください。
九州の久山町という場所の住民およそ2500人を8年間観察した結果です。
糖尿病の人は糖尿病でない人に比べ、脳卒中のリスクが2〜4倍、心筋梗塞などの冠動脈疾患*リスクも同程度、上昇していました。
糖尿病治療は、このような重篤疾患を予防するのが大きな目的の一つです。
魚油サプリで脳卒中や心筋梗塞のリスクが減る?
そこで今回の本題です。
上記のような脳卒中・冠動脈疾患リスクの上昇を抑えるには、なんと言ってもキチンと糖尿病治療を受けるのが一番大事です。でもそれに加えて魚油サプリを飲むと、このようなリスクがさらに減る可能性が明らかになりました。
報告したのは華中科技大学(中国)のシュファン・ティエン氏たち。掲載されたのは「臨床内分泌・代謝雑誌」という学術誌。7月12日に公開されました [文末文献1] 。
英国在住2万人を13年観察
ティエン氏たちが解析したのは、英国在住の2型糖尿病患者約2万人です。誰もまだ、脳卒中や冠動脈疾患、足の血管の病気(まとめてここでは「血管系疾患」と呼びます)や「しめじ」を経験していません。
この人たちをおよそ13年間観察し、観察開始時に聞き取った「魚油サプリ」摂取の有無別に「血管系疾患」を起こす危険性を比較しました。
「魚油サプリ摂取」群で血管系疾患リスクが相対的に10%低下
その結果、27%の人たちが「血管系疾患」を発症しましたが、魚油サプリを「摂取していた」人たちでは「摂取していなかった」人たちに比べ、そのリスクは相対的に10%低くなっていました(0.9倍)。
この値は、魚油サプリ以外の要因が「血管系疾患」に与えたであろう影響を、統計学的に除去したのちの数字です。
さらに上述「しめじ」も、魚油サプリを「摂取していた人」では「摂取していなかった人」に比べ、相対的にリスクは11%、低くなっていたのです(0.89倍)。
もちろんこの結果だけでは、「魚油サプリが血管系疾患や"しめじ"を減らした」のか「魚油サプリを飲む人たちに共通する隠れたなんらかの因子がそれら疾患を減らした」のか、どちらなのかは分かりません。
しかしティエン氏は「魚油サプリが血管系疾患や"しめじ"を減らした」と考えているようです。
まとめ
いかがでしたか?
2型糖尿病の人は魚油サプリを摂ると、血管系疾患や「しめじ」のリスクが低くなったという論文のご紹介でした。
しかし先にも記したとおり、2型糖尿病はまず、ドクターに診ていただくのが最優先です。その際に「魚油サプリ」についても相談してみてはいかがでしょうか。ドクターたちも勝手にサプリを飲まれるよりは相談されたほうが、絶対に助かるはずです。
そもそも日本に暮らす私たちなら、わざわざサプリを買わなくとも、美味しい魚が簡単に手に入ります。魚油を補うならそちらの方がいいかもしれませんね。今年は秋刀魚が安くなると良いのですが。
サプリについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!
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今回ご紹介した論文
本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。