認知症が心配?「ホエイ蛋白」は認知機能を改善。臨床研究で確認【最新情報】
高齢者だけの問題ではない認知症
加齢とともに低下する認知機能。
これまでは「認知症」といえば高齢者の病気でしたが、最近では65歳未満で発症する「若年性認知症」にも注目が集まっています [若年性認知症支援ガイドブック改訂版] 。
若年認知症の発症年齢平均は51歳、女性よりも男性に多いとされます。
さらに問題は高齢者の認知症と異なり典型的な初期症状がないため、受診が遅れる、また受診しても他の病気として治療されるなどの問題があるといいます [上記ガイドブック]。
若年性認知症の特徴を挙げておきましょう。
早めに気づくのが大切ですが、何よりも予防が一番。
そこで今回は医学的に認知機能低下作用が確認された食品をご紹介します。
それはホエイ蛋白(乳清)。
名前の通り、牛乳に含まれているタンパク質の一種です。
中国・武漢大学のフェンピン・リ博士たちが、「米国臨床栄養学雑誌」という学術誌で11月20日(2024年)に報告しました [文末文献1] 。
簡単にご紹介します。
医学的に信頼性の高い臨床試験
同博士たちは、認知機能が少し低下した(軽度認知機能障害:MCI)107人をくじ引きで2グループに分け、片方には1日15グラムのホエイ蛋白パウダーを、もう1群には見かけと味はそっくりですが何の作用もないプラセボ(偽薬)を同量、1年間、飲んでもらいました。
プラセボを飲む群をわざわざ設定するのは、ホエイ蛋白パウダーの「真」の作用を評価するためです。
「何かいいものを飲んだ」と思うとそれだけで、良い効果が現れるのが人間です(これを「プラセボ効果」と呼びます)。なのでホエイ蛋白パウダーで観察された作用からプラセボ効果を差し引いたものが、ホエイ蛋白パウダーの「真」の作用になるわけです。
もちろん、飲む側も飲ませる側も、誰が本当のホエイ蛋白パウダーを飲み、誰がプラセボを飲んでいるか知らされていません(ダブル・ブラインドと言います)。そのため先入観の入らない評価が可能となり、医学研究としての信頼性は高くなります。
2つの指標で認知機能改善を確認
さてこれらを飲み始めて1年後、モントリオール認知評価(MoCA :モカ)と呼ばれるテストで検査した認知機能は、ホエイ蛋白パウダーを飲んだグループの方が、プラセボ群に比べ改善されていました。
同様に、数字符号置換検査(DDST)という検査で調べた認知機能も、ホエイ蛋白パウダー群の方が良くなっていました。
つまり、1年間のホエイ蛋白パウダーで認知機能が改善した、と考えられるのです。
なぜ、ホエイ蛋白で認知機能が改善するのでしょう?
リ博士たちは3つの可能性を挙げています。
神経の「発生促進」「傷害からの保護」「伝達改善」が作用?
1つ目は、ホエイ蛋白に豊富に含まれる乳脂肪球皮膜(MFGM)による「神経発生(新生)促進作用」です。これらの作用は動物実験から示唆されていました。
2つ目はタウリン。これもホエイ蛋白は豊富に含有しています。そしてタウリンも「神経傷害に対する保護作用」が動物実験で明らかになっています。
最後はビタミンB 。こちらは「神経伝達改善作用」が、動物実験から明らかになっています。
つまりこのような3通りの作用を介してホエイ蛋白は認知機能を改善するのではないか、これがリ博士たちの仮説です。
最後に
いかがでしたか?ホエイ蛋白が認知機能を改善したという臨床試験のご紹介でした。
またリ博士たちはアルツハイマー病の予防にも、ホエイ蛋白は有効だと考えているようです。
牛乳を積極的に摂るもよし、サプリで補給するもよし。
転ばぬ先の杖、で認知機能低下を抑制できれば儲けものです。
認知機能については以下のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひご覧ください。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。ではまた!
- 「認知症予防」に大切なのは「聴力」と「コレステロール」。3万〜115万人データで明らかに
- 高血圧の薬はきちんと飲んだほうが認知症にならない。8万人の観察から明らかに
- 高価な認知症治療薬に頼る前に知っておきたい簡単な予防法。医学論文で読む「エビデンス」
今回ご紹介した論文
ホエイ蛋白プロテイン15g/日で、軽度認知機能低下例の認知機能が改善
本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。