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YouTube、コロナ含む反ワクチン動画“全面禁止” SNS各社は対策強化も「モグラたたき」

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米グーグル傘下の米ユーチューブ(YouTube)は、新型コロナウイルスのワクチンだけでなく、他のワクチンについても誤った情報を発信する動画を削除すると明らかにした

ロバート・ケネディ・ジュニア氏関連を削除

これまで同社は新型コロナワクチンに関する誤情報動画を13万本以上削除していた。今後は禁止対象を拡大し、各国の保健当局や世界保健機関(WHO)などに承認されたワクチン全般に関する誤情報を削除する。

はしかやB型肝炎など一部の定期予防接種に限定せず、全てのワクチンを対象とする。「自閉症やがん、不妊症を引き起こし、感染や発症を抑制できない」などと主張する動画などを削除するという。

ユーチューブは声明で、「我々は、新型コロナワクチンに関する誤った主張が、ワクチン全般の誤情報に波及する状況を絶えず見てきた。コロナから始まった取り組みを他のワクチンにも広げていくことが、これまでになく重要だ」と述べた。

YouTubeには1分間に500時間分のコンテンツがアップロードされる(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)
YouTubeには1分間に500時間分のコンテンツがアップロードされる(インフォグラフィックス出典:ドイツStatista)

米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ユーチューブは、故ロバート・F・ケネディ元米司法長官の息子であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏といった著名な反ワクチン活動家に関連する複数のアカウントを停止した。

その一方で、政府のワクチン政策や治験、歴史的な成功・失敗事例、副反応など個人的な体験に関する動画は、ガイドラインに違反しない限り今後も投稿可能とした。

ツイッターやフェイスブックも対策強化

他のSNS(交流サイト)大手も、新型コロナの偽情報拡散防止に向けた取り組みを強化している。ツイッターは20年5月、誤情報投稿をユーザーに警告する仕組みを導入した。誤解を招く恐れのあるツイートや、真偽が問われている情報を含むツイートに対し、事実を確認するよう促す警告ラベルを付け、信頼のおける外部サイトへのリンクを表示する措置を取った。

20年12月には、これをコロナワクチンにも拡大。科学的事実に基づかない陰謀論などに警告ラベルを付けた。ウォール・ストリート・ジャーナルの別の記事によると、21年3月にはさらに踏み込み、違反5回でアカウントを永久停止にする措置も取った。

フェイスブックも20年1月に、コロナ関連の虚偽情報を削除する方針を表明。誤った治療法や予防法を伝えたり、確かな医療情報に関して混乱を生じさせたりするなど、身体に害を及ぼしかねないコンテンツを削除し、情報共有しているユーザーにも警告を発している。

フェイスブックはその後「新型コロナウイルス情報センター」を設置。ここで各国の保健当局やWHOなどの国際機関からの最新情報を提供している。20年10月には、反ワクチンを主張する広告を禁じる方針を明らかにした。

バイデン氏「彼らは人々を殺している」

写真:ロイター/アフロ

ただ、それでも誤情報の投稿は後を絶たず、対策はモグラたたきのようだと指摘されている。科学的事実に基づく情報の投稿に対し、反ワクチンのコメントが多数付けられることも多いと指摘されている。

また、英国の非営利団体デジタルヘイト対策センター(CCDH)は21年3月、SNS上にあるワクチン誤情報の65%をわずか12人が発信しているとする調査結果を公表した。

こうした状況や米国でのワクチン普及ペースの伸び悩みに苛立ちを覚えたのか、バイデン米大統領は21年7月、記者団からSNSについてのコメントを求められ、「彼らは人々を殺している」と異例の表現で批判した。

同氏は後日、「誤情報を拡散しているユーザーを非難したものだ」と釈明したものの、SNSは対策を強化する必要があるとの考えをあらためて示した。

(このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2021年10月1日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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