サーマンがパッキャオの対戦相手候補に浮上か 〜3 things we learned in BK
1月26日 ブルックリン バークレイズセンター
WBA世界ウェルター級タイトル戦
スーパー王者
キース・サーマン(アメリカ/30歳/29勝全勝(22KO))
判定2-0(113-113, 115-111, 117-109)
挑戦者
ホセシト・ロペス(アメリカ/34歳/36勝(19KO)8敗)
”ワンタイム”が22ヶ月ぶりにリング復帰
第7ラウンド途中、ブルックリンに集まった9623人のファンが騒然となった。伏兵ロペスの左フックを浴び、ダメージを受けたサーマンはロープ際で後退。その後も多くのクリーンヒットを許し、あわやストップ負けのピンチを味わった。
この後、サーマンがしっかり立て直して無難な判定勝利に繋げたことを底力の証明と見るか。それとも22ヶ月ぶりのリングで今後への不安を露呈したと捉えるか。
「彼は真っ向勝負を挑んできた。今夜、ベストのキース・サーマンはお見せできなかったけど、ワールドクラスのパフォーマンスは披露できたと思う」
試合後にサーマンはそう語ったが、2回に鮮烈な左フックのカウンターでダウンを奪った以外、そのパンチには良い頃のキレがなかったようにも感じられた。
判定自体は王者勝利で問題なく、ドローとつけたジャッジがいたのは意外。それでも現在のサーマンの力を測りかねるファイトだったのは事実である。ゾンビのように迫り来るロペスを突き放せなかった姿を、“ワールドクラス”と呼んで良いかどうかは微妙なところかもしれない。
モチベーションの薄れが心配された“ワンタイム”は完全復活するのか。答えは次の試合を待たなければならないのだろう。
サーマンの今後は?
ロペス戦が決まった際の記者会見で、サーマンは2019年は「Get back year(復帰する年)になる」と述べて顰蹙を買った。
今年はチューンナップファイトに専念し、エロール・スペンス・ジュニア、テレンス・クロフォード、ショーン・ポーター(すべてアメリカ)といったウェルター級のエリートたちとは2020年まで戦わないと宣言したも同然。いかに故障明けとはいえ、その姿勢がファンの落胆を誘ったのは当然だ。
しかし、ロペスに勝った後、サーマンは相手次第で即座のビッグファイトに臨む意向を述べた。希望する相手とは、1週間前に戦ったばかりのWBA正規王者である。
「マニー・パッキャオ(フィリピン)との今年中の対戦には恐らく応じるよ。パッキャオの望む場所で戦う準備はできている」
エイドリアン・ブローナー(アメリカ)に完勝したばかりとはいえ、40歳になったフィリピンの英雄は恐れるに足らずという判断か。依然として大金が期待できるパッキャオ戦を、他のトップ選手に取られる前にやってしまおうという算段か。
同じPBC傘下とあって、当人と陣営同士がその気ならばまとめるのが難しいファイトではない。セルフプロモーションの得意なサーマンが盛り上げれば、米国内でも話題のマッチアップになる。最終的には鍵を握るアル・ヘイモンがどう考えるか次第。それでもWBAの絡みを考慮するまでもなく、実現の可能性は十分にも思える。
噂に上っているパッキャオとフロイド・メイウェザー(アメリカ)戦が結局は成立しなかった場合、今年度後半、パッキャオ対サーマンが一気にクローズアップされても驚くべきではなさそうだ。
ニャンバヤルがNY初登場
この日のアンダーカードでは、元WBA世界フェザー級暫定王者クラウディオ・マレロ(ドミニカ共和国)とのWBCエリミネーターに臨んだモンゴルの星トゥグッソト(愛称タグ)・ニャンバヤルが注目を集めた。
ロンドン五輪、世界選手権の銀メダリストはニューヨーク初登場。ここまで小気味良い倒し方を続けていただけに、今回も鮮烈なファイトが期待されたのだ。
ニャンバヤルはマレロの奔放な動きと独特なリズムにやや苦しみながらも、3-0(114-113, 115-112, 116-111)の判定勝ち。支配的な勝利とはいえなかったが、陣営は「アウトボクサーをアウトボックスしてみせた」とご満悦だった。
もっとも、経験豊富な相手を振り切った勝利に価値があるのは事実としても、ニューヨークのファン、メディアを感嘆させるだけのインパクトがあったとは言い難い。“キング・タグ”はWBC世界フェザー級王者ゲイリー・ラッセル・ジュニア(アメリカ)への挑戦権を手にしたが、スピードスターとの相性はベストとも思えない。近い将来に挑戦となれば、ニャンバヤルには不利の予想が出されるだろう。
まだプロ11戦(全勝9KO)。その素質は魅力だが、勝負に出る前にあと1戦は強豪とのテストマッチを挟んでも良いのではないか。
モンゴル人史上2人目の世界王者を目指す26歳は、バークレイズセンターにも多くの母国ファンを動員するだけのスター性を持っている。エキゾチックなタレントは様々な意味で楽しみな存在だけに、着実な成長を期待したいところだ。