東京都の重症者病床使用率100%? 緊急事態宣言解除先送りの都は訂正せず【追記あり】
厚生労働省が毎週発表している東京都の重症者病床使用率が、著しく不正確である可能性が高いことがわかった。都が、病床確保数について厚労省に不正確な報告をしているためだ。この結果、都内の重症者病床使用率が「100%」前後という大手メディアの不正確な報道を招いているが、都は訂正しようともしない。厚労省は資料に都のデータが不正確である旨の注記を行い、都に是正を求めている。
背景には、重症者の定義・基準が厚労省と東京都で異なることによる混乱もあるが、緊急事態宣言の解除を先送りしたい小池百合子知事にとって、病床使用率が非常に高いと報道されることは好都合な側面もある。【文末に追記あり】
厚労省は毎週、各都道府県から報告された入院患者数などを取りまとめ、病床使用率を発表している。
それによると、2月16日時点での東京都の重症者病床使用率は86.2%(同マイナス13.4%)だった(厚労省2月19日公表資料)。
一方、東京都モニタリング会議が公表した資料では、2月17日時点で重症者病床使用率は26.3%だった(重症者87人、確保病床数330床、2月18日公表資料)。
過去の厚労省と東京都の発表データを調べると、2〜3倍の開きがあることがわかった。(詳しい検証記事はこちら)
厚労省の新型コロナウイルス対策本部(医療体制班)の担当者は、取材に対し「(重症者用)病床確保数は厚労省の基準ではなく、東京都の基準によるものだと(都から)説明を受けたため、現在厚労省の基準で報告するように求めているところだ」と明らかにした。要するに、厚労省が発表している東京都の重症者病床使用率は、分子は厚労省基準の重症者数だが、分母は厚労省基準の重症者病床確保数になっていない、ということを意味する。厚労省は1月中旬頃に問題を認識したとみられる。
都福祉保健局感染症対策部の担当者に約1週間前から質問をしているが、「都議会で忙しい」という理由で、回答は得られていない。
「重症者」の基準が厚労省と東京都で異なることは、かなり以前から指摘されていた問題だ(2020年8月25日付NHK記事参照)。この基準の食い違いは今も解決されていない。
厚労省は、東京都の重症者病床使用率について、1月19日分の資料から「重症者数は本調査のために国基準で集計されたものであり、確保病床数と単純に比較できない」との注釈を毎回入れている。
だが、NHK特設サイト、日経の特設サイトは、不正確な厚労省発表値をもとにした重症者病床使用率を掲載しており、現在は「86%」で「ステージ4」としている。2月19日放送の報道ステーション(テレビ朝日)も「100%」と報道していた(冒頭写真)。
東京都は、昨年春の緊急事態宣言中にも、病床確保数を正確に発表せず、極めて逼迫しているかのような発表を繰り返して、延長の流れを作ったことがある。
- 「(5月11日)東京は病床がひっ迫 使用率8割超え」NHKが誤報 実際は5割未満(InFact 2020/5/22)
- 東京都、病床確保数も不正確と認める 緊急事態宣言延長前2000→3300床に修正(Yahoo!ニュース個人 2020/6/4)
今回も、都は大幅に状況が改善しているデータを発表しているにもかかわらず、厚労省への不正確な報告を是正せず、結果として大手メディアの誤った報道を招く結果となっている。
小池百合子知事は、緊急事態宣言の解除をできるだけ先延ばしたい意向だ。そのため、医療提供体制が逼迫した状況は変わらず、解除を検討する段階にはないと繰り返し強調している(時事通信参照)。(もっと詳しい検証結果はこちら)
【追記】
東京都は2月26日、国基準の重症病床確保数を従来の「500床」から「1000床」に修正報告。それにより2月24日時点の国基準の重症病床使用率は「33%」と厚労省が発表した。(詳しくはこちら)
読売新聞も3月2日付朝刊で、この問題を報じた。(都の重症病床、確保数増え使用率減少…解除議論に影響も)