ドラえもんの誕生日に考えたい。彼が使用を悩んだ「チリつもらせ機」で1億円を集めたら、何が起こる!?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
9月3日は、ドラえもんの誕生日だ。
これを記念して、前日の2日には特別番組「ドラえもん誕生日!できたらいいなスペシャル」が放送された。
視聴から募集した「みんなのできたらいいな」も、番組内で発表され、ヒジョ~に盛り上がっていた。
『ドラえもん』は「できたらいいな」のカタマリである。
22世紀から来たドラえもんは、さまざまな「ひみつ道具」で、のび太やパパやしずかたち21世紀の人々の「できたらいいな」を実現させていく。
そういうシリーズのなかで、ドラえもんが自分のためにひみつ道具を使うことが、ときどきある。
たとえば、コミックスの『ドラえもん プラス』第6巻に登場する「チリつもらせ機」がその一つ。
ドラえもんは、毎日ドラ焼きを食べるのを楽しみにしているが、ある日買い忘れてしまった。
のび太に「一日くらいがまんすればいい」と言われても、「がまんできなぁい!!」と大騒ぎ。
そして「しかたがない。あれを使おう!」と取り出したのが、ひみつ道具「チリつもらせ機」だ。
まるでドラえもんとのび太が入れ替わったようなやり取りだが、さすがにドラえもんは自制心があって、「やめとこう。これははずかしいことだ」と思い直す。
と思ったら、のび太が少し外出していた隙に、なんとドラえもんはでっかいドラ焼きを食べていた!
のび太に指摘されて「あーっ、むちゅうで使ってしまった!!」と我に返るドラえもん。
ドラえもんによれば、巨大ドラ焼き誕生のヒミツはこうだ。
日本中には何万、何十万というドラ焼きがある。
そのドラ焼きの1つ1つから、目に見えないほどの小さなカケラを集めたら、誰にも気づかれないで、大きなドラ焼きになるはず……。
それを実現するのが「チリつもらせ機」で、なるほど、言われてみれば便利そうなひみつ道具である。
だが、ドラえもんは「でも やっぱりいけないことだ。こんなの二度と使わない」と深く反省する。
巨大ドラ焼きも半分くらいしか食べていなかった(かわいい)。
これ、実際のところはどうなのだろう?
作中のドラ焼きはかなり大きかったが、小さなカケラをどれほど集めれば、あれほどのモノになるのだろうか。
作中の絵で測ると、巨大ドラ焼きは直径53cmほどもある。
宅配ピザのLサイズが直径33cmくらいだから、それよりはるかに大きい。
筆者がスーパーでドラ焼きを買ってきて測定したら、その直径は9.5cm、厚さは3.5cm、重さは85gだった。
これと比べると、直径は5.6倍。厚さも5.6倍なら、重さは5.6の3乗=176倍で、15kg! 本当にデカイ!
これほどの大きさとなると、たとえ日本に100万個のドラ焼きがあったとしても、1個から取ってくるカケラの重さは0.015gだ。
もしドラ焼きと同じ形だったとしたら、それは直径5.3mm。
結構大きくて、「あ。減っている」と、ハッキリ目に見えると思う。
作ったドラ焼きが大きすぎるんだよ、ドラえもん!
◆野比家はどうなるのか?
ドラえもんは「チリつもらせ機」を封印しようとしたが、こんな便利なモノを見て、のび太が黙っているはずはない。
彼はさっそく「日本の1億2千万人からこっそり1円ずつ集めれば、1億2千万円の大金持ちに!」という、あまりにもイージーな発想をする。
ただちに「それはドロボウじゃないか!」とドラえもんに叱られて、別のプランを考え、結局それが大失敗……というオチにつながるのだが、ここで考えてみたいのは、「1億2千万円」計画だ。
のび太がそれを実行していたら、いったいどんなコトになったのか?
「誰にも気づかれずに集める」というのが大事なところなので、お金はきっと1円玉で集めるのだろう。
確かに1円玉が100枚あれば、そのうち1枚がなくなっても、多くの人は気づかないかもしれない。
だが、1円玉の重さは1個1gなのだ。
100枚=100g、99枚=99g。
両者の差は認識しづらいが、それが1億2千万個となると話は変わってくる。
1個1gのモノが1億2千万個もあったら、それは1億2千万g=12万kg=120t!
新幹線1両の重量が44tだから、なんとその3両分だ。
それだけのモノが2階ののび太の部屋に集まって、野比家は大丈夫なのだろうか。
パパの血と汗の結晶のマイホームは、たちまち圧壊するのでは……!?
『ドラえもん』には「できたらいいな」という人間の夢が詰まっている。
同時に、それを使いこなす難しさや、欲に目がくらんだときの落とし穴も、しっかりと描かれている。
ドラえもんの誕生日に、その奥深さをしみじみ実感してしまう。