韓国で新型コロナウィルスの感染が再拡大している。

11月23日に一日の感染者数(全国)がはじめて4000人を突破。”コロナ時代”以降、最大の数値となっている。

その理由について、国内メディアは「11月1日にソーシャルディスタンスの規制基準を緩和した」点を挙げている。韓国では2020年9月より政府疾病管理本部を庁に昇格させ、日本よりも細かいルール設定を強く発信。行政スタッフによる街の”パトロール”、過料など日本よりも厳格な処置をとってきたが、これを緩和以降、感染者数が増えることとなった。筆者の取材に応じてくれた釜山在住の30代男性はいう。

「食事会で集まれる人数、時間の制限が解除になりました。わぁ~12時まで飲める! となっていたのですが…。いったん解除されて緩んだ雰囲気をもう一度戻すのか。ちょっと心配ですけどね」

韓国のコロナ対策批判で日本を引き合いに

そんななか、日本の視点からも興味深い記事が掲載された。11月25日の中央日報によるものだ。

「医大教授 ”日本の感染者急減、K防疫の致命的間違いを示すもの”」(中央日報)

該当記事のキャプチャ
該当記事のキャプチャ

記事の主旨は、慶北大医学部予防医学科のイ・ドクヒ教授が16日にブログに掲載した内容を紹介するものだった。

「ワクチンの接種率だけでは感染拡大は防げない。私は無症状の自然感染者がある程度必要と当初から説明してきた」

この論旨のなかで、日本側の優れている点は「自然感染を無理してまで止めようとしなかったおかげ」とした。また韓国の問題点をこう指摘している。

「無症状であっても絶対にかかってはならない感染病だという仮定に致命的な間違いがあったことを示している」「韓国は矛盾に溢れた防疫を2年ほど経験している」

さらには「K-防疫が日本の防疫よりも素晴らしいと信じたいのだ」とまでも(あくまでイ教授の見解です)。

”日本関連記事”異例のトップに

この教授の見解の是非はさておき、興味深いのはこの原稿へのリアクションだった。

この記事は11月25日に国内大手ポータルサイト「Daum」のデイリーアクセス数で9位、そしてコメント数では1位となった。その数、8,622。2位が6000台だったから大きな差をつけた。「関心のある層にはかなり強い関心のある記事」だったと言える。

それはタイトルに「日本」が入る記事としても突出した反応だった。

なにせ、ここ数ヶ月は日本の話題がこのランキングのベスト10に入ることはほとんどない。18日には、日米韓外務次官級協議後に予定していた共同記者会見が、日韓の意見対立(領土問題)を受けて取りやめになった。この話題などは「反日」で盛り上がりそうなものだが、じつのところデイリーで19位にとどまった。

ではなぜ、この記事が?

そこには、韓国での日本のとある「存在感」がある。

「コロナ対策で日本に絶対に勝つ」という闘志満々の話ではない。日本がこういった存在として扱われているのだ。

「国内の保革対立のなかの判断基準」

「日本よりマシなのか」

これを巡って、相手陣営を攻撃する。コロナ対策なら、そこで効果が出ているのか。今回の記事は保守系の大手新聞「中央日報」が見せた、相手陣営への批判的視点だった。

「対日相対評価」という考え方

こういった現象を「対日相対評価」と評する風刺漫画家がいる。

韓国で人気の「クプシニスト」氏は、2021年6月2日に朝鮮日報系のニュースサイト「時事IN」でコロナ状況下の政治状況をこう記した。

「対日相対評価スタート」

「コロナ対処の“韓日戦”がこの国では保革陣営の“代理戦”の様相を呈している」

「保守(野党)陣営では、現政権の対処が日本よりダメな部分で論戦を仕掛け」

「革新(与党)陣営では日本よりマシな部分を盾にしようとする」

「クプシニストの本格時事マンガ 対日相対評価」

つまりは「韓国対日本」を語るのではなく「韓国内で自分たちの

政治的支持勢力を決定するための基準の日本」がそこにはある。

この漫画では日本に対する”クール”な見方も示されている。

「もともとは日本という存在は本当に見上げても届かない、はるか天上界へのチャレンジのようなものではなかったのか。『克日』はスポーツでのみ可能だった」

「じつのところ日本はすべての面で韓国の“3倍”深く、広い“大物”だ。経済も学問も文化も…」

あれもこれも”反日”ではない

実際に今回の「医大教授 ”日本の感染者急減、K防疫の致命的間違いを示すもの”」の記事のうち、8600以上の読者コメント欄でリアクションが最も多かったものは、日本について言及されたものではなかった。

「あとづけならなんとでも言えるだろう。あんた自身はこれまで何をしていたんだ? こんな人が専門家なのか?」 いいね1958 ブーイング105 コメント25

2020年6月の韓国国会選挙でもそういった傾向があった。韓国の選挙が「韓日戦」と比喩された。日本を巡って、革新系与党は「保守系は日本統治下から日本と結託していた層の子孫」として相手陣営を批判。保守系野党はこれに応戦した。

確かに反日や日本への対抗意識といった要素もあるが、ストレートに日本にベクトルが向いているわけでもない。「克日」とも違う。日本ではこういった細かいニュアンスが伝わることもなく、すべてひっくるめて「また反日かよ」と報じる傾向があるとも感じる。じつのところ韓国ではあまり反日が話題になっていないにもかかわらず。「対日相対評価」。韓国のひとつのトレンドをすっきり説明するキーワードだ。

(了)

筆者の最近の記事:きょう韓国で「運命の大学受験」 いくつ解けます? ”第2外国語・日本語の問題”