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「やる気なら誰にも負けません!」と言う新入社員のウソを暴くための図

横山信弘経営コラムニスト
(著者作成)

■本当に「やる気」がある新入社員なのか?

「やる気なら誰にも負けません!」

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。「絶対達成」をウリにしているから、支援先の新人営業からこのように言われることは、とても多い。ただし、

「おお! いいですね~。期待してますよ!」

と言っていたのは15年前まで。今では、心の中で「ハイハイ」と言いながら、

「それじゃあ、そのやる気を見せてくださいね」

と言って、私の考えを解説する。これから紹介する図を使って。

そもそも「やる気」とは何なのか? 本当に「やる気」がある人はどんな特徴があるのか? 今回は、19年以上コンサルタントをしてきた体験をもとに解説していきたい。

期待できる若者と、実はそうでない若者を見分けたい経営者、マネジャーの皆さん、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

■どれだけの期待値を超える必要があるか?

「やる気だけは誰にも負けません!」

と言うのは、もちろん悪くない。どちらかというと、私もそう言ってしまうタイプだった。だからか、とても気持ちがわかる。

とはいえ、

言っていることではなく、やっていることがその人の正体

という表現もあるように、コンサルタントになってからは「言ってること」を真に受けるわけにはいかない。過去、真に受けたせいで、さんざん痛い目に遭ったからだ。

「やる気」や「熱意」「情熱」というのは、行動や結果でしか表現できない。役者ではないのだから、「セリフ」「目つき」「顔つき」「表情」「ボディランゲージ」などでは表現できないものだからだ。

では、具体的にはどうすればいいか?

たとえば先輩や上司が期待する行動が【10】だとしたら、【20】や【30】ぐらいの行動をしてみよう。そうすれば、

「今年の新人はやる気があるな」

という感想を持たれるに違いない。【10】を期待されているなら【12】や【15】ぐらいでもいいじゃないか。そのように受け止める人もいるかもしれない。

しかし、実際にやってみればわかる。たかだか20~50%ぐらい期待値を超えたからといって、周りに気付かれないものだ。

「期待値より20%以上の行動をしましたよ!」

と自分でアピールしない限り。先輩も上司も、自分の仕事でいっぱいいっぱいだ。明確な結果を出したのならともかく、単なる行動量なら、期待値の2倍ぐらいやってはじめて気付かれるものと心得よう。

最初に気付くのは、身近な存在の同僚や先輩だ。もしもその後、長い物に巻かれていけば目立たなくなっていく。ところが、周囲に影響されることなく相当な行動量や、驚くほどのスピードで仕事を引き受けたり、片づけたりしていると、そのうち上長にも気付かれるようになっていく。

最初のうちは、

「今日、頑張ってるな。アイツ」

と思われる程度だ。しかし、1ヵ月に2~3回も目にしたりすると、部下や同僚に確認したくなるものだ。

「今年の新人のアイツ、どうなの?」

すると、こう返されることだろう。

「あの新人、マジでやる気すごいですよ」

と。他の部下や後輩も、

「近年、あんなに熱意があるヤツ、見たことがないです」

と言われる。そうすると、上長も「マジか」と感想を持つのだ。

■噂が広まると「ウィンザー効果」が働く

上長の目に留まれば、ここから加速度的に噂が広まっていくだろう。実際に、何度も新人の行動や姿勢を目にすれば、

「アイツは本物だ」

と上長は確信する。そうすれば、課長会議や、部長との会議でその話題が出る(出す)はずだ。

「A課長がそこまで、ベタほめする新人って、過去いなかったんじゃないか」

「俺も、聞いたことがある。今年はスゴイ新人が入ったって」

第三者の情報のほうが信頼される心理効果のことを「ウィンザー効果」と呼ぶ。だから、

「やる気なら誰にも負けません」

と本人が主張するのではなく、

「今年の新人で、ものすごいヤツがいる」

と同僚や上長が口にするほうが信憑性が高いのだ。ましてや他部署の直接会ったこともないような課長や部長が、

「おい、スゴイ新人がいるらしいじゃないか。噂になってるぞ!」

と言えば、もう止まらなくなる。いったん燃え上がった火は瞬く間に業火となって、組織内を燃やしていくことだろう。そうすれば、行きつくとこまで行く。

「社長、耳に入ってますか? 今年、やる気モンスターみたいな新人が入ったそうです」

「やる気モンスター?」

「将来の幹部候補になるかもしれませんよ」

このように、「やる気なら誰にも負けない」のが本当であれば、入社半年ぐらいで社長の耳にまで届くことだろう(規模が100名程度なら)。

■まとめ

このような話を、私はその新入社員にする。すると、だいたい両極端な反応が観られるものだ。

「やる気なら誰にも負けません、なんて言うんじゃなかった」

と言いたげな表情をするか、それとも、

「やってやろうじゃないの!」

とハートに火がつくか。どちらかだ。このコンサルタントを見返してやりたい、見てろよ、と言いたげな表情をする新人は、本物だ。

外部のコンサルタントが言うことにイチイチ怖気づいているようでは、先が思いやられる。上司ならともかく、コンサルタントに言い返すぐらいの度胸は必要だ。繰り返すが、

「やる気なら誰にも負けません」

と言うのは、もちろんけっこうだ。しかし「ノリ」だけで口にするのではなく、せっかく口にしたのなら有言実行してもらいたい。仕事で結果を出すのは簡単ではないが、「やる気」を見せるぐらいは、誰だってできるのだから。

必要なのは、気合いと根性だけである。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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