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何度言っても言うことを聞かない部下が、自然と動きはじめるように変わった「場の空気」とは?

横山信弘経営コラムニスト
職場の空気が変わった!(写真:イメージマート)

■なぜ何度言っても動かない部下が、転職したとたんに動きはじめるのか?

「どうしてやらないんだ?」

「どうしてって……」

「この前の会議でコミットしたことだろう」

「AさんもBさんもやってないですよ」

「だから君もやらなくていいのか」

「そんなこと言われましても。私だっていろいろ忙しいんです」

なぜ部下は動かないのか? 

チームリーダーなら、誰でもこのような悩みをもっていることだろう。リーダーがキチンと仕事の目的を伝えても、本人が自分で納得して行動宣言しても、結局は

「いろいろあって、やれませんでした」

「できないことだってありますよ」

などと言われてしまう。おそらくリーダーは

「結果が出ないのは仕方がないけれど、やると決めたことはやれよ」

と言いたくなることだろう。その気持ち、とてもよくわかる。

では、このような物言いをする部下は、はたして他の会社に行っても同じような振る舞いをするのだろうか。

答えは「NO」だ。

他の会社に転職したとたん性格を変えてしまう部下はいくらでもいる。「真面目にコツコツやるようになりました」と笑顔で話す人も少なくない。

それは、なぜなのか?

原因は「場の空気」である。

■部下が動かないのは「場の空気」が9割

部下が動かないのは、「場の空気」が一番の原因だ。リーダーのコミュニケーションスキルや人間性も原因の一つだ。しかし「場の空気」のほうが強力だ。

だから他の会社へ転職したあと、部下は急変するのだ。転職先に「やるべきことをキチンとやる」という文化が根付いていたら、その文化に強い影響を受けるからだ。

そこで今回はベストセラー『空気で人を動かす』にも記した「場の空気」4種類を紹介する。

「紐の結び目」にたとえた以下4種類だ。

①「緩んだ空気」

②「ほどけた空気」

③「縛られた空気」

④「締まった空気」

現在のチームはどの空気が蔓延しているのか。この4種類を参考に診断し、対策をとってもらいたい。

(4種類の空気の中で、どれが最も理想的なのか。その条件については後述する)

それでは、まず①「緩んだ空気」からカンタンに解説していこう。

■①「緩んだ空気」

どんなチームでも、チームが結成されたときは「締まった空気」が漂っている。それなりの緊張感が満ちているものだ。しかし、時間とともに緩んでくるのは避けられない。

靴の紐も、そうだ。歩いたり走ったりしていると次第に緩んでくる。

最初に決めたルールもだんだんと守らなくなり、「なあなあな状態」になってしまうこともあるだろう。こんな空気を「緩んだ空気」と呼ぶ。

そのまま放置しておくと、ドンドンと緩んでいく。ひどいケースだと「ほどけた空気」に変わってしまう。なので、タイミングを見てリーダーはもう一度締めなおす必要がある。

なお、このようなチームはメンバー同士が仲良しなケースが多く、環境がよければ問題視されることはないだろう。ただ、仲良しのチームが「心理的安全性が高いチーム」とは言えないので、そこは注意が必要だ。

■②「ほどけた空気」

「ほどけた空気」は、緩みすぎてほどけたか、それともキツく縛りすぎて切れてしまったか、どちらかだ。

「ほどけた空気」が蔓延しているチームは、倫理観が欠如しており、「モラル・ハザード」を起こしている状態だ。

「約束などできない」「目標など達成できるはずがない」など、公然と後ろ向きな発言をする人が現れる。ルール無視のメンバーが増えても咎められることもない。こうなると、優秀な人ほどチームから去っていくことだろう。

「ほどけた空気」が蔓延していたら、チームとして崩壊に向かっていると言える。

■③「縛られた空気」

「縛られた空気」は、キツく締めつけられた状態を指す。「縛った」ではなく「縛られた」と表現しているのは、誰か特定の人物によってキツく「縛られた」ことを意味する。

チームリーダーの権威性が強く、独裁的だと「縛られた空気」が広がる可能性が高い。

チームの起ち上げ時や、困難な状況に陥ったときなどは強いリーダーシップが必要だ。しかし平時ではどうか。いつも縛られた感覚を味わっていると、部下たちは身動きがとれなくなっていく。不自由な感覚、窮屈な気分を味わうだろう。

行き過ぎると部下が思考停止になり、リーダーの暴走を止めることができなくなる。危険な状態になる前に、チーム内の対話を増やす必要がある。

■④「締まった空気」

「締まった空気」は、まさに紐でキチンと締めている状態を指す。

「最近たるんでいるから、引き締めないといけないな」

このように、引き締めるという表現を私たちは日常的に使っている。

「締まった筋肉」「引き締まった体」などと使用するように、キツすぎないけれども、一定の緊張感が持続する空気だ。この空気が「締まった空気」である。

■理想の「締まった空気」を維持するために

どんなチームも、時間とともに緩くなっていくものだ。だから定期的に空気の状態を確認し、引き締めていけばいい。

「緩んだ空気」になってから引き締めるのは大変だ。だからちょっと緩んだら引き締める。この繰り返しだけでいい。

もし引き締めすぎたら、少し緩めればいいのだ。常にベストの「場の空気」を保つことなどできないから、その調整をリーダーは心がける。定期メンテナンスをすることが大事だ。

最後に、いい空気の条件について考えてみたい。いい空気の条件とは、

間違っていることを『間違っている』と指摘し合えること

これがいい空気の条件だ。

キチンと問題を提起したって、斬新なアイデアを誰が出したって安全である。これが心理的安全性が高いチームの条件なのだから、やはり「締まった空気」が理想的なのである。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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