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これからの時代に生き残るのは「女性営業」が活躍する会社か?

横山信弘経営コラムニスト
在宅でのリモート営業が、女性の活躍の場を広げている。(写真:イメージマート)

■ずっと抱き続けた疑問

営業コンサルタントとなって15年以上がたった。この間、ずっと抱き続けた疑問がある。

いつ、どこで、何度、講演をおこなっても、どのような業界の企業で研修をしても、参加する営業は男性ばかり。営業向けの新入社員研修では半分ぐらいは女性だ。なのに中堅クラスや管理者向けの研修になると、ほぼ男性が占めるようになる。

なぜ人間が営業活動をしなければならないのか。お客様が求める商品を適正価格で販売していたら、わざわざ間に人間が入る必要はない。邪魔なだけだと、営業経験がない人は思うかもしれない。しかし、やはり間に人間は必要なのだ。お客様も人間であり、人間は感情の生き物だからだ。

印象の話になってしまうが、保険やデパートの販売員に女性は多い。巧みな話術と、きめ細かな心遣いを武器に、売上貢献している女性販売員は多い。感情に訴える力は、男性よりも女性のほうが身についているからだろうか。

にもかかわらず、多くの業種で女性営業は多くない。活躍できる場所があるはずなのに、男性と比べて圧倒的に人口が少ないのである。結婚や出産を機に、営業職へ復帰するのが難しいからだ。

■なぜ女性営業が活躍できる時代に?

しかし、潮目は大きく変わった。2015年に施行された女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)の影響もあるだろう。だが、それだけで日本企業の風土が大きく変わることはない。強く影響したのは、オンライン化の波だ。もちろん決定打となったのはコロナである。

在宅勤務をする会社員が増え、リモート営業も急速に普及した。お客様もZoomで商談することに馴れた。「こちらのほうが効率的でいいね」と評価するお客様も増え続けている。

女性が育児をしながら働く場合、

・働く時間帯

・働く場所

に自由度は少ない。とくに、夜遅くまでオフィスで残業することを「よし」とする日本の職場では、肩身の狭い思いをする。しかし営業の本分は、お客様との接点にこそある。お客様と接触できる時間帯は決まっており、よほど特殊な業界でない限り”日中”だ。

リモートで十分なら、在宅でも営業活動はできる。そこで女性営業の第一人者、太田彩子さんに聞いた。太田さんは、全国にて「営業部女子課」を主宰する。

「コロナで可能性が大きく広がりましたね。女性含め、あらゆる多様な人が、自由な場所で働けるようになったんです」

「新規開拓ができる女性営業は重宝されるでしょう。美容コンサルタントをやりながら営業の仕事を担ったり、営業フリーランスとして営業の仕事を掛け持ちでやっている人もいます」

このように、稼ぐ力のある女性は増えている。異業種からの参入もあると言う。

「事務職しか経験してこなかった女性が、40代になってはじめて営業を経験する。そういう例も増えています。営業だとビジネスの総合力が鍛えられますからね。だから率先して営業を経験する。そういう女性も増えていますよ」

何と頼もしいことか。

■インサイドセールスの台頭

女性の活躍の場が広がる理由に「インサイドセールス」の台頭があるのは間違いない。インサイドセールスの第一人者といえば、『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』の著者、茂野明彦さんだ。茂野さんは、

「これまでは育児、介護といったライフイベントによって制限されてきましたが、もうそんな時代ではありません。企業が多様な働き方を受け入れることで、いろいろな人を採用できるようになってきた。もちろん女性の活躍の場は大きく広がっています」

育児中の女性も、子育てにめどがついた女性も、スキルと熱量があれば企業は放っておかない。

「旦那さんの転勤で引っ越したり、介護のために地元に戻った女性が、地方でインサイドセールスの仕事を担う。そんなことが珍しくない時代になりました」

諸事情で地方へ移住した女性は職を失わなくて済むし、企業サイドも力のある営業を失わなくても済む。両者にとってウィンウィンの発想だ。茂野さんは、リテンション(人材流出の防止)のみならず、採用そのものも変わってきたと言う。

「福岡支店で働くインサイドセールスを東京や名古屋で雇ってもいいし、その逆もあります。働く場所に関係なく、電話やパソコン、ビデオ会議システムがあれば企業に貢献できます」

「インサイドセールスは単なるテレアポ部隊ではありません。いまや営業部隊の中核を担う存在。力があれば、引く手あまたですよ」

実際に、それを裏付ける調査結果がある。パーソルキャリアの調べによると、インサイドセールスやカスタマーサクセスといった「新しい時代に求められる営業職」の求人が2年半で【約7.4倍】になったという。営業職全体では横ばいであったにもかかわらず、だ。

■企業が本当に求めている人材は?

『リモート営業の極意』の著者である財津優さんは、書籍の中でこのように書いている。

「そもそも営業の本来の目的は、よい商品・サービスを提供することで、お客様のお困りごとを解決したり、業務を快適にすること。訪問することは重要でない」

コロナ時代になってから、営業の求人が増え続けている。混沌の時代に企業が求めているのは営業職であり、その大半は前述したインサイドセールスやカスタマーサクセスといった「新しい時代に求められる営業職」である。

そしてその営業職に期待するのは、お客様のところへ足しげく訪問することでもなければ、オフィスに夜遅くまで滞在することでもない。本質を理解し、正しいスキルと情熱を持ち合わせた営業活動なのである。性別はもちろんのこと。働く場所も関係がなくなった。

男性がどうの、女性がどうの、と書きたいわけではない。しかし、女性営業の力を発揮させられる企業こそが、これからの時代を生き残っていけるのかもしれない。最近そう思わせられることが多い。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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