天才イノベーターが持つ「4つの性向」

(提供:Paylessimages/イメージマート)

■承認欲求が強い人は「イノベーション」とは無縁

「イノベーションを起こすのは、天才か変人のどちらかである」

これは、ビジネスの現場においては常識となりつつある言説だ。その通りである。「イノベーション」の言葉の意味を正しく知れば、「イノベーション」なんて簡単には起こせないと誰もが思うはずだ。

非連続的な変化がイノベーションのポイントである。そのせいで、事業アイデアでも、組織マネジメントアイデアでも、過去に慣れ親しんだ人からの賛同は得られない。したがって10人に相談したら10人全員が反対されても、まったく気にしない「鈍感力」が必要だ。

当然「承認欲求」など強い人には、イノベーションを起こせない。会社からの評価などどこ吹く風。自己中心的で唯我独尊。そんな風変わりな人間こそが、イノベーションを起こすのである。

周囲から賛同されなくても自分の考えを貫き通すために必要なのは、やはり「信念」だと思う人も多いだろう。しかしイノベーションを起こす場合、どれほど失敗しても、周囲から怪訝な表情で見られても、次から次へと大量のアイデアをひねり出す、ある種の異常性も兼ね揃えていなければならない。このため、「信念」といった美しい表現より「鈍感」とか「無神経」といった言葉のほうが似合う。

時には、行き過ぎた執着心を持つ者もいるが、このような人物はイノベーションを起こすのには向いていると言えるだろう。

繰り返すが、周囲の目を気にする人、承認欲求が強い人は「イノベーション」とは無縁である。合意形成を気にする経営者も「イノベーション」を口にする資格がない。

■「イノベーション」と「イノベーター理論」

製品ライフサイクルの4段階「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」を考え、各ステージの購入者像を「イノベーター」「アーリーアダプター」「レイトマジョリティ」「ラガード」と名付けた。これを「イノベーター理論」と呼ぶ。

これら購入者像の構成比率は、以下の通りである。

・イノベーター(革新者):2.5%

・アーリーアダプター(初期採用者):13.5%

・アーリーマジョリティ(前期追随者):34%

・レイトマジョリティ(後期追随者):34%

・ラガード(遅滞者):16%

ビジネスアイデアを考えるうえでも、参考になる概念であろう。組織の誰かが風変わりなアイデアを考え付いたとき、

「それいいね!」

とすぐに飛びつく人は「イノベーター」かもしれない。「いいね」とは思うが、少し様子を見るのは「アーリーアダプター」だろう。

「うちの業界で採用している企業はあるのか」

「他社の事例を研究してみないと判断がつかない」

と言うのは「アーリーマジョリティ」だろう。半数以上の企業がそのようのやり方を実施しているのなら、「それならわが社にも」という価値観だ。

「レイトマジョリティ」は、強い前例主義者だ。他社がやっていようが、

「そういう時代になったのかねェ」

「昔は●●をやったもんだが」

と言ってなかなか意思決定しない。外堀を埋められ、周りから説得されてはじめて重い腰を上げる。

「ラガード」傾向の人は、もうどうにもならない。「イノベーター」と逆のようで、意外にも似ている。自己中心的であるし、周囲の評価にも流されない。嫌われようが、後ろ指をさされようが気にしない。

スマホどころか携帯電話さえ持とうとしない。たとえ所有していても、

「携帯電話でメールなんか読まない」用事があるなら電話してこい」

といった融通の利かないことを口にする頑固者だ。このような「ラガード」の傾向がある人が経営幹部にいると、組織は硬直状態に陥るだろう。どんなに外堀が埋まっていようとも、

「ダメと言ったらダメだ」

と強情を張る。

社長から説得されても、

「私はイエスと言ってないからな」

と、自分の主張を曲げない。

わかりやすくするために、極端な表現で書いてみた。

では、あなたが経営者で、組織にイノベーションを起こしたいと考えたとしよう。その場合、どのようなメンバーにその望みを託すであろうか。少なからず、「イノベーター」や「アーリーアダプター」傾向の人以外には、期待しないのではないか。

スキルと同じである。できもしない人に、頼みやすいからといって、

「イノベーションを起こしてくれ。頼んだぞ」

と言っても、何も起こらないのである。頼まれたほうは「かしこまりました」と言って承諾するだろうが、プログラミング技術がない人にプログラムを作ってくれと言っているようなものなので、どうしようもない。

■「イノベーター」4つの性向

イノベーションを起こせるような人は、鈍感で自己中心的で、新奇性の高い物事にすぐに飛びつくような人、と書いた。

「イノベーター理論」に基づくなら、2.5%ほどしか存在しない。「アーリーアダプター」の一部を含めても、5%ほどと考えてもいいだろう。

100人の組織で5人ほどだ。

このような人は、どんな性向なのか。もう少し別の視点で表現してみよう。まず「同調性」という視点から。

当然のことながら、イノベーターは「同調性」が低い。

「『鬼滅の刃』の映画、面白いよ。まだ観ていないんだったら、観に行かないと」

と言われても、同調しない。自分が観たいと思うなら行くだろうが、「みんなが観ているから」「流行っているから」という理由で映画館に足を運ぶことはない。

次に「共感性」という視点だ。「共感性」も低い。

「コロナの影響で、まったく旅行に行けなくなったけど、ダメだと言われると、よけいに行きたくなるよねェ」

「わかるわかる」

「私も、そんなに旅行が好きじゃなかったけど、今は無性に行きたいという気持ちになってる」

とみんなが言っていても、

「そうかなァ」

と共感しない。

「私はもともと旅行が好きだけど、行けないなら行けないで、何とも思わないな。在宅でも楽しいと思えること探せばいいし」

「空気が読めない」とは、このことである。悪気はないのだが、このような発言を無意識にしてしまうのだ。

■イノベーターは「暗示」にかかりづらい

イノベーションを起こす人は「被暗示性」も低い。最初に示された情報が基準となってしまい、その後の判断に影響を及ぼす心理効果を「アンカリング効果」と呼ぶ。

「このサプリメントは大変効果が高いです。お値段は一か月分で5000円ですが、このサプリで体調が整うのであれば、安い買い物だと思います」

「5000円ですか。5000円か……。安くないですね」

「今月中、キャンペーンをやっておりまして、一年で6万円のところを1万円の割引で5万円にできます」

「え! 1万円割引ですか」

「はい。もしご興味がありましたら、このキャンペーン期間をご利用されることを、ぜひご検討ください」

「1万円割引は、大きいですね」

「2か月分がタダですから」

このような営業トークは、誰でも聞いたことがあるだろう。もしこの商品に少しでも興味があれば、心を動かされるのは間違いないだろう。しかし「イノベーター」は違う。

「5000円」という金額にアンカーが下りないのである。つまり暗示にかからないということだ。

「そのサプリには興味がありますが、そもそも、どうして5000円なのか、よくわからないなァ。その定価に納得していないので、キャンペーンには興味がないです」

このような反応を示す。もし納得するのであれば、5000円ではなく1万円でも支払う。

イノベーションを起こす人間は、必ず「前提」を疑う。だから「5000円」という根付けそのものに、まず疑問を示すのだ。

催眠療法家として世界的に有名なミルトン・エリクソンが開発した「ミルトンモデル」には、相手に暗示をかける「前提」というテクニックが含まれた。営業トークやコピーライティングで多用されるこの「前提」は、知らず知らずのうちに人の心を動かす心理テクニックとして、とても有名だ。

しかしイノベーションを起こす人には、このような心理テクニックは効かない。変人だからだ。

■ストレスにも強い「イノベーター」

当然のことながら「ストレス耐性」は高い。

イノベーティブな(革新レベルが高い)アイデアを出すことと、成果を上げることは別のファクターだ。したがって、奇天烈な発想で成果を出すには、相当な「トライ&エラー」を繰り返さなければうまくいかない。

奇想天外な発想を考え、それを表現するだけでも「ストレス耐性」が高くないとできないが、何よりも失敗しても心が折れないようなスピリッツ――「レジリエンス」も高くないと、とてもイノベーターとして成功しない。

新奇性の高い商品をいち早く購入する人を「イノベーター」と呼ぶが、ビジネスパーソンとしての「イノベーター」であれば、話は別だ。

新しいことを考え付いたり、新しいものを採用したりするのだけでなく、成果を出すまで粘り強く試し、実践する心の強さ(もしくは鈍感力)が必要だ。

そういう意味でも「ストレス耐性」が高いことは条件だろう。

私の知っている企業で、営業で成績を残せなかった2人、人間関係で悩んで異動を希望している総務部の若手、そして定年を直前に迎えた取締役、この4人で「イノベーション推進部」という部署を新たに設置した。

社長が部署立ち上げ当日、

「80年の歴史を誇る当社にイノベーションを起こしてほしい」

と檄を飛ばしたそうだが、人選の段階で問題がありそうな気がしてならない。案の定、「イノベーション推進部」の面々にインタビューしても、当の本人たちが「何をしたらいいかわからない」と口をそろえる。

とりあえず「イノベーション推進会議」という、名前だけはカッコいい会議を定期的に実施しているようだが、実態は「イノベーション」とはほど遠い議論がなされているようだ。

イノベーションというのは、だいたいチームで起こすものではない。たった一人のイノベーターが刺激的なアイデアと、異常な執着心、行動力で成し遂げられるものだ。イノベーションを狙って起こすというのであれば、どうしてダメな経営者ほど「イノベーションを起こせ」と言うのか?で記したような、「オズボーンのチェックリスト」等を使い、ブレーンストーミングするのが賢明であろう。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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