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日本はどんな「外国人労働者」を受け入れるべきか?

横山信弘経営コラムニスト
(写真:アフロ)

何のための「外国人労働者受け入れ法案」か

 働き方改革関連法案が2018年6月に可決され、次は外国人労働者受け入れ法案(入管法改正案)が12月に可決されました。2019年4月から、外国人労働者の受け入れが順次拡大されていきます。

 政府は今後5年間で、建設や介護など14業種で34万人以上の外国人労働者を受け入れる方針ですから、日本企業の現場は待ったなしの改革に迫られることになります。

 深刻な人手不足で倒産する――いわゆる「人手不足倒産」の件数は急増しています。2018年の上半期で40%増を記録(前年同月比)。とにかく人を増やせば急場をしのぐことができる企業にとっては朗報かもしれません。

 しかしいっぽうで、これで再び日本の労働生産性をアップさせる機会を逸したという見方もできます。

生産性を上げるために必要なたった一つのこと

 生産性とは、企業が生み出す付加価値(生産量)と、それを獲得するために投入された資源量の比率です。

 ご存知のとおり、これからの時代、日本の労働力人口は急減していきます。しかしそれだけでなく、働き方改革法案の残業上限規制によって、一人あたりの労働時間そのものが減っていく。

 労働の総量が「線」ではなく「面」の単位で減っていくため、付加価値を生み出す資源量そのものもハイペースで落ちていくことを示しています。

 すると、当然のことながら前述したような「人手不足倒産」する企業が続出するわけですが、これによって企業の新陳代謝が促進されるという見方もできるのです。

 よく考えてみましょう。

 外国人労働者の受け入れに積極的な業種は、建設や介護などです。現場の職場改善は進んでいるでしょうか。私は企業の現場に入って支援するコンサルタントです。

 業績をはじめとする経営に関わる問題を「他責」にしがちな業界は、だいたい似通っています。最たる例が、国が業界保護の姿勢を打ち出している先です。

 経営者のみならず、現場の人間でさえ「政府にはもっと努力してほしい」「うちのような業界にいい人材は来ない」「うちの業界は低賃金になっても仕方がない」と、恥ずかしくもなく口にします。

 他責にする習慣がある人は思考停止しています。自助努力で現状を打破しようとする気概が足りない。

 企業の生産性を上げるために必要なことは、たった一つしかありません。

 それはイノベーションです。固定概念を打ち壊すことで、限られた資源あたりの付加価値量がアップするのです。外部環境が劇的に変化しているのに、その変化量を国の施策が吸収してしまっては、ますます現場は思考停止になっていきます。

 日本の1人当たりの労働生産性は、OECD加盟36ヵ国中21位。先進国の中では最下位に甘んじています。日本の製造業が元気だったころに比べ、生産性は悪化の一途。「成功の呪縛」からくる現状維持バイアスが、日本全体にかかっているからだと私は受け止めてます。

なぜ毎年ソフトバンクホークスは優勝争いをするのか

 昨年、日本一となったプロ野球球団、ソフトバンクホークスを例に挙げてみます。

 この10年、ソフトバンクのリーグ順位は:「3位 → 1位 → 1位 → 3位 → 4位 → 1位 → 1位 → 2位 → 1位 → 2位」という結果で、非常に安定しています。

 V9時代の読売ジャイアンツは、王、長嶋というスーパースターをはじめとした名選手が揃っていました。しかしソフトバンクホークスに、そこまでのスター選手は見当たりません。

 にもかかわらず、毎年、優勝もしくは上位争いをつづけられるのは「成功の呪縛」にとらわれることなく、チームレベルで物事を考え、正しく新陳代謝をしつづけてきたからに他ありません。

外国人労働者受け入れによって起こるイノベーション

 「生産性を上げる」と聞くと、いまだに作業レベルの改善を思い浮かべる人がいます。業務の棚卸をしたり、工程を見直したり、役割分担を変えてみたり。

 国家レベルの労働生産性を上げていくには、業務や人というレベルでもなければ、企業レベルでも考えるべきではありません。生産性の悪い人材や商品、そして企業はいったん市場から退出してもらわないと、業界にパラダイムシフトは起きないのです。

 今回の入管法改正によって、業界が期待するのは「単純労働者」としての外国人枠が拡大することです。しかし現状を打破するために必要なのは、固定概念を打ち破るイノベーティブな人材ですから、「知識労働者」としての外国人がもっと増えることが理想です。

 そのために、企業の意識改革が不可欠。スポーツ界が優秀な外国人を監督やコーチとして積極的に迎え入れているように、組織にイノベーションを起こしてくれる人材を海外から招聘するのです。くしくも、2018年の年の瀬に日産のカルロス・ゴーン前会長が逮捕されるという衝撃的なニュースが日本中を駆け巡りましたが、それはそれ。

 たとえばロボットやAI技術が超人手不足時代の日本を救ったら、それは同様な問題を抱える国々に貢献するバリューとなります。労働人口の絶対量を維持しようとするのではなく、増えない資源量でどう現状の付加価値を出し続けるのか。

 そう考えれば、政府が支援する先は、おのずと決まってきます。研究開発機関です。

 これから訪れる「縮小社会」に必要なのはイノベーションです。そのためには、いますでに得ている安定を手放す勇気が不可欠です。「欠員補充」目的の外国人労働者受け入れは何も新しい発想ではなく、日本社会に新しい変化をもたらすものとは言えないでしょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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