「働き方改革」で絶対に効率化してはならないもの

(写真:アフロ)

長時間労働削減の必要性

競争戦略論で著名なマイケル・ポーターは、「効率化は戦略ではない」と言いました。

業務を効率化して長時間労働を削減していくことは、多くの企業で喫緊の課題となっています。恒常的な長時間労働の職場が、そのまま手付かずのままでいることは、もはや昨今では許されない情勢です。人手不足の現在、このような職場に優秀な若い社員が入社したいと誰も思わないわけで、企業の存続にかかわる問題です。

働き方改革を推し進め、働く時間と空間の自由度を高めていくことが、多くの企業で求められるゆえんです。

しかし「効率化は戦略ではない」のです。

働き方改革の難しさ

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。現場に入っているからこそ、働き方改革の重要性を強く感じます。そしてその難しさも、常に肌で感じます。杓子定規に働き方改革を進めると、大いなる矛盾を抱えることがあるからです。

それは若手社員との接し方であらわれてきます。

タワーズワトソン社の労働力調査によると、日本のエンゲージメントレベル(会社に対する愛着心や思い入れ)が非常に低い社員が45%もおり、これは先進国の中でも突出して多いことが知られています。会社に貢献したいという気持ちがなければ、当然にお客様に対して愛情も湧かないでしょう。マイケル・ポーターに倣って、秀逸な競争戦略を確立したとしても、企業の発展はありません。

とくに昨今の若者は「やりがい」「働きがい」を求めています。

若者がどんなときに「やりがい」を感じるのか? 調査によると、ダントツに「成長の実感」を味わえたときとなっており、これは私たちコンサルタントの現場体験と合致します。

働き方改革の矛盾

しかし、ここに矛盾が生じます。

なぜなら、働く人の成長を考えるうえで最も大事なことは、その人と正しく向き合うことだからです。決して「効率化」してはならない部分です。あるときは「5歩すすんで2歩さがる」、あるときは「4歩すすんで10歩さがる」。この繰り返しで、徐々に徐々に人は成長していきます。継続していくことで、いずれ「3歩すすんで1歩さがる」「9歩すすんで2歩さがる」ぐらいのペースとなり、手がかからなくなっていきます。

成長スピードと、そのペースは人それぞれ。

何事も、「時短」「時短」といって効率化を進めると、部下育成にも「効率化」を求めるようになっていきます。しかし世代も価値観も異なる若者と同じペースで歩んでいく難しさは、経験してみないとわからないもの。社歴の浅い若い人に、はやく成長してもらいたい、はやく「やりがい」を味わってもらいたいと焦ってはいけません。

ルーティンとなっている単純作業は効率化できても、人の育成など、過去よりも時間がかかるもの、丁寧にやらなければならないものの仕分けが正しくできないと、長時間労働は削減できても、前出した社員の「エンゲージメントレベル」は下がるいっぽうとなります。ひとりひとりの社員に丁寧に向き合って、働き方改革を進めていくべきですね。