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2018年はジタハラ(時短ハラスメント)が急増する? ~「同一労働同一賃金」の影響を考える

横山信弘経営コラムニスト
(提供:アフロ)

ジタハラ(時短ハラスメント)が増えている?

12月26日、毎日新聞に”働き方改革の陰で「時短ハラスメント」(ジタハラ)が広がってはいないか” と投げかける記事が掲載され、反響を呼んでいます。

(参考記事:自動車販売店長自殺「時短ハラスメント」拡大の恐れ

ここで使われた「時短ハラスメント(ジタハラ)」という言葉は、相手の立場を考えず、時短を強要しすぎること。これが一種のパワハラに該当するのではないかと、ちょうど1年前、私がYahoo!ニュースに書いた記事(2016年12月1日)によって世間に広まったと言えます。

(参考記事:日本企業が直面する新たなリスク ~「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態

当時は、電通事件の余波もあり、長時間労働を是正することに極端な反応を示す職場が多くありました。猫も杓子も「時短」「時短」……。私は現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。現場を知らない管理部門などから、「はやく帰れ」「生産性をあげろ」「もっと業務効率化しろ」と言われると、現場の営業たちと戦うこともあります。

事業はお客様があって成り立つものです。これまでの慣例により、夜の8時に荷物が届いたり、夜の9時に注文が入ったりするケースがある職場では、一筋縄ではいきません。単純に「時短」と言われても、お客様とある一定の期間、交渉をしないかぎり、はやく帰宅できないこともあるのです。

私が警鐘を鳴らした「ジタハラ(時短ハラスメント)」。「パワハラ」「モラハラ」「マタハラ」のように、もっと一般的に使われ、職場で苦しんでいる方に意識を向けてもらいたいと考えます。

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「同一労働同一賃金」の問題

同じような働き方をしていれば同等の賃金を支払う――。これが「同一労働同一賃金」の考え方です。「同一労働同一賃金」は「働き方改革」の目玉政策であり、厚生労働省は2019年に施行するスケジュールで調整に入っています。(中小企業は一年の猶予期間をもうける)

私は、この「同一労働同一賃金」の制度は日本で浸透しないでしょうし、先述した「ジタハラ(時短ハラスメント)」を増やす大きなきっかけにならないかと危惧しています。

日本において「働き方改革」が遅々として進まないのは、「仕事に人をつける」欧米のジョブ型ではなく、「人に仕事をつける」メンバーシップ型労働をとっている日本企業がほとんどだからである、ということを忘れてはいけません。

あらかじめ仕事の内容を決めてから雇用契約を結ぶのが「ジョブ型」の基本。欧米のこの思想を真似れば、一企業における雇用維持は限定的にならざるをえません。「仕事に人をつける」わけですから、外部環境の変化、企業側の都合により、その仕事がなくなれば、その「仕事についていた人」も不必要(解雇)と言われる可能性がある。欧米の、この「就職型文化」を引きつかず、日本の「就社型文化」のまま「ジョブ型」に移行したら、どうなるのか? 想像すればわかることでしょう。

文化というものは、そう簡単に変わるものではありません。

日本企業は、一度雇用した人を大事に育てる文化があります。だから離職率の低い企業を「ホワイト企業」と名付け、多くのメディアが讃え、紹介するのです。たとえ時代の変化とともにその仕事がなくなったとしても、配置転換や人財教育などをほどこし、新たな仕事に適用させようと努力するのが日本。この文化のよさは、外部環境の変化に対し、スピーディに適応できることだと私は考えています。

企業の現場では、過去とは比較できないほどのスピード感で変化を求められています。たとえば新しい事業を起ち上げたとき、どのような「仕事」がその事業に必要であるかを事前に確定させることは難しく、常に形を変えながら定まっていくものです。どんな大企業であろうと、時代の変化についてこられない企業は淘汰されていく時代です。

ところが、「同一労働同一賃金」の発想を取り入れ、仕事単位で雇用契約を結べば、「契約になかった仕事はやりません」「私の仕事の範囲を超えている」と主張する人が増えることは確実。同じ仕事を、単純に毎日やっていれば過ぎていくような時代ではないのに、です。

組織には目標(あり方)があり、その目的を果たすための労働(やり方)があります。外部環境によって目標が未達成に終わりそうであれば、そのやり方を常に変化させるのが組織としての正しいあり方です。したがって、これだけ環境変化の激しい時代になると、「仕事に人をつけ」ている状態では、組織の機動力は極めて悪くなります。

「同一労働同一賃金」が浸透すれば、当然「それは私の仕事じゃない」と主張する部下が増える。したがって、上司は組織の目標を達成させるために、環境の変化によって生じた「新たな労働」を自分の手で進めなければなりません。自然と労働時間は増え、現場を知らない管理部門からの「ジタハラ(時短ハラスメント)」に遭う可能性が増えるのです。

時代はどんどん変化しています。だからこそ、労働も、制度も、人の価値観も、求められるのはフレキシビリティー(柔軟性)。柔軟な発想が、ジタハラ(時短ハラスメント)などといった、あらたなハラスメントをなくし、真面目に働いている人を守ることに繋がります。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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