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目標を絶対達成させるうえで不可欠な「ビッグ・ラポール(大きな信頼関係)」構築3つのポイント

横山信弘経営コラムニスト
(写真:アフロ)

あなたは、仕事をするうえで人間関係に悩んでいませんか? 家族や仕事の同僚、上司、お客様とうまくやっていますか?

「どうして私はいつもこの人に軽く扱われるのだろう?」

「私が言っても全然耳を傾けてくれないのに、あの人が言うと聞く耳を持つなんて」

「何だか損な役回りが多すぎる……」

人間関係で悩みを抱えていると、日ごろからストレスをため込んでしまいます。ビジネスにおいては特にそうです。本来ならうまくいくことも、うまくいかなくなっていきます。人と人との関係を良好にするためには「ラポール」という言葉を知っておきましょう。ラポールを構築することで、人間関係で悩むことが少なくなり、コミュニケーションスキルもアップし、ビジネスで抱えている問題解決、目標達成もしやすくなります。それではどのようにラポールを構築していけばよいのか、ラポールの概念や必要性などを踏まえて解説していきます。

1.人間関係を良好にする「コミュニケーションスキル」

人間関係を良好にするために不可欠なのは、当然のことながら「コミュニケーションスキル」です。あなたの周りにも、いることでしょう。「コミュニケーションスキル」が高いがゆえに、いろいろな人と良好な関係を保つ人が。

ただ、「コミュニケーションスキル」について勘違いしている人が多すぎることも事実です。「コミュニケーションスキル」とは「話す能力」や「喋る技術」のことのみを指すと思い込んでいる人が多いようです。しかし、それは違います。「聞く力」「質問テクニック」も含めた「言語的コミュニケーション」も大切ですが、もっと重要なのは言葉として表現しない「非言語コミュニケーション」なのです。

何より「非言語コミュニケーション」の中でも、大切なのが「ラポール」。コミュニケーションスキルを高めるうえでもラポール構築を、日ごろから心掛けていきましょう。

2.「ラポール」とは何か?

それでは、「ラポール」とはそもそもどういう意味なのでしょうか。ラポールとは、もともと臨床心理学の用語です。コーチングやNLP(神経言語プログラミング)でも最重要キーワードとして紹介される概念です。セラピストやコーチと、クライアントとの正しい関係を指し、相互に信頼し合い、「安心・安全の欲求」が満たされている状態を、「ラポールが構築されている」と呼びます。

もう少し噛み砕いて表現すると、たとえば……

■ 一緒にいて、緊張せずにリラックスできる状態

■ お互いが心を探り合う必要がない状態

■ お互いが相手を尊重している状態

相手を尊敬していても、その人の前だとついつい緊張してしまう、というのであれば、ラポールが正しく構築されていると言えません。いっぽう、リラックスし過ぎて、相手に無理難題を押し付けたり、相手の存在を承認できないような態度をするのであれば、これもラポールが構築されているとは言えないでしょう。一緒にいて落ち着き、相互にリスペクトできている状態を「ラポールが構築されている」と呼びます。

3.「ラポール」構築の3つのポイント

それでは、どうすればラポールを構築できるのでしょうか。「ラポール」は状態をあらわしており、プロセスではありません。ですから、「相手と良好な関係を維持するために、まずはラポールを構築することだ」と言っても、普通はどうしたらいいかわかりません。

まず、ポイントは「行動」だと覚えましょう。

前段で「非言語コミュニケーション」が重要だ、と書きました。非言語コミュニケーションは言葉で表現されない部分ですから、「表情」「姿勢」「態度」といった要素が含まれます。しかし相手とラポールが構築されていなければ、「表情」「姿勢」「態度」を変えようとしても難しいとも言えます。

しかし日ごろの「行動」であれば、できない理由がありません。

たとえば上司であれば、部下と話をする時間を作る。日ごろから声をかける。こういった行動の積み重ねが大切です。部下に何を話すのか、話し方はどうしたらいいかと悩む前に、行動を続けることです。反対に、部下であれば、言われたことをキッチリやる。与えられた結果を出す。この積み重ねで上司に信頼されていきます。家族でも同じですし、友人同士でも同じです。

相手が何を考えているかわからない、と思うのは、相手がこちらの期待した行動をしていないからです。ですから心の探り合いに発展してしまいます。ラポールは1回や2回の接触で成り立つものではありません。関係の歴史によって熟成されていくものです。ラポールが構築されていないときは、面と向かって話をすると緊張するもの。しかし日ごろの行動は自分のペースでできます。相手が望む行動をし続けることが重要です。

もしも相手の期待に応えようと行動しているにもかかわらず、相手から信頼されていないと感じるのであれば、心を開いて相手の望む行動を知るようにしましょう。自分はできていると思っても、相手からも同様に認識されているか、わからないものですから。

4.信頼関係のレベルをチェックする「ラポール診断」

2つ目のポイントとして、ラポールを簡単に計測する「尺度」について解説していきます。その「尺度」とはズバリ「待つ」という概念を使って計測します。どれぐらいの時間、相手を「待てるか」ということです。

人を信用していると、今現在、その人に対して何らかの物足りなさを感じたとしても、いずれ自分の期待通りの行動をするに違いないと思い、それまで「待つ」ことができます。しかしながら、その人を信用していないと物足りなさを感じた時点ですぐに指摘したくなります。例えば信頼できない部下から報告、連絡、相談がない場合、自分の指示した通りのことをやっていないのではないかと思い込み、相手の報告や連絡を「待つ」ことができません。

ついつい、こちらから「どうなってるんだ?」と、質問したくなります。部下から「ちょうど今日、報告しようと思っていたんです」と言われても、相手を信用していないと「ウソつけ」と思ってしまうものです。ひどい場合は、「私の部下はもう変わらない。人間、この歳になると変わらないもんだ」などと勝手に決めつけて、人の変化を「待つ」こと自体を放棄します。とても残念なことです。

自分との信頼関係も同じです。自分との信頼関係というのは「自信」のこと。自信がない人は、自分を信頼して「待つ」ことができません。何かをやろうと思っていても、自信さえあれば、たとえ今はやらなくとも、自分のことだからいつか必ず行動を起こすに違いないと思うことができます。そして冷静に、自分の気分が盛り上がるまで待てるのです。自分を信頼してるからです。

いっぽう自分を信頼していない人は、自分のやる気が起こらないときはやたらとソワソワします。このまま放って置くと、きっとやらないまま時間が過ぎていくに違いない。どうしたら自分はやる気を起こすのだろうかと考え込んでしまいます。自分がやる気を起こすまで「待つ」ことができません。挙げ句の果てに、「自分はこういう性格だから」と、自分自身を諦めてしまう人もいます。

このように、信頼関係を示す尺度は、「待つことのできる時間」で計測することができます。もしもあなたの周りに、あなたを急かしてくる人、必要以上に「早く早く」と言ってくる人がいたら、その人から信頼をされていないと受け止めてもいいかもしれません。他の人は待てるのに、あなたに対しては待てない、という態度を示す人がいたら要注意です。自分の行動を見直してもいいでしょう。信頼を失っている可能性があります。

5.「ラポール」が構築されてからの人間関係

相手とラポールが構築されると、肩に力を入れることなくコミュニケーションがとれるようになります。話し方や話す内容は関係がありません。お互い、警戒心を持っていないので、打ち解けて話をすることができます。それぞれの存在を尊重しています。相手を小ばかにしたような言い方はしないでしょうし、軽んじた扱いを受けることもないでしょう。

「ラポール構築」における3つ目のポイントは、とても大切なことです。

それは、すべての人とラポールが構築されるわけではない、ということです。相手が望む行動を、といっても、どうしても受け入れられない内容であれば、拒む必要があります。拒んだことで、関係が崩れるのであれば、それはそれで仕方がありません。

ただ、多くの人は、相手が期待する行動の基準を正確に知ろうとしていません。また、知ったとしてもそれを実践し続けていないのです。人と良好な人間関係を構築するために、まずは自分の行動を見直してみてはと思います。

6.「ビッグ・ラポール(大きな信頼関係)」を構築する3つのコスト

最後に、今回の記事のタイトルにもある「ビッグ・ラポール」についてです。

「この人の言うことなら、無意識のうちにイエスと言ってしまう」

「あの人の頼みを断ることなんて絶対にできない」

こういう思いを抱いたことはありませんか。近くにいる人に対する感情だけではありません。

「この会社が作る製品なら間違いない」

「あの監督がメガホンをとった映画なら、絶対に観にいかなくちゃ」

このような、全幅の信頼を寄せるような対象をあなたは持っていませんか。これが「ビッグ・ラポール」です。

「ビッグ・ラポール」を構築するためのファクターは「3つのコスト」です。

1)経済的コスト(お金)

2)時間的コスト(時間)

3)精神的コスト(労力)

ビジネスで何らかのサービスを提供している人に、「無料」のものしか利用しないお客様、「1000円」支払って利用するお客様、「10万円」支払って利用するお客様ではラポールのレベルが違ってあたりまえです。

お金をかけて本を読む。自己啓発に励む。自分を磨いている人は、自己投資に余念がない人です。周囲からリスペクトされてあたりまえでしょう。

「時間」や「労力」というコストを支払っているかも重要なファクターです。

長い時間、ずっと同じことを継続している人は、誰からも尊敬されます。なかなかできないことだからです。自分が苦手なこと、好きではないことに対し、果敢にチャレンジしている人もそうです。多くの人から応援されることでしょう。長い期間、汗をかき続ける人が周りを動かすのです。

いっぽうで、お金もかけず、てっとり早く、苦労もせずラクに、自分の都合のいいベネフィットを得たいと願い続けている人は誰とも信頼関係を構築できません。周りから評価されず、応援もされないため、ビジネスをしていてもうまくいかなくなります。息苦しくなり、負のスパイラルに陥っていくことでしょう。

ラポールを構築するには「行動」が必要と書きました。具体的には、先述した3つのコストを支払うような行動をとり続けましょう。それらのコストをしっかり投資することで、特定の人と「ビッグ・ラポール」を構築することができ、多くのリターンを得ることができます。なぜなら、ビジネスにおける重要なキーパーソンの多くが、これらの「3つのコスト」を支払ってきた歴史を持っているからです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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