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ソフトバンク「ペッパー」アプリ開発200社参入! サービス業の常識を一変するか?

横山信弘経営コラムニスト
ペッパーのほうが、生身の人間よりも頼れる?(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

ソフトバンクグループのヒト型ロボット「ペッパー」の用途が、家庭用から業務用に拡大するかもしれません。ソフトバンクはアプリ開発に必要な技術仕様を公開。それに伴い、リクルートホールディングスなどの200社がアプリ開発参入を決めたようです。

日本のロボット業界の市場予測は、2015年1.6兆円、2025年5.3兆円、2035年9.7兆円と言われています。とはいえ、多くの人が想像する「ロボット」は、複雑な駆動装置を搭載している機械。生身の人間では難しい作業や危険区域での行動を想定しているケースがほとんどです。

しかし私が注目したいのは、ロボットの「コミュニケーションスキル」。歩いたり、走ったり、飛んだり、跳ねたり、握ったり、掴んだり、変形したり……という「駆動スキル」ではなく、ロボットが持つ「サービス精神」「ホスピタリティマインド」「おもてなしの心」です。

ロボットに精神やマインドや、ましてや「おもてなし」などできるものか、と考える人も多いでしょう。しかし私は強く反論したいです。

じゃあ、人間にできるのか?

と。

都合のいい、テレビや雑誌のニュースの見過ぎです。高級ホテルや高級レストラン、ニュースに出てくるような旅館やお店に従事するスタッフは、そのような精神やらマインドやらを持っていますが、ほとんどの現場では、そのようなことはありません。私は企業の現場に入り込んで目標を絶対達成させるコンサルタントです。世の中の経営者たちは「きれいごと」に飽き飽きしています。

何事も三現主義。現場、現物、現実を直視すべき。多くの現場へ行って、現実を目の当たりにすれば、どんなにマニュアルが整備されてあっても、朝礼で行動原則を大きな声で唱和しても、当たり前のことを当たり前にできない「生身の人間」が大半であることがわかるでしょう。この事実から目を背けたら、ロボット事業の可能性も広がりません。

「ペッパー」は期待できます。「ペッパー」はヒト型ロボットでも、ほとんど駆動装置を搭載していません。手と首が少し動くぐらいで、期待できるのは「コミュニケーションスキル」「接客能力」です。

どんなアプリを開発するかを考える前に、「ペッパー」が接客するメリットを経営者やマネジャー目線で考えてみます。(あえて「話題性」というメリットは省きます。「ペッパー」などのヒト型ロボットが普及すれば、客寄せパンダ的な話題性は関係がなくなるからです)

● やるべきことを最後まで諦めずにやり抜く

● 経営者や営業マネジャーが怒らなくても済む

まず、人間ではなくロボットである最大の利点は、何と言っても「やるべきことを最後まで諦めずにやり抜く」です。私は現場に入ってコンサルティングをする身です。言い訳ばかりして、やることもやらず、やり始めたとしても途中で諦めたり、やり切る習慣のない営業、販売員を数えきれないほど見てきました。実際に、当社にやってくる企業からのオファーのほとんどが、「営業にやり切る習慣を身につけさせたい」です。ですから「ペッパー」が相手なら、経営者やマネジャーは、

「何をやってるんだ! この前教えただろう。どうしてお客様にああ言われたら、こちらの商品をお勧めしないんだ!」

「商品の棚卸しなんていいから、5分以上、同じ商品を眺めているお客様がいたら、近くへ行って声をかけてきなさい!」

「何をぼーっとしているんだ! あそこでお客様が迷っておられるだろう。キチンと誘導しなさい」

「できない理由を言うな! もっと頭を使え!」

などと、怒鳴り散らすことはなくなります。

相手が「ペッパー」なら、たとえ結果が出なくても「何をやってるんだ!」とは言えません。そもそも「ペッパー」の思考パターン、行動を制御するプログラムは、マネジャーが考えたもの。経営者やマネジャーの「頭脳」を移植しています。ということは、「何をやってるんだ!」と怒る前に、自分自身が考えた接客サービスの基本原則やトークスクリプトなどに問題があるのでは? と振り返ることになります。

実は「生身の人間」を雇用するのは、経営者やマネジャーが考えなくても済むからです。細かいことを教えなくても、本人が周囲の「できる人」を真似して勝手に育ってくれるだろうと、安直に考えているから。こういう思考の経営者は、「ペッパー」のようなロボットを欲しいとは思わないでしょう。「コイツはやることをすべて教えないと何もできない」と考えるからです。

しかし高度情報化時代となり、すべて現場任せ、すべて自分で考えて、行動し、結果を出してくれればいい、といった「完全自主性主義」の考えは通じません。まず基礎部分として、どのような状況で、どのような行動をとるべきか、どのような態度で、どのようなコミュニケーションをすべきなのかは、組織で決めておくべきです。そしてそのための人財教育、トレーニングを徹底してすべき時代なのです。しかしヒト型ロボットであれば、「教育訓練」「トレーニング」は必要ありません。

導入当初は試行錯誤が必要でしょう。しかし、いったん「プログラム」ができあがったら、お店の拡張や、多店舗展開になったときに、「ペッパー」のようなヒト型ロボットを増やすだけで、想定通りの接客やサービスが行われます。独自プログラムをインストールするだけで、ほぼ100%の再現性のあるスタッフがそのまま設置できるのです。これだけでも、経営者やマネジャーは本当にラクになります。

「町田店だけが売上が上がらない。どうしてだ?」

「あそこのバイトが、コロコロ変わるんですよ。接客態度にも問題があるようです」

「町田店の店長は、バイトをうまく教育できないようだなァ」

「そうは言っても、店長を変えるわけにはいきませんし」

……と、経営者とエリアマネジャーがこのような会話をしなくてもよくなります。

すでにハウステンボスの「変なホテル」では、 ロボットが接客して効果を実証しています。「ペッパー」の業務用アプリが多数開発されることで、サービス業の経営に大きな変革がもたらされるのではないか、と私は期待しています。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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