なぜ「本音」「本心」を聞きたがる人は要注意なのか? これだけの理由

やたらと他人の「本音」を聞きたがる人、「本心」を知りたがる人がいます。

「彼が私のことをどう思っているのか、本心が知りたい」

「次回の面談で、部下の本音を聞き出そうと思う」

このように言う人のことです。

「最近とても冷たいじゃないの。あなたの本心が知りたい」

「ごめん、実は前から別れたいと思っていたんだ。なかなか言い出せなくて……」

「やっぱりそうなのね! どうしてもっと早く言ってくれなかったのっ!」

ドラマでよく使われるセリフです。ビジネスおいても、次のような会話はよくあります。

「最近、まるで仕事に身が入ってないじゃないか。君の本音が聞きたい。実際のところ、君は今の仕事についてどう考えているんだ」

「部長、大変申し訳ありません。実は、もう転職することを決めておりまして……」

「え、やはりそうだったのか! おかしいと思っていたんだよ。どうして早く言ってくれなかったんだ」

恋愛でもビジネスでも、だいたいパターンは同じです。

● 以前はそうでなかったのに、最近心境の変化がある(ように見える)

● どうしても、その理由を知りたい

この2つの要件が揃うと、相手の「本音」や「本心」を聞きたくなるのです。

「最近ちょっとおかしいぞ。彼を意識してるんじゃないの? 本心を言いなさいよ!」

と、他人の心境の変化を知りたがる人も、やたらと「本音」とか「本心」を聞き出そうとします。このような人は他人が誰をどう思っているのか、相手が自分をどう思っているのかについて過剰に意識を向けます。好奇心が旺盛なのはいいですが、人間関係を悪化させる要因にもなりますので、気を付けたほうがよいでしょう。

実のところ私自身も、無性に「真実が知りたい」と思った時期があります。自分の付き合っている人や同僚、部下に心境の変化が訪れているのではないかと察知したら、相手がどう思っているのか、本当のところどうなのか、本音を知りたい、本心を聞き出したい、と強く思いました。ただ、真実を知りたいと思えば思うほど、以前は良かった関係が悪化していくことも多かったように思います。

そもそも「本音」「本心」と言いますが、この言葉はどういう意味なのでしょうか。辞書で引くと「本当の気持ち」となります。「建前の反対」と書いてある辞書もあります。正直なところ、このような定義では意味がわかりませんね。自分が「本当の気持ち」を言っているのか、相手が「本当の気持ち」を表現しているのか、自他ともにわからないものです。

次の会話文を読んでみてください。

「最近、まるで仕事に身が入ってないじゃないか。君の本音が聞きたい。実際のところ、君は今の仕事についてどう考えているんだ」

「え? 仕事に身が入ってない? そんなことはありませんが」

「だってそうだろう。最近、ずっと上の空じゃないか。ミスも多いし」

「申し訳ありません……」

「なァ、これまで一緒に大きなプロジェクトをいくつも成功させてきた仲じゃないか。言ってみろよ」

「言ってみろって……何をですか?」

「だから君が何を考えているか、だ」

「何をって、言われても……」

「会社に不満があるんだろう?」

「えっ! そんなこと全然ありませんが」

「どうして隠すんだ。俺と君との仲じゃないか。誰にも言わないから、本心を言いたまえ」

「ですから、何もありませんって」

「それじゃあ説明がつかないだろう。本当は会社に言いたいことがあるんだろう? それをガマンして隠してんだろう? 誰にも言わずにひとりで抱え込むことなんて良くないよ。吐き出してしまえ。全部俺にぶつけてみろ」

「……何を言ってるんですか、さっきから」

大げさなやり取りになりましたが、実際にビジネスの現場で、このように「あいつは本音を言わない。隠している」「最近の子は、本心を明かさない」などと言う管理者がいます。しかし、多くの場合、考えすぎです。部下は「本音」を隠しているのではなく、上司が思っているようなことを考えていないのです。最近、何となくやる気が出ない、気分が乗らない、他事に意識が向いている、だけの可能性が高いのです。

やたらと「本音」「本心」を聞きたがる人は、相手を遠ざけてしまう可能性が高いと言えます。なぜなら相手のことを信頼していない。疑っているということがミエミエだからです。

NLP(神経言語プログラミング)では、「起きる出来事はすべて無色透明である」と言い方をします。過去の体験でできあがった思考プログラムにより、人は出来事に色付けをしている(フィルターをかける)ものですが、本当はそこに「色」などないのだ、という考え方です。

自分が「そうだ」と言えば「本音」であるし、相手が「こうだ」といえばそれが「本心」なのだと私は思っています。結局、人それぞれが身勝手に決めつけることであり、「本音」や「本心」など、突き詰めていくと存在しないものなのです。

繰り返しますが、やたらと「本音」を知りたがる人、「本心」を聞き出そうとする人は要注意です。好奇心が旺盛なのはいいですが、人を疑う姿勢が前面に出ている場合は、人間関係を悪化させることに繋がるからです。