組織診断をするなら、調査形式は「プリコード法」を選ぶべきである

企業規模がそれなりに大きくなると、経営者の多くは末端の従業員の意識レベルを正確に把握することができなくなります。そのため、意識レベルの低下を未然に防ぐために、経営陣は現状を常に把握しておきたいと考えるものです。「組織風土診断」「360度サーベイ」といったサービスは、そのような要望にこたえるもので、多くの企業が取り入れ、実施しています。お肌の老化を防ぐ「アンチエイジング」などと同じようなものと考えるとわかりやすいでしょう。問題が顕在化する前の「積極的予防策」と言えます。

しかし「組織診断サービス」は万能ではありません。思わぬ逆効果が発生することもあります。多くが、会社に対する愚痴・不満の蔓延。問題の原因は調査方法にあります。調査方法を間違えると、組織の空気がかえって悪くなることがあるのです。

まず代表的な調査方法を2つご紹介します。

1.プリコード法

2.自由回答法

「プリコード法」とは、回答をあらかじめ選択肢として用意しておく方法を指します。回答する従業員が頭を整理させることに有効ですが、選択肢のつくり方を間違えると、ミスリードさせることがあります。

「1週間に3度以上は、上司に報告・連絡・相談をしていますか?」

という設問であれば、「確か、社長が『1週間に3度は上司にほうれんそうをしろ』と言っていた。ちゃんと意識しないといけないな。自分はできていないときもあるので、5段階評価で『3』かな」と、満足にできていない部下に気付きを与えます。組織が意図する方向へ正しく誘導してくれるのです。しかし、

「あなたは、上司の指導に納得がいかないときがありますか?」

という設問であれば、いかがでしょうか。上司の指導10回のうち、10回とも納得がいかないのか。それとも、たまには納得いかないときもあるが、7~8割は納得いくのか。この『程度』を正しく調査できる設問にはなっていません。したがって回答する日の朝、納得がいかないことを上司に言われただけで、「確かに納得できないときはあるな。5段階評価で『4』かな」と回答しまうこともあります。その調査結果を会社側がどう評価するかは別にして、ひとたび、そのような回答をしてしまうと『一貫性の法則』が働き、部下の頭は「上司の指導に納得できない」という意識バイアスが醸成されていってしまいます。ここが問題なのです。

いっぽう「自由回答法」とは、5W1Hなどの疑問詞を使い、自由に回答をしてもらう方法です。設問を作る側は簡単ですが、会社の意図をくんで正しく返答されない可能性が高まります。

「上司の指導に納得がいかないときがある、の設問で『4』以上をつけた方にお聞きします。それは、どうしてでしょうか? 自由形式でお答えください」

「どうして?」と質問されると、脳の中の長期記憶から、過去の「上司に対する納得できないエピソード」を引っ張り出すことになります。回答欄に何を書こうが、この思考プロセスを繰り返すと、「上司に納得できない」という気持ちが膨らんでいきます。

さらに問題なのは、自由回答にすると、設問とはねじれた回答をする人が出てくることです。設問の論点を正しく理解せず、認知バイアスがかかった状態で好き放題記入する人が出てくると厄介なことになります。たとえば、

「今期、当社は創業30周年を迎え、3つの方針を掲げています。その方針に対してあなたはどのような姿勢で取り組みますか。自由にお書きください」

という設問に対して、

「方針以前の問題です。この会社が30年も続いていること自体が私には不思議でたまりません。だいたい昨年のこの組織診断で私が回答したことはどうなってるんですか? 給湯室の掃除当番をめぐってもめているんです。経営者は現場で何が起こっているか、全然わかっていないんですね」

……と、回答する人がいたらいかがでしょうか。この方にも言い分はあるかもしれませんが、この設問で回答する内容ではありません。会話の「ゆがみ度」が高い人は思考もゆがんでいる可能性が高く、コミュニケーション手段を間違えると、想定外のことで炎上してしまいます。

組織風土改革の手法と3つのポイントで書いたとおり、世の中の多くの組織風土診断サービスは、いわば「空気測定器」です。空気の状態を知るだけであり、空気を良くしてはくれません。もしも診断サービスのやり方に問題があった場合、火消しを任されるのは現場の管理者です。したがって、経営者の多くは「組織診断サービス」を実践したがりますが、現場の管理者はどちらかというと後ろ向きで協力的ではありません。

しかし、組織診断の設問項目を工夫することにより、従業員に気付きを与え、正しい方向へと導くこともできます。そのためには、少なくとも「自由回答」を撤廃し、「プリコード法」を採用しましょう。組織の方針を想起してもらう設問を作るのです。設問の量が多くなると、回答する側の意識が低くなるため、少なくてかまいません。そして「空気清浄器」だととらえ、一度のみならず、定期的に実施することが肝要です。そうして組織風土が改善されていきます。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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