「相談するだけムダな人」の話し方……「感度」が低い人に相談すべきではない?
マジメに相談しているのに、期待通りに取り合ってくれない人がいます。正直なところ、そのような態度をされるとイライラしてしまうこともありますよね。「相談」というのは、大きく分けて2種類あります。
● 相談者が意思決定するために、意見を求める
● 一緒に意思決定するために、意見を出し合う
いずれのケースも、相談された側には能動的なスタンスが求められます。表面的に話をなぞるだけの「表面コミュニケーション」ではなく、論理的に意思決定するための「論理コミュニケーション」です。
「頭が固い人」「説教くさい人」の話し方では、表面的に話を合わせればいいだけのケースで、無理やりロジカルに噛み合わせようとすると説教くさくなると書きました。たとえばこんなケースです。飲み会の席などで部下が軽い気持ちで出したテーマに、過剰な反応を見せる上司はいるものです。
部下:「課長、福岡支社のオフィスはとても清潔ですよ。本社も見習いたいですね」
課長:「本当だな。本社もあれぐらい清潔にしないとダメだ」
部下:「3課のAさんのデスク周りなんて、ヒドいものですよ。机の上なんて、書類の山ですからね!」
課長:「いやいやいや、うちの部長も同じようなもんだ。誰も注意できないから放ったらかしだ」
部下:「部長って仕事はできますけど、整理整頓がイマイチですよね」
課長:「……ん?」
部下:「3課のAさんと変わらないぐらい、書類が積みあがってますよ。アレ、何とかしてほしいですよね」
課長:「あのさ、君は部長に向かって、どういう口のきき方をしてるんだ」
部下:「え? だって……」
課長:「だいたい、君たちはオフィスの整理整頓を本気でやろうと考えているのか? 私が5S運動を徹底しようと言い出したのは6ヶ月前だぞ」
部下:「も、申し訳ございません」
課長:「福岡の支社長も、本社を反面教師にしていると言っていた。来週までに対策を考えたまえ」
部下:「かしこまりました……」
酒の席ですから、部下は「表面コミュニケーション」のつもりで話したのに、上司が「論理コミュニケーション」で過剰に反応したものですから、部下はうろたえてしまいます。この反対のパターンが次の会話文です。飲み会ではなく、会議の席で部下が上司に相談を持ちかけています。部下は「論理コミュニケーション」をして話を前に進めようとしますが、上司は「表面コミュニケーション」で適当にあしらっているのです。
部下:「課長、福岡支社のオフィスはとても清潔ですよ。本社も見習いたいですね」
課長:「本当だな。本社もあれぐらい清潔にしないとダメだ」
部下:「3課のAさんのデスク周りなんて、ヒドいものですよ。机の上なんて、書類の山ですから」
課長:「いやいやいや、うちの部長も同じようなもんだ。誰も注意できないから放ったらかしだ」
部下:「部長はお忙しいですし、課長と私とで注意喚起してみてはと思うのですが、いかがでしょうか」
課長:「いやいや。お前、ちょっと部長に言ってみたらどうだ? 『もっと整理整頓をキチンとしてください。福岡の支社長を見習えって』」
部下:「そんなこと、部長に言えませんし、現実的には私たちが5S運動を進めていくしかないと思います。そこで私のアイデアなんですが……」
課長:「俺だって部長に言えるかァーい! なんてね。はははは」
部下:「課長、マジメに聞いてもらえませんか」
課長:「何言ってんだよォ、俺は課長だよォーん。いつだってマジメに話を聞いてるよ」
部下:「私が悩んでいるのは、どこからスタートさせるか、だと思っています。1フロアに4つの課が共同生活しているわけですので」
課長:「共同生活か……。学生時代、同じサークルの女の子と共同生活してたな」
部下:「課長……」
課長:「その共同生活は4ヶ月で終わっちゃったけどね。淡い恋だったなァ~」
この会話に出てくる課長は、まるで酔っぱらっているかのようです。大げさに書いたため、さすがにこれほどフザけた受け答えをする上司はいないでしょう。しかし、真剣に相談している人は相手に「論理コミュニケーション」を求めるものです。にもかかわらず相談された側が「表面コミュニケーション」で応じると、適当に受け流しているように思われてしまいます。
これでは、「この人に相談してもムダ」「話にならない」とレッテルを貼られるかもしれません。「場の空気」や「シチュエーション」「言葉のニュアンス」で、どう対応すればいいのか、瞬時に判断する力が必要です。そのためには、やはり「感度」が重要ですね。