成功する人の思考法は「マスト」でも「ウォント」でもなく「スタンダード」
成功するためには「マスト」でなく「ウォント」だという考え方があります。たとえば、自分はこうすべき、自分の人生はこうあるべきという「べき論」ではなく、こうありたい、そうありたい、と捉えたほうが夢を叶えられる、成功する、という発想です。
(今回扱う「成功」という定義は、富や名声、権力を手に入れることとします。この手の「成功」に興味のない人は読み飛ばしてください)
確かに、多くの成功者は、昔からやりたいことに打ち込んで、そして成功していったと言えます。アスリートやミュージシャン、芸能人などは、そういった思考を持って成功した、という人が多いことでしょう。しかしいっぽうで、やりたいとは思わないが、マスト(やるべきこと)だったので一心不乱になって取り組んでいた。そうしたら、いつの間にかその「やるべきこと」に強い興味を持ち、情熱を注いでしまった、という例もまた多いのです。ビジネス関係で成功する人は、どちらかというと、こちらの思考で成功を勝ち取ると言っていいでしょう。成功するためには、「マスト」なのか「ウォント」なのかという二者択一の話ではありません。
●強く「やりたいこと」があれば、それに打ち込めばいい
●強く「やりたいこと」がなければ、「やるべきこと」に打ち込めばいい
それだけのことです。問題なのは、「自分がやりたいことを見つけられないと成功できない」と思い込み、「やりたいこと」は何なのかと探してばかりで袋小路に入ってしまうことです。「やりたいこと」が見つからなければ、目の前の「やるべきこと」を実践することで、それが「やりたいこと」に変わるかもしれないということです。
また、
●「やりたいこと」はあるのに、打ち込むことができない
●「やるべきこと」に対しても、打ち込むことができない
という人もいることでしょう。単純に「成功する」ための基礎体力がないだけです。ストレス耐性が低いのです。ワーキングメモリーのスコアが低く、未来の大きな報酬よりも目先の小さな報酬を優先してしまうせいで、このようなことが起きるのです。絶対にしてほしくないのは、
「目の前のやるべきことに打ち込むことができないのは、自分の本当にやりたいことではないからじゃないか」
という勘違いです。単純に脳の基礎体力が落ちているだけです。このように歪曲した思考を持っていると、当然に人生の成功を勝ち取ることはできません。思考がねじれているため、素直に事実(ファクト)を受け止められず、再現性のある結果を生み出し続けることができないからです。
「成功哲学」を知っても、成功できない人の最大の理由とは「強制力」に書いたとおり、「やるべきこと」さえできないのなら、強制力が働く場所でまず自分のストレス耐性を鍛えましょう。あたりまえのことを、あたりまえにできるような基礎体力をつける、ということです。
成功する人は、そもそも「マスト」なのかとか「ウォント」なのかとか、ゴチャゴチャ考えません。誰かに質問されたら、「これが好きだから打ち込んでいるんです」「やりたいことだから頑張れます」などと言うのです。そうではなく、それをすることが「スタンダード(あたりまえ)」になっている、というのが本当の答えです。理由などないのです。成功者はいちいち動機付けなど探したりしません。成功しない人は、成功できない理由を探しているから、このような質問と返答に関心を持ってしまうのです。やめましょう。
私はいつもこのことを、講演やセミナーで「損失回避性」という行動経済学の用語を使って解説しています。「損失回避性」とは、同じ価値があっても、利益よりも損失のほうが心理的インパクトが強いことを証明した「プロスペクト理論」から来ています。あたりまえなことができなくなるというケースを「損失」と受け止め、その損失を回避しようという思考が働くから「あたりまえのことをあたりまえにする」のです。この「損失回避性」はとても重要な概念です。
成功するための手順としては、大きく以下の3種類に分けられることでしょう。参考にしてください。
1)「ウォント」を見つけた。それに打ち込み、成功する。(もともとストレス耐性が高い)
2)「ウォント」を見つけた。それに打ち込もうとするができない。渋々「マスト」をやりながら「マスト」を「スタンダード」に変え、ストレス耐性を上げてから成功する。
3)「ウォント」が見つからない。渋々「マスト」をやりながら「マスト」を「スタンダード」に変え、ストレス耐性を上げてから成功する。
(※成功が目的ですから、ウォントがあってもなくても問題はありません)
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