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一般企業の「トップセールス」たちの名言10選

横山信弘経営コラムニスト
なぜこんな成績を残せるのか? トップセールスたちの名言を集めてみた

トップセールスたちの行動を分析する

私は一般企業に、目標を絶対達成するコンサルティングを実施しています。クライアントは英会話教材や保険、車、住宅など、個人の魔術的なスキルで極端な成果を出せるような業種に偏っているわけではなく、商社や卸、物流、部品、医療、広告、IT、メーカー……など多種多様です。どちらかというと、80%以上のクライアントがB2Bの事業会社です。

世の中には魔術的なテクニックで、とんでもない結果を残す「天才営業」がいます。出版やセミナーを開催できるほどの「天才営業」たちは、インパクトのある武勇伝・エピソードを持っているものです。しかしながら、そういった「天才営業」が日ごろから心掛けていること、テクニック、武勇伝は、一般企業の営業の方々には縁遠い話です。再現性がなく、真似できないものばかり。

そこで私の部下である営業コンサルタントの水田裕木(みずたひろき)が、一般企業に埋もれている「トップセールス」と呼ばれる人たちにインタビューし、どのようにしてトップセールスとして君臨できるのか、そのノウハウや技術を聞き出してブログで紹介し続けています。そして彼ら・彼女らから聞いた名言・格言もメルマガとして配信し続けています。

(※ 参考 :リアルトップセールスインタビューズ

今回は水田がメルマガで紹介している名言の中で、「これは面白い!」「これは知ってもらいたい!」という選りすぐりのものを独断で選び、10個紹介いたします。

「私に売れないものはない!」「私の手にかかったら、死んだ猫でも売れる!」といった、魔術的な「天才営業」の言葉ではなく、普通の企業の普通の営業さんたちの言葉です。それほど強烈なものではありませんが、参考になる名言ばかりです。ぜひ最後までお付き合いください。

(※本記事は、リアル・トップセールスの「名言十選」の内容を短縮して加筆・修正しています)

(1)「間に合ってます」が見込み客のサイン

まず最初に紹介するのが、この名言。いいですね、この言葉。お客様から「間に合ってます」と言われたら、普通なら尻込みしてしまうものですが、トップセールスは「この人は見込み客だ」と思うのだ、というのですから。なぜトップセールスたちはそのように認識するのか、解説していきましょう。

「選択的認知」という言葉があります。人間の脳は、すべての事柄を認知するとパニックになるため、自分の関心があることにのみ焦点を合わせるようにできています。つまり認知プロセスにおいて、無意識のうちに知覚するものを選択しているのです。

新規開拓で最も気をつけなければならないのは「ラポール(信頼関係)」。まだ営業に対してラポールを覚えないお客様は、営業が話している内容を認知していません。つまり「聞いていない」ということです。「できない営業」は、そのことを知らず、どんな商材なら相手は関心を持つかとばかり考えています。ですから「ネタがないとお客様のところへ行けない」などと言いはじめるのです。

つまり、馴染みのない営業が来たら、お客様はついつい「間に合ってます」と言ってしまうというだけの話。すでに他社と取引をしているので、そこに割って入ってきて欲しくない、ということ。「間に合っています」という言葉がお客様の口から出た、ということは、他の取引先と「ラポール」が構築されている証拠なのです。

反対に「間に合っています」と言わず、「ちょうどいいところに来た」というお客様もいます。100社、200社、訪問したら、1社ぐらいは遭遇するでしょう。「トップセールス」たちは、お客様に断られることを前提にして営業活動をしています。そのため、このようなお客様に対しては逆に警戒心を持つのです。お客様が「ラポール」などといった感覚的なものにとらわれず、商材のスペックや価格のみを判断材料に営業と付き合っていく性格かもしれないからです。

確かに、スペックや価格をお客様の言うとおりに調整できれば、取引がすぐにスタートするかもしれません。しかし裏返せば、良い条件を提示する他社が現れれば、ほどなく浮気されるということでもあるのです。「トップセールス」たちがなぜ「間に合ってます」と言うお客様をあえて狙うのか? 最初は時間がかかっても、ひとたびお客様とのラポールが強固になれば、あとはラクに継続的にお付き合いができるからです。お客様は商品の条件に関心があるのではなく、営業個人との関係に関心があります。こういう良いお客様と付き合うことで、収益を上げることができます。スペックや価格の条件提示にその都度振り回されることも減ることでしょう。

(2)売れなくても楽しいと思えるようになると成果が出る

2つ目の名言も同じ視点に立ったフレーズです。「できない営業」は、お客様へアプローチするたびに一喜一憂するものです。1回や2回の訪問や電話で、相手の反応が良くないと「脈がありません」などと上司に報告する営業がいますが、「勘違い」も甚だしいと言えます。前述したとおり、1回や2回訪問しただけで相手とラポールを築くことは不可能です。こちらが話していることを真正面から受け止めようという姿勢がないのだから、「脈があるか/ないか」の判断がつくはずがありません。良い反応をするお客様のほうが怪しいと受け止めましょう。

また、常識的に考えて、すべてのお客様に商品を売ることなど非現実的です。5割以上の勝率がない限り、売れる人ほど、売れなかった絶対数もまた多いのです。会ったその日から相手を自分の虜にしてしまうような「天才営業」なら勝率9割、とか言えるでしょうが、とても一般企業で扱う商材でそのような勝率を上げることなどできません。「点」で物事をとらえていると、売れないことのほうが多いわけですから、売れない時期を楽しいと思えるようになれば、当然のことながら成果は出やすくなります。

(3)お客は買うことが前提と考えれば「断り文句」が「恥じらい」に聞こえる

3つめの名言はコレ。現場に入ってコンサルティングをしていると、「トップセールス」の多くがKY(空気が読めない人)であることに気付きます。相手の「断り文句」が「恥じらい」に聞こえてしまう、ということは「嫌よ嫌よも好きのうち」という感覚なのでしょう。KYのトップセールスたちは、

「そんなこと言っちゃって、本当は欲しいんでしょ?」

「要らないと思ってるのも今のうちですよ」

という態度でお客様と接しています。当然のことながら、その態度がストレートに相手へ伝わってしまうと嫌われてしまいますが、心の中で呟いているぐらいなら大丈夫です。

「当社の商材を買わないなどという選択肢などあり得ない」という態度で営業が話をしていると、そのうち相手も「そんなに自信があるなら、ものは試しに聞いてみるか」と思ってしまう。つまりお客様はその態度に感化されて「聞く耳を持つ」ものなのです。

(4)ファンを作るよりファンになった方が手っ取り早い

4つ目は、まさに「好意の返報性」の意味をあらわす名言です。好意の返報性とは、人は好意を受けられると、それを返したくなるという習性のこと。ミラーリング効果とも言います。相手のことを好きになれば気に入られる可能性は高まる、という意味です。(同じように、相手のことを嫌えば、相手からも苦手だと思われる可能性は高まります)お客様を「ファン化」すべきだと、よく言われますが、それ以前に営業自身がお客様のファンになれるか、ということです。お客様とラポールを構築するうえで、シンプルでかつインパクトの強い考え方でしょう。

(5)値切られるか、言い値か、商品説明が求められるか、任せられるかは「信頼関係の差」だけ。

5つ目の名言は、まさに「ラポール(信頼関係)」にフォーカスした内容となっています。人間は理由を求めたがる生き物です。ラポールが構築されていない営業からクロージングを受けたのなら、お客様はその商材を選択する理由を欲するでしょう。他社製品よりも価格優位性に優れているのか、スペックがすこぶる高いのか、などです。しかしラポールが構築されているなら、営業に「任せられる」可能性が高まります。営業側とすれば、任せられれば相対的に利幅はアップするでしょうし、営業活動にかかわる心理的ストレスも激減します。この差が、トータルの営業成績に直結するのです。

他にも「お客はタダ以外すべて高いって言うんだよ!」と言った「トップセールス」もいたそうです。妙に納得させられる名言ですね。

(6)年間の目標を一日単位まで細分化すれば行動スピードがあがる。

6つ目は「テンポラルフレーミング」を想起させられる名言です。テンポラルフレーミングとは、時間の単位を変えて表現することにより、敢えて物事の捉え方を変えさせることを言います。大きな期間で表現するよりも、小さな時間の単位で考えたほうが、より具体的で身近に感じられるため、先送りする癖を修正するのに使えます。

たとえば、新規のお客様を年間に6社開拓していこう、と方針を掲げても、物事を大きくとらえすぎているため、余裕を感じてしまうもの。行動スピードが遅くなります。しかしテンポラルフレーミングを使うとこうなります。過去のコンバージョン率で考えると、1社を開拓するのに、30社のリストアップが必要で、1社への平均アプローチ回数が3回だとすると、1社を開拓するには90回のアプローチ回数が不可欠。年間に6社ということは、2ヶ月に1社というペースで開拓していくということであるから、月単位で考えると、45回の新規顧客アプローチをしていかなければならない計算となる……と。

このように計算したあと、月間スケジュール表を眺め、1日単位で行動計画を作っていくと、毎日やるべきことが見えてきます。

(7)刈り取りよりも種まきの時間を優先しろ

まったく同感です。私たちのコンサルティングスタイルも同様で、見込み客を育成するための種まき・水まき活動を、実際の商談よりも優先させるようにアドバイスしています。営業活動を「点」ではなく「面」で実施することで、目標未達成で終わるリスクを分散することが可能になるのです。

(8)「考えること」と「行動すること」の連結力が強い人ほど仕事ができる

これまでの名言は、どちらかというと「行動力」に焦点を合わせた内容が多かったように思いますが、8つ目の名言で「考える力」「想像力」が加わりました。

営業にとって「行動力」はとても重要なファクターですね。「行動だけではダメだ」という言い人もいますが、「考えるだけではもっとダメだ」ということも知るべきです。単純な公式で表現すると「営業力=想像力×行動力」。まず行動を繰り返すことで、想像力は鍛えられていきます。そしてそれらの力が連結することによって成果につながる、ということです。

(9)見積り依頼は1番先に提示するとチャンスが2回やってくる

9つの目の名言は「スピード」の大切さを、巧みなレトリックで表現していると言えます。他社のどこよりも速く見積りを出すことで、ひととおり他社からの見積りをとってから、「速い」という理由だけでもう一度声をかけられるだろう、という話です。これはレトリックであるわけだから、額面どおりに受け取らないでいただきたい。何事もスピーディに対応することでチャンスは増える、という教えなのです。

(10)「買ってくれ」とお客さんに言え!

最後はとっておきの名言。私も水田もこの名言を気に入っています。

私たちコンサルタントは、時折クライアントの営業に1日同行することがあります。会議室やミーティングでの発言では窺い知ることができない問題が現場にはあるものだからです。一に同行していると、いろいろな実態が浮き彫りになってきます。そして問題の多くが「意思表示の欠落」なのです。きわめてあたり前のことなのですが、営業なのに「わが社の製品を買って欲しい」「採用して欲しい」「導入して欲しい」と正しく意思表示をしていない人が非常に多い。

営業は「頭を下げるな」「お願いするな」と言う人がいます。「お願いしないほうが売れる」「紹介だけでラクに儲かる」というキャッチコピーで本を書いたり、セミナーをする研修講師やコンサルタントもいます。しかし彼ら・彼女らは「天才営業」であり、「できない営業」が真似できるものではありません。一般企業でトップを走り続けている営業ですら、「ぜひわが社をお願いします」「そろそろ決めましょう。わが社の提案を採用してください」とはっきり意思表示をしているのです。「言わなくてもお客様はわかってるはず」と営業が躊躇してはいけません。言うときは言う。ハッキリ言うのです。とてもシンプルなことですが、これができていない営業がとても多いのです。

今回紹介した10個の名言からもわかるように「トップセールス」と呼ばれる人たちも、意外と誰にでもできるノウハウを活用して卓抜した成績を残しているのです。ただ、その成果は、短期間で出しているわけではない、ということだけは理解しておくべきでしょう。スキルアップするのに時間がかかる、ということではなく、ある一定の時間をかけた行動の集積、ラポールの蓄財が、スバ抜けた結果を生み出しているのですから。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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