「質問力」を鍛えるのは、意外と難しい3つの理由

「質問力」は質問の中身を言うものではない

「質問」は、ただ質問すればいいということではない

私は営業コンサルタントです。日々、クライアント企業の営業活動を支援し、結果を出してもらうことを本業にしています。営業の皆さんには、お客様から要望・ニーズを聞きだして適切な提案ができるスキルを身につけてもらいたいと考えています。しかし、実際に現場でコンサルティングしていると、意外な問題に直面することが多々あります。そのひとつが「質問力」です。「ヒアリング技術」とでも言いましょうか。

よく営業マネジャーが「お客様のニーズを聞いてこい」と部下に言うシチュエーションに出くわします。しかし「聞いてこい」と言われて「聞いてきます」と答え、実際にお客さまのところへ出向いて「聞けるか」というと、案外できないものなのです。上司と部下との関係でも同じです。「何を考えているかよくわからない」と思い、あらかじめ質問する内容をマニュアルなどを読んで決めておき、部下と面談しても、結果的にはうまく質問ができず、消化不良のまま面談終了になってしまうことがあります。「話し方講座」などの研修を繰り返し、指導をしてきた経験から、「質問力」を体得するのは意外と簡単ではないと私は受け止めています。

それでは、なぜ「質問」は難しいのでしょうか。理由を3つ挙げます。

1)そもそも人は質問などされたくないという事実

2)関係構築が前提

3)質問スキル

「質問」するうえでの最大の勘違い

多くの人が頭にないだろうなと思うのが、1の「そもそも人は質問などされたくないという事実」です。営業がお客様のところへ通い、「いろいろ教えてください」などと言っても、相手は「何でも聞いてください」という姿勢になることはまずありません。それは部下や同僚に対しても同じでしょう。「こういうときは、このような質問をしてみましょう」などと、本やマニュアルを読んで質問パターンを覚えるのは簡単ですが、実際にやってみると上記の壁にぶち当たり、うまく前に進まないことがあるはずです。

ものは試しです。この記事を読んでいるあなたに私が質問してみます。次の5つの質問を1つ1分以内で答えてみてください。それでは、どうぞーー。

「あなたの今抱えている問題を3つ教えてください」

「今あなたが欲しいものは何ですか? 上から3つ教えてください」

「インターネットを利用していて、これまでで一番がっかりした出来事は何ですか?」

「あなたは10年後、どのような自分になっていますか?」

「死ぬ前にこれだけはしておきたい、ということは何ですか?」

以上です。5つの質問ですから、5分以内で終了します。あなたはそれぞれの質問に答え、口にしてみたり、書き出してみたでしょうか。質問の文章を読んだだけで、実際には質問に答えなかった人はいませんか。自分にとって関心の高い質問であればともかく、唐突にこのようなことを尋ねられたら、多くの人は質問されること自体を鬱陶しく感じるはずです。

脳には「空白の原則」というものがあります。人は脳に空白ができると無意識のうちに埋めたくなる、という心理欲求が働きます。「空白」そのものはストレス。ですからストレスを避けるために、この空白を埋めたいという潜在的な欲求が芽生えるのです。「質問」というのは、相手の脳に空白を作る行為です。したがって、お互いの関係が温まっていない状態での質問行為は相手にストレスを与えることになるわけです。

ぶしつけに質問されたほうは普通、気乗りしないもの。ですから2で書いたように、質問するためには相手との関係構築が前提条件です。

さらに、ただ質問事項を並べ立てるだけでは「詰問調」になるので、気をつける必要があります。まるでアンケートをとるように、「今どんな問題を抱えていますか?」「その問題はどれぐらい重要度の高いものですか?「その問題をどのように解決しようと考えていますか?」「問題を解決したらどんな気分になるかイメージできますか?」などと、単調に質問されたら、「尋問」を受けているようで気分が悪くなっていきます。

相手の表情が曇りはじめ、「この質問、いつまで続くの?」と反対に質問で返されたりしたら、気分を悪くしている証拠です。詰問調で質問を繰り返していないか自分を省みるほうがよいでしょう。

「質問」の最中も相手との関係維持に配慮する

質問力を鍛えるには、質問の中身を吟味するのではなく、質問に入るまでの関係構築と、質問の最中に「バックトラッキング」などの「クッションフレーズ」を挟み込み、話を縦方向や横方向へと広げてやることです。「バックトラッキング」とは、相手の答えをおうむ返しする話し方です。

以下に事例を書いてみます。(※印がバックトラッキング)

「先週の金曜日の夜は何をされていたんですか?」

「金曜日の夜は、上司と飲みに行ってましたね」

「へえ、上司の方と飲みに行かれていたんですね」(※)

「ええ。そうです」

「いつも上司の方とはどういうところへ飲みに行くんですか?」

「大衆の居酒屋が多いですよ」

「ああ、大衆の居酒屋が多いんですね」(※)

「はい」

「暑い日なんかに居酒屋で飲むビールは美味しいですよね」

「ええ、そうですね。仕事の帰りに一杯やるのはストレス発散にもいいですね」

「上司の方に仕事の悩みを聞いてもらうときは、そういう居酒屋とかでするんですか?」

「うーん、どうでしょうか……。そもそも上司に仕事の悩みを打ち明けること自体、あまりないんですよね」

「あ、上司の方に仕事の悩みを打ち明けること自体、あまりないんですね」(※)

「ええ、まあ。そうですね」

質問をしている最中も相手との関係が崩れないように、巧みにクッションフレーズを挟み込むなどして、なるべく尋問っぽくならないよう配慮しなければなりません。上記の会話例では、歪曲的な質問を繰り返し、上司との関係性を探っています。

「あなたは仕事上の悩みを上司に相談しますか?」とストレートに質問していません。その後に続く「なぜ仕事上の悩みを上司に打ち明けないんですか?」「どうしたら仕事上の悩みを上司に相談できるようになるのですか?」「報告・連絡・相談を徹底することが会社の方針となっていますが、この件に関してあなたはどう考えていますか?」……といった質問をしやすくするよう、相手が話しやすい雰囲気をつくる話題から入っています。

「質問力」を鍛えるためには、お互いの関係性を構築すること、関係を崩さない雰囲気づくりが不可欠です。このスキルを身に着けるのはけっこう難しいですが、質問の中身を知ればいい、ということではないことだけは頭に入れておきたいですね。営業活動も部下育成もマニュアルどおりにはいかないものです。