かき氷の世界は奥が深くて楽しい

店の数だけ味がある。かき氷は食べ歩いてこそ楽しさが増していく。
店の数だけ味がある。かき氷は食べ歩いてこそ楽しさが増していく。

 夏の風物詩といえばやはり「かき氷」と思い浮かべる人は多いだろう。夏祭りの縁日で食べる赤青黄色の鮮やかなかき氷をイメージするかも知れないが、この十年でかき氷の世界は変わってきている。かき氷しかメニューに置かないような「かき氷専門店」も増え、今や夏だけではなく一年を通して楽しめるオールシーズンのデザートになっている。人気の専門店ともなれば、秋でも冬でも行列が出来るほどだ。

 かき氷がブームとなり、かき氷専門店の弛まぬ努力によってかき氷は劇的な進化を遂げ、縁日のかき氷とは全く別の奥深く魅力的な世界が広がっている。自家製のシロップを使うのは当たり前。氷を削る温度を何にするか、削る厚さを何mmにするか、シロップの濃度や糖度をどうするか、氷の中に何を潜ませて食べ始めから食べ終わりでどう味を変化させていくかなど、かき氷はもはや「料理」と呼んでも過言ではない。

 全国各地にかき氷の名店は存在するが、やはり東京には専門店の店舗数も多く、かき氷の食べ歩きには最適だ。しかしながら、個性豊かなかき氷店がたくさんあるので、なかなかかき氷初心者にとっては最初の一軒を選ぶのが難しい。そんな東京のかき氷を食べる上で、まず食べておくべき3軒をご紹介しよう。

オーナーの遊び心が伝わる『雪うさぎ』(桜新町)

家族連れ客にも優しい人気店『雪うさぎ』(桜新町)。
家族連れ客にも優しい人気店『雪うさぎ』(桜新町)。

 2014年のオープン以来、東京のかき氷シーンを牽引してきた人気店が『雪うさぎ』(東京都世田谷区駒沢3-18-2)である。同じ敷地内には焼肉店や蕎麦店もあるが、全て経営は同じ。蕎麦店で出していたデザートのかき氷が人気を博したことから、専門店を立ち上げて一気に行列店となった。

 オーナーの小澤聰さんは好奇心旺盛で、なんでもとことん突き詰める「職人肌」。焼肉、蕎麦、ラーメンなど異なるジャンルの飲食店を手掛けているが、どのお店もそれぞれの分野で高い評価を受けている本格派。当然『雪うさぎ』のかき氷も一切の手抜きなし。温度管理や削り方はもちろんのこと、エスプーマやフロマージュなどの進化系かき氷もいち早く取り入れ、シロップに使う果物も産地や旬をしっかり見極めて、ベストのものを選んでいる。

 焼肉店や蕎麦店の利用客が食後に来たり、小さい子供など家族連れ客も多い立地ということもあり、かき氷専門店にしては珍しく子供向けに既製品の色鮮やかなシロップのメニューもある。さらにテラス席ではペット同伴も可能だ。そんなところにも、誰でも気軽に入れる「街の氷屋さん」としての信念が感じられる。

和食の技法から生まれた『和kitchenかんな』(三軒茶屋)

かき氷シーズンの夏季以外は定食も楽しめる『和kitchenかんな』(三軒茶屋)。
かき氷シーズンの夏季以外は定食も楽しめる『和kitchenかんな』(三軒茶屋)。

 世田谷公園にほど近い閑静な場所で、2013年にオープンした『和kitchenかんな』(東京都世田谷区下馬2-43-11 2F)は、都内屈指のかき氷の人気店であるが、店名の通り本来は和食を提供する料理店だ。かき氷のシーズンである夏季以外は、素材の味を生かした和食の定食も人気を集めている。

 創業者は和食の料理人で、以前営んでいた和食店で料理の締めにふさわしいデザートをと考えた時に、和食の料理人として料理店としてのアプローチで、新しいかき氷を作れるのではないかと考えた。素材をどう生かして調理するか、味をどう途中で変化させていくか。かき氷の常識にとらわれることなく、和素材や和のエッセンスを生かした。

 旬の素材や和の食材を用いてオリジナルのソースを作り、氷を削り出す温度を見極め、薄くていねいに削ってソースや素材と重ね合わせて美しく盛りつける。細部にまで高度な技術が用いられた『和kitchenかんな』のかき氷は「料理」そのものだ。

鯛焼き店の本気が伝わる『浅草浪花家』(浅草)

かき氷と鯛焼きを一緒に楽しめる『浅草浪花家』(浅草)。
かき氷と鯛焼きを一緒に楽しめる『浅草浪花家』(浅草)。

 鯛焼きの名店『麻布十番 浪花家総本店』の暖簾分け店として、浅草に2010年オープンした『浅草浪花家』(東京都台東区浅草2-12-4)。明治42年に創業した『浪花家総本店』の味と技を受け継いだ鯛焼きは、パリッと薄皮で餡子の甘さも控えめ。もちろん一匹ずつ焼き上げる昔ながらの「一丁焼き」スタイルだ。

 そして『浅草浪花家』は鯛焼きだけではなく、かき氷の名店としても知られている。球体のようなフォルムで削られるかき氷の中でも、スペシャリテとも呼べる逸品が「あさやけ」。鯛焼き店だからこそのこだわりの餡子は、北海道十勝産の良質な小豆を銅の釜で炊いて、手で練り上げたもの。自慢の餡子にミルクと自家製いちごシロップを重ねて、富士山の朝焼けを表現した。

 「宇治金時」や「きなこ」をはじめ、旬の果物を使った季節限定の味まで、常時10種類以上のかき氷がラインアップ。さらには「おしるこ」などの甘味や、甘味に合うように店主自ら選んだ煎茶やコーヒーも揃う。焼きたて熱々の鯛焼きと、冷たいかき氷を一緒に食べられる至福のひとときが過ごせるのはここだけだ。

 今回ご紹介した3軒は、いずれも東京のかき氷を食べ歩く上で欠かせない人気店ばかり。まずはここから食べ歩きを始めて、かき氷の楽しい世界を知って欲しい。他にもまだまだご紹介したい店がたくさんあるが、それはまた次の機会に。

※写真は筆者によるものです。

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