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【緊急提言】『コロナショック』による消費冷え込みに対して、飲食店が今出来る3つのこと。

山路力也フードジャーナリスト
ピンチをチャンスに。今こそ力強い店を作る絶好のタイミングだ。(写真:アフロ)

飲食店の底力が試されている

 新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けての外出自粛ムードが思いのほか長引いており、飲食業界においてもその影響は大きい。外出する人が激減しているということは、外食する人も激減しているということ。政府の外出自粛要請以降、店によっては売上げが通常の6割〜8割減という異常事態が続いている。飲食店の多くは薄利多売で営業を行っており、特に個人営業による飲食店は事業の存続に影響する状況に陥っている。

 仕事柄、多くの飲食店と関わっているが、突然の事態に気持ちと対応が追いついていないのが現状だ。しかしながら、ただこの状況をただ見つめているだけでは意味がない。飲食以外の業界を見ると、営業時間の短縮やテレワークへのシフトなど、早々に対策を打っている。飲食店もこのタイミングでアクションを起こすことで、ピンチをチャンスに変えることが出来るかも知れない。店の規模や環境は色々あって一概には言えない部分もあるが、今飲食店が出来ることを列挙していきたい。

この機会に無駄を省いていこう

一段高い衛生管理体制の構築

 衛生管理の徹底に関してはコロナウイルスの有無に関わらず、飲食店としては当たり前のこと。その上で、より高い衛生管理体制を構築するいい機会であると捉えたい。社員スタッフはもちろん、アルバイトスタッフなどにも衛生管理の知識と重要性を徹底周知することが重要だ。

 正直、コロナウイルスに対する衛生面での特別な対策はないが、このタイミングで一段高い衛生管理意識を一人一人が持つことで、飲食店の経営に直結する「食中毒」への対策が強化されていくはずだ。また、今回のコロナショックは行動自粛ムードに因るところが大きいため、客に安心感を与えるという意味合いからも、スタッフが清潔なユニフォームを着て、マスクも着用し、店舗入口や店内に消毒液を配置するなど、衛生管理対策の姿勢を客から見える形にするのも不可欠だろう。

 さらに細かな点では、現金の取扱いに嫌悪感を抱く潔癖な客も少なくはない。QRコードなどキャッシュレス決済のシステムを導入していない飲食店は、これを機に導入するのもいいだろう。現金を扱わずに済むことは、衛生面はもちろん時間や人材の点においても、客だけではなく飲食店にとってメリットは大きい。今後現金による決済比率は減っていくのは間違いないので、このタイミングで導入すべきだ。

宅配やテイクアウトなどの業態開発

 軒並み減収が続いている外食産業だが、逆に堅調なのがデリバリーやテイクアウトなどのニーズだ。外出自粛によっていわゆる「巣ごもり」消費が増えていることが背景にある。これまで出前をしていなかった飲食店は、早急に宅配メニューやテイクアウト、お土産メニューなどを開発して、売上げの減少を食い止めたい。

 自前で出前するよりも、「Uber eats」「出前館」など、飲食店のメニューをデリバリーするサービスを利用することで、労働力を増やすことなく売上げを作ることが可能だ。店舗でメニューを用意して客を待つ従来の飲食店のスタイルから脱却して、マネタイズポイントをいくつも持っておくことは、通常営業時にも必ず安定した利益を生んでくれるだろう。

高収益体質へシフトする

 飲食店の多くは開業時こそ食材原価や人件費などの「FLコスト」をしっかりと計算しているが、営業が始まってからは特に個人経営店などではFL比率のコントロールが曖昧になっているケースが少なくない。言うまでもなく、現在の状況は売上高が劇的に減っているのだから、営業利益率は極端に下がっている。地代家賃などを除く費用のうち、食材仕入や人件費、一般管理費などの見直しをすることで、営業利益率の減少を食い止める努力が必要だ。

 一般的に飲食店における理想のFL比率は50%〜55%と言われており、60%を超えると危険水域に達する。現在のコロナショックによりどの店も70%かそれ以上になっている可能性もあるので、早急にメニューの効率化と人材配置の適正化を行い、高収益体質にシフトする必要がある。

 具体的にはメニューを絞って仕入れを減らしたり、食材を適切に使うことでロス率を減らす工夫。無駄に配置しているアルバイトなどのシフト見直し。席数の削減や営業時間の短縮による売上げの集中化。客単価を上げるためのメニュー改編など、店によって出来るところから手を着けて営業利益率の向上を目指したい。

 飲食店の経営はFLコントロール、営業利益率にかかっていると言っても過言ではない。確かに今回のコロナショックによる消費の冷え込みは、リーマン・ショックや東日本大震災以上の様相を呈している。しかし、本来しっかりとしたコストコントロールが出来ていれば、ここまでのダメージを受けていなかったであろう飲食店も多い。今からでも遅くないので、しっかりとした経営戦略の見直しをして高収益の体質を作ることが重要だ。

ピンチをチャンスに必ず出来る

 ウイルスも消費自粛も必ず収束に向かう。「衛生管理体制の強化」「マネタイズポイントの増加」「高収益体質へのシフト」は、いずれも売上げが回復した時に今まで以上の利益を生み出すことになる。ピンチをチャンスに。飲食店の皆さんは大変だと思うが、今こそ体制を立て直す絶好のタイミングだと捉えて頑張って頂きたいと思う。そして私たち消費者は外食機会を増やすことで応援していきたいと思っている。

【関連記事:『コロナショック』を受けている飲食店に対して、客の私たちが出来ること。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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